まだGAの「滞在時間」を信用してるの? 計算の仕組みとその使い方を理解する[第15回]
今回はGoogleアナリティクスの「滞在時間」について説明する。
実店舗であれば、「ある人が店の入り口から入ってきた時間から出ていくまでの時間」が滞在時間だとわかる。
では、WebページやWebサイトの滞在時間は、どう測っているかご存じだろうか? アクセス解析における滞在時間は、仕組みを知らないと誤解しがちな要素だ。
結論からいうと、Googleアナリティクスの滞在時間は正確性が低く、そのまま信用できる指標ではない。それは一体どういうことだろうか。例を挙げながら、詳しく解説していこう。
- 「平均ページ滞在時間」と「平均セッション時間」の仕組みを知る
- 「平均ページ滞在時間」と「平均セッション時間」をレポートで確認する
滞在時間を表す2種類の指標
まず、滞在時間には2種類がある。「1つのページごとの滞在時間」と、それらを束ねた「セッション(訪問)全体の滞在時間」だ。Googleアナリティクスでは、次の2つの指標がそれぞれに該当する。
- 平均ページ滞在時間
- 平均セッション時間
実店舗の例でいえば、ある場所で立ち止まって商品を見たり、カートに入れたりした時間が「ページ滞在時間」に相当する(実際には、実店舗の場合は歩いて移動している時間も考えないといけないだろうが、ここでは考えずにおく)。
それに対して、「セッション(訪問)全体の滞在時間」は、実店舗の例なら店舗に入ってからいくつかの商品を見たり買ったりして、出るまでの一連の時間を指す。
まずは、基本となる「各ページの滞在時間」から説明していこう。
ページ滞在時間は「次のページを閲覧開始」するまでの間隔
たとえば、あるユーザーのあるセッション(訪問)で、ページA→ページB→ページCという順番で3ページ見て、それぞれのページを閲覧開始した時刻が次の表のとおりだったとしよう。
ページの滞在時間は、そのページの閲覧開始時刻と次に閲覧したページの閲覧開始時刻との差を計算している。これはアクセス解析では一般的な手法で、Googleアナリティクスでもこのルールに従っている。
ここで注意すべき点がある。各ページの閲覧終了時刻は、計算に含まれていないことだ。なぜなら、Googleアナリティクスは基本的にページを表示したタイミングで「このページを見た」というデータが送られ、記録しているからだ。
上の表の例では、ページAの滞在時間が5分(17時15分00秒と17時20分00秒との差)で、ページBの滞在時間が3分(17時20分00秒と17時23分00秒の差)ということになる。つまり、次ページの閲覧開始時刻を前ページの閲覧終了時刻として代用しているのだ。
問題なのはページCだ。ブラウザのタブを閉じた、または他のサイトに移動した場合は次のページの閲覧開始時刻が存在しないので、差分を算出できない。 Googleアナリティクスでは、この「滞在時間がわからない最後の閲覧ページ」を、平均ページ滞在時間の集計対象から外すという処理を行っている。
最後に閲覧したページは平均の集計対象から外される
具体例で示そう。Webサイトに、次の3つのセッション(訪問)があったと仮定する。
それぞれのページの平均滞在時間の計算式は、次のようになる。
そのページのページ滞在時間の合計÷そのページの総ページビュー数
これを上記の例に当てはめて計算してみよう。
ページAは合計で2ページビューあり、ページの滞在時間はそれぞれ「3分」と「1分」だ(赤枠部分)。従って「(3分+1分)÷2ページビュー」と計算し、ページAの平均ページ滞在時間は「2分」となる。
ページBは合計で3ページビューある(青枠部分)。しかし、セッションYとセッションZのページBは滞在時間がわからないので、滞在時間の計算ではなかったことにされる。つまり、割り算の分母と分子はセッションXの数値だけを見て「2分÷1ページビュー」と計算し、ページBの平均ページ滞在時間は「2分」となる。
最後は、ページCだ。ページCはセッションXの1ページビューしかなく、かつ集計から外すので、集計のための分母も分子もない状態になる。ページビュー数が少ないページでは、たびたびこうしたケースが生じる。分母が存在しないので本来は集計不能なのだが、この場合は便宜的に「0秒」と表示される。しかし、これは「1秒も見られていない」ことを表すわけではなく、「計算できなかった」だけだということに注意しよう。
平均セッション時間の計算には直帰の「0秒」も含まれる
平均ページ滞在時間の次は、平均セッション時間の計算方法について説明しよう。両者で少し考え方が異なる部分があるので、注意が必要だ。
各セッションの滞在時間は、基本的にはそのセッションを構成するページ群の滞在時間の合計となる。「最後のページは集計から外す」というルールもそのまま適用される。
先ほどの例では、セッションXのセッション滞在時間は「ページAの3分+ページBの2分=5分」となり、セッションYのセッション滞在時間は「ページAの1分+ページBの0分=1分」となる。
しかし、例外がある。それは、直帰セッションの扱いだ。平均セッション時間を計算するときは、「0秒」も集計に組み込まれる。つまり、先ほどの例では直帰セッションのセッションZが0秒(表赤枠部分)として集計に組み込まれる。
違いがわかりにくいだろうから、詳しく解説する。平均セッション時間を算出する際、もしセッションZを集計から外すのであれば、セッションXの5分+セッションYの1分=6分を2セッションで割って、平均セッション時間は「3分」となるはずだ。
しかし、平均セッション時間の計算はセッションZの「0分」も組み込まれる。つまり、合計6分を3セッションで割って、平均セッション時間は「2分」となる(表青枠部分)。
この計算方法の違いによって、平均セッション時間は大きく変わってくるので注意が必要だ。たとえば直帰率が90%のサイトの場合、9割のセッション滞在時間が0秒として計算に組み込まれるため、セッションの平均滞在時間は実際よりも大幅に短く算出されることになる。
「平均ページ滞在時間」は[すべてのページ]レポートで確認する
各ページの「平均ページ滞在時間」は、[行動]>[サイトコンテンツ]>[すべてのページ]レポートなどで確認できる(図1赤枠部分)。数表部分の4列目に「平均ページ滞在時間」の項目があり、ここにそれぞれのページの平均ページ滞在時間が表示される(図1青枠部分)。
滞在時間は、「00:01:09」のように2桁の数字が3つ、コロン(:)で区切って表示されている。これは、左から順に「時、分、秒」を表している。つまり「00:01:09」であれば、「1分9秒」ということだ。
「平均セッション時間」は[サマリー]レポートで確認する
「平均セッション滞在時間」は、[ユーザー]>[サマリー]レポートなどで確認できる(図2赤枠部分)。サマリーの数字が並ぶ下段に「平均セッション時間」が表示されている(図2青枠部分)。
滞在時間は絶対値ではなく「比較して変化を見る」のがおすすめ
今回は滞在時間について見てきたが、最後のページの閲覧時間がわからないことや、平均ページ滞在時間と平均セッション時間の計算方法が若干異なることから、Googleアナリティクスの滞在時間は正確性が低い指標であることがわかる。滞在時間は、精度を求めるのがそもそも難しい指標なのだ。
Googleアナリティクスで「5秒」や「10秒」といった時間の絶対値に意味をもたせることは難しい。したがって、Googleアナリティクスで「滞在時間」を分析する際には、ページ間で「相対的に比較する」、あるいは、「施策の前後で比較する」など、「比較して変化を見る」といった使い方がよいだろう。
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