どうすればECサイトの売上を増やせるのか? GAで売上分析を行う4つの視点とは[第57回]
今回は、eコマースサイトにおいてそれぞれの商品の販売状況を見ていく方法を解説する。
実際の販売状況については、おそらくGoogleアナリティクスとは別のeコマースの販売管理システムでも当然分析できる環境にあるだろう。ただし販売管理システムでわかるのは「いつ何が売れた」という結果だけだ。そこから「なぜ」をひも解いたり、「これからどうすればよいか」を考えたりするヒントは得にくい場合もある。
Googleアナリティクスでも売上データを取得していれば、何か疑問があった場合はGoogleアナリティクスのデータを見ることで、eコマースサイト内での閲覧行動やオンライン上での集客施策との関連性を確かめることができる。「なぜ売れたのか」または「売れなかったのか」「どうしたらもっと売れそうなのか」という仮説検証から、具体的な集客施策や商品ページの改修のヒントを見つけて、成果を上げる具体的な施策につなげていこう。
なお、今回の分析もWebサイトにeコマースのトラッキングコードを実装している必要がある。実装方法は第55回を参照してほしい。
- 商品ごとに売り上げを見る
- 商品カテゴリ・商品・商品のSKUを複合的に見る
- トランザクション(購入)ごとに売り上げを見る
- 顧客ごとに売り上げを見る
商品単位で売り上げを確認する
前々回のトラッキングコードの実装についての解説でも触れたとおり、各商品を識別するためには「商品」「商品のSKU」「商品カテゴリ」の3つのディメンション(分析軸)が用意されている。
まずは[コンバージョン]>[eコマース]>[商品の販売状況]レポート(図1赤枠部分)を見ていこう。
このレポートの下部にある一覧表示部分は図2のようになっており、プライマリ ディメンションは「商品」が標準で選択されている(図2赤枠部分)。商品別に次の5つの指標(図2青枠部分)で販売状況を確認できる。
- 数量
- 固有の購入数
- 商品の収益
- 平均価格
- 平均数量
この5つの指標のうち、前回の一覧表で触れなかった3つの指標「商品の収益」「平均価格」「平均数量」について説明しておこう。
指標名 | 意味 |
---|---|
商品の収益 | 商品単位の総売上。「商品カテゴリ」ディメンションを選択している場合は、商品カテゴリ単位にまとめた売り上げを見ることができる。「収益」がトランザクション(1購入)全体の売り上げのこと(第56回で解説)。 |
平均数量 | 1回のトランザクション(購入)での、商品の平均販売数。つまり「商品の総販売数÷トランザクション数」。全体でも商品別でも同様にして算出する。指標で示すと、「平均数量=数量÷固有の購入数」。 |
平均価格 | 商品の1回のトランザクション(購入)あたりの平均販売額。つまり「商品の総売上÷該当商品の総販売数」。全体でも商品別でも同様にして算出する。指標で示すと、「平均価格=商品の収益÷数量」となる。 |
売れている「商品カテゴリ」「商品」「商品のSKU」を複合的に見る
[コンバージョン]>[eコマース]>[商品の販売状況]レポートでプライマリ ディメンションに「商品」が選択されている標準の状態で、ある商品の値(図2緑枠部分)をクリックすると、図3のように「商品のSKU」(図3赤枠部分)が選択されたレポートにドリルダウンする。さらにその値(図3青枠部分)をクリックすると、「商品カテゴリ」にドリルダウンする。
図3の状態で「商品カテゴリ」(図3緑枠部分)を選択してその値をクリックすると、今度は「商品のSKU」にドリルダウンされる。元のスタート地点が図2で「商品のSKU」がプライマリ ディメンションに選択されていても同様だ。つまりどこをスタート地点にしても、順番にひと通りこの3つのディメンションを巡ってドリルダウンできる構造になっている。
[商品の販売状況]レポートは、3つのディメンション軸ごとに次のようなことがわかる。
- どの商品グループが売れているのか
- 単価の高い商品で売れているのはどれか
- 一度に何個も買ってくれる商品はどれなのか
しかし、これらを確認するだけではおもしろくないので、もう少し違う見方も紹介していこう。
セカンダリ ディメンションを指定してかけ合わせる
たとえばセカンダリ ディメンションを指定して、2つのディメンションのかけ合わせで(図4赤枠部分)売れている商品の傾向を見て観察するのもよいだろう。
さまざまな指標で並べ替えてみることで、「先月売れた商品が単価は低かったけど大量に売れたのか」「その逆だったのか」といった個々の商品における販売状態の傾向を確認してもよい。たとえば指標「商品の収益」(図4青枠部分)をクリックすれば、「販売合計額の大きい商品の順」に並べ替えられる。図4はそのような状態になっている。
さらに図2~図4のレポートに特定のセグメントをかけて絞り込んで、商品の売れ行きの違いや傾向を確認するのもよいだろう。たとえば次のような具合だ。
- 「有料のトラフィック」(図5赤枠部分)を利用してキャンペーンからの集客に絞り込む
- 「モバイル トラフィック」のセグメントを利用してスマートフォンからの訪問に絞り込む
それぞれ売れている商品の特徴や違いを把握し、次の集客施策やランディングページの制作に生かすことができないか考察を巡らしてみよう。
トランザクション単位で見る
次は[コンバージョン]>[eコマース]>[トランザクション]レポート(図6赤枠部分)で、個々の購入について見ていこう。
[トランザクション]レポートは標準では収益(売り上げ)(図7赤枠部分)の多いトランザクションの順に並んでいる。
あるトランザクションID(図7青枠部分)をクリックすると、そのトランザクションで購入した商品明細にドリルダウンする(図8)。
図8のケースでは「3種類の商品をそれぞれ1つずつ、合計で3つの商品を1回の決済で購入した(図8赤枠部分)」ということになる。[トランザクション]レポートでは、トランザクションID別に全体の売り上げ(収益)と購入した商品の総数量を一望できる(図7緑枠部分)ので、高額商品を1個だけ買った場合や少額商品を多数買ってくれた場合、少額商品を1個しか買ってくれなかった場合など、さまざまなケースに出会うことができる。
面倒かもしれないが、それぞれのパターンのトランザクションIDをいくつかクリックして図8のような実際の顧客ごとの1回の購入の明細を見ていこう。サイトでの物販は対面でないだけに、お客さんそれぞれの購買行動を生々しく再現しにくいものだが、購買行動は人によって全然違うもののはずだ。
「メインの商品と小物を併せ買いするのが多い」などさまざまな購入パターンがあることに気が付くはずだ。そうした生の購買行動を1件1件確認することをバカにしてはいけない。「そこにしか気付きはない」くらいの気持ちで無機質なデータとじっくり向き合う時間も大事だ。
顧客単位で見る
最後に1人ひとりの購買行動を理解するための[ユーザー]>「ユーザー エクスプローラ」レポートも紹介しておこう。「ユーザー エクスプローラ」レポート自体の詳細は別の記事も参考にしてほしい。
実はこの[ユーザー]>[ユーザー エクスプローラ]レポート(図9赤枠部分)は、[コンバージョン]>[eコマース]セクションのレポートの欠点を補っているので、ぜひ一緒に見ていただきたいのだ。
なぜなら、[コンバージョン]>[eコマース]セクションのレポートにはユーザー単位で「収益」(売上高)を確認できるレポートが存在しない。一方、[ユーザー]>[ユーザー エクスプローラ]レポート(図9赤枠部分)はeコマース系の指標である「トランザクション数」や「収益」をユーザー単位でレポートしてくれる。
まず[ユーザー エクスプローラ]レポートの「収益」指標(図9青枠部分)をクリックして、eコマースの売り上げの多い順にユーザーを並べる。そして上位のクライアント ID(図9緑枠部分)を手当たり次第にクリックして、その行動明細(図10)を確認しよう。さらに「トランザクション数」(図9黒枠部分)をクリックして、トランザクション(購入回数)の多い順にユーザーを並べ、今度は同様に気になったユーザーの行動明細を見てみよう。
図10が各ユーザーの行動明細にあたるレポートだ。ここでは時系列の順番でユーザーのページ閲覧やイベント、コンバージョンとトランザクションを確認できる。「$」表示のある列(図10赤枠部分)がトランザクションのあったセッションになる。
トランザクションのあったセッションはもちろんのこと、「その前後でユーザーがどのような集客チャネルから訪問したのか」は、中央の列(図10青枠部分)で確認できる。各セッションの閲覧ページなどの明細が見たければ、左の三角印(図10緑枠部分)をクリックすればよい。
ページ閲覧の明細を見ることで、「そのユーザーはじっくり検討しているのか、衝動買いしているのか」といった人それぞれの購買行動を確認できるだろう。大量買いする人の心理や行動をじっくり考察することで、新しい集客のヒントやページ内コンテンツの構成、次のページへの誘導路改善などの具体的な施策に反映できそうなヒントを探そう。
📝筆者が継続的に主催している講座群(Google アナリティクス中心)に興味がある方はこちらをご確認ください。
http://xfusion.jp/train.html
ソーシャルもやってます!