キリンとメルカリが語った、FacebookやInstagramを広告で活用する事例とポイント
自社ビジネスを伸ばすために、FacebookやInstagramを広告メディアとしてどのように活用するといいのか?
FacebookやInstagramというと、友人・知人との重要なコミュニケーション手段として、そして世の中を飛び交う情報を収集する手段として使っている人は多いだろう。
では、自社のビジネスをさらに伸ばすための広告メディアとして、そうしたプラットフォームをしっかりと活用できているだろうか? 検索広告や他の運用型広告と適切に組み合わせて利用できているだろうか?
ソーシャルメディアのマーケティング活用というと、これまで「企業アカウント運用」という軸で語られることが多かったこともあり、「広告メディアとしての活用」という軸ではまだまだ積極的に語られていない印象がある。
しかし世界でみると、広告主アカウントは、Facebookで600万、Instagramで200万を超えており、企業にとっては「ソーシャルアカウントでコミュニケーションする場」だけでなく「広告を届けるメディア」として価値が高まっていることがわかる。
では、日本国内でマーケティングを展開する広告主は、FacebookやInstagramの広告をどのように活用しているのか。
- メルカリでマーケティンググループのマネージャーを務める山代真啓氏
- キリンのデジタルマーケティング部とキリンビールのマーケティング部を兼務する野際陽介氏
という二者が語った、マーケティング全体像におけるFacebook広告やInstagram広告の位置づけや役割、そして広告手法と事例をお届けする(Facebook Japanが2017年末に開催したメディア向け説明会より)。
パーソナライズした動的広告によるサービス利用促進へと舵を切ったメルカリ
スマホアプリでサービスを提供するメルカリは、広告の目的として「アプリダウンロードの促進」だけでなく「サービス利用の活性化」、さらには「ブランディング」も含めるように進化してきている。
山代氏は、これまで行っていた広告施策を次のように語る。
2017年の前半までは、テレビCMなどで認知を積み上げて、Facebook広告などのオンライン広告でアプリダウンロードを獲得するというアプローチを展開していました。
この段階で注力していたのは「メルカリを知らないユーザーをどのようにサービスに誘導するか」という点です。
こうした施策によって、サービスの認知はターゲット層の8割・アプリダウンロード数は6500万を超え、メルカリの認知やユーザースケールを確固たるものにできたのだ。
しかし山代氏は、同社のマーケティングを新しいフェイズに進めるために、アプローチを2017年に転換していったのだという。
「アプリはダウンロードしたけれども、サービスを利用していない人」にどのようにアプローチしていくべきかという視点にシフトしました。
具体的には、次のような変化だ。
- これまで:
- 目的: 認知獲得(アプリのインストール)
- 施策: サービスそのものを訴求する広告を展開
- 現在:
- 目的: 利用促進(購入意欲の喚起)
- 施策: メルカリに出品されている商品単位でFacebookのダイナミック・アドを活用して広告を展開することで、よりユーザーの細かいニーズをターゲット
山代氏は、ターゲットを次の4段階のファネルに分類。
- メルカリを知らない
- 知っているけれどダウンロードしていない
- ダウンロードしても商品を閲覧していない
- 商品を閲覧しても購入していない
そのうえで、閲覧からの経過日数に応じたユーザーの動きを踏まえてユーザーあたりの獲得単価(この場合、アクティブなユーザーにするための単価)を設計し、どのファネルのユーザーにどれくらいの単価で広告を配信するかを細かくチューニングしていったのだそうだ。
メルカリ会員それぞれがメルカリ上でどの商品を閲覧したかの履歴データをFacebook広告と連携させています。
それによって、それぞれの人がメルカリで閲覧していた商品そのものや関連商品を(メルカリ会員がFacebookを利用しているときに)広告として表示することで購買意欲を喚起する広告を展開しました。
パーソナライズした動的広告によって、パフォーマンスの良い広告展開を実施できています。
これまでは、テレビでの認知獲得からのダウンロードの促進を目指してきた
認知獲得の目標を達成したことで、利用促進へと目標を転換した
利用属性によってターゲットを細かく分け、広告予算を配分した
ユーザーのサイト閲覧履歴データと連動させ、商品単位でのパーソナライズ広告を展開した
山代氏は今後の広告展開について次のように語り、ブランディングとセールスプロモーションの両立を目指す考えを示した。
スマホアプリを軸にしたビジネスでは、デジタル広告というとインストールの促進を目的にしたものに偏りがちです。
しかし、こうした「アクイジション(獲得)」と「ブランディング」は両立できるはず。簡単ではないが、それを実現するクリエイティブを作ることにチャレンジしたい。
FacebookやInstagramの広告にはさまざまなアドフォーマットがあるので、動画広告を見せながら商品のダイナミック・アドで購入を促すといった展開もできるのではないかと思っています。
テレビ広告を補完して認知獲得、飲用意欲向上を目指したキリン
一方、ブランド広告を展開するキリンが目指したのは、テレビ広告を補完するFacebook広告の活用だ。野際氏は次のように語る。
テレビへの出稿は今でも強く進めていますが、テレビを観ない消費者層が拡大しているのはご存知の通り。その層に情報をしっかり届けて認知の獲得や態度変容を促すために、デジタルを積極的に活用している。
また、テレビを観ている層に対しても、デジタルでも情報を届けることで、更なる認知獲得を期待できる。
たとえば「淡麗グリーンラベル」のプロモーションでは、テレビ広告をそのままInstagram上にも展開し、テレビ広告とデジタル広告の補完関係や相乗効果を検証したという。
結果的に、「テレビを観ていない層」や「テレビ視聴の頻度が少ない層」にも(淡麗グリーンラベルの)情報が届いたことが実証できました。
一方、「午後の紅茶」では、コアターゲットである20歳から34歳の女性に対してInstagram広告を中心にデジタル広告を展開し、態度変容に高い成果をあげている。
オフライン広告ではリーチしにくい若い消費者層に対してInstagram広告を積極的に展開した結果、他のデジタル媒体と比較して飲用意向が大きく高まりました。
ユーザーの手元で広告を閲覧して、そのまま(近くの店舗で)購入できるという点が大きかったのではないか。
加えて、Facebook広告ではユーザーのターゲットを細かく設定できることから、ターゲットリーチコストの効率も向上したのだそうだ。
テレビ広告ではリーチできない消費者層にアプローチして認知を獲得した
細かいターゲティングによってピンポイントに狙った消費者層に広告を展開した
テレビ広告との補完効果によって認知の向上、飲用意欲の向上を実現した
野際氏は今後の展開について次のように語り、デジタルならではの広告展開で消費者により深くアプローチしていく意欲を示した。
今後は属性や視聴シーンをターゲットできるというデジタルの特性を活かして、消費者の属性に最適化されたクリエイティブを届けるというマーケティングにチャレンジしたいと思っています。
性別でも嗜好性は異なるし、飲み物の好き嫌いもあります。Facebookのデータも活用しながらクリエイティブを作り分け、飲用意欲の向上を目指していきたい。
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