Buy Local時代のローカルSEOガイド――「Buy Local運動」をSEOに生かすためには?【中編】
この記事は、前中後編の3回に分けてお届けしている。
Buy Local運動という概念とその効果について述べた前編に続き、中編となる今回は、ローカルビジネスのキャンペーンを始動したいと依頼を受けたマーケティング担当者が知っておくべきポイントや、成功事例ついて解説していく。
まず前編を読んでおく
Go Localキャンペーンを適切な方法で始動させる
今回はローカルビジネスのキャンペーンを始動したいクライアントの企業が、独立系ビジネスの提携に加わった場合の影響はどういうものか? マーケティング担当者が次に取るべきステップを挙げる。
- まず、クライアントが行いたいGo Local、Shop Local/Buy Local/Stay Localキャンペーンがすでに対象ビジネスの地域社会に存在するかどうかを調べる。存在する場合、クライアントはそこに参加すればいい。
- 存在しない場合は、American Independent Business Allicance(AMIBA*)に問い合わせてみよう。AMIBAの人たちは、クライアントの地域社会で他のローカルビジネスオーナーが提携関係を結ぶことに関心を示しているかどうかを把握している。AMIBAの支援を受けて、当事者間をつないでもらえる。
- クライアントの地域社会に事業提携が存在しない場合は、提携関係を結びたい意向を対象となる地域に発信することをクライアントに勧めよう。地元紙にコラムを書いたり、ソーシャルメディアサイトに投稿したり、近隣住民に話したりしてみよう。キャンペーンを取り組む過程で、提携に関心のある別のビジネスからコンタクトがあるかもしれない。
- 単独で実施可能と判断するグループもあるかもしれないが、すでにキャンペーンを成功させたことのある他のビジネスの経験を活用する方が賢明だろう。AMIBAは、専門家のスピーカー、ワークショップ、現場でのコンサルティングなど、さまざまな地域社会向けトレーニングモジュールを有料で提供しているほかウェブサイト上で無料教材も豊富に提供している。
AMIBAのジェフ・ミルチェン氏によると、一般的なBuy Localキャンペーンを始動させるには、約3~4ヵ月かかるという。
Go Localキャンペーンの落とし穴に注意
ここで重要なのは、Go Localキャンペーンもやり方がまずければ失敗する可能性があることを知っておくことだ。以下に、特によくある落とし穴を避けるためにすべての提携参加者が注力すべき取り組みをまとめた。
- 「ローカル」ビジネスとは「独立経営」ときちんと定義する
そうしなければ、大手チェーンが参加してしまい、メンバーの一部が怒って離脱することになる。 - あらゆる形態の地域からの「後援」を重視する
「buy」(買う)や「shop」(買い物をする)などの言葉にあまりに忠実なキャンペーンは、独立した地域経済に欠かせない要素である小さな銀行や非店舗型ビジネス(SAB:Service Area Business)などを見落としてしまう。 - リーダーシップの多様性を確保する
年齢、人種、性別またはアイデンティティ、政治観、経済性などの要因をリソースに反映できない事業連携は、狭い見方しかできないために消滅する結果になるかもしれない。 - 「ビジネス成功」がどのようなものになるかを試算する
強力な提携関係を築くには、店舗側と住民側の双方に具体的な恩恵をもたらせるキャンペーンの予測値に基づいて意思疎通を図ることが大きなポイントとなる。 - 取り扱う商品やサービスを差別化する
常連客となった場合、オンラインでは簡単に手に入らない付加価値を備えた商品を、独立経営のビジネスが提供できるようにする。これは地域の特産品かもしれないし、専門家のスタッフと顔を合わせる時間などのメリットかもしれない。 - 地域での支出を増やすよう、地域社会を盛り上げる正攻法を採用する
キャンペーンでは、大手企業やオンライン企業を批判したり、同情を呼んで援助を求めたりすることに頼るべきではない。言い換えれば、ウォルマートやアマゾンで買い物をすることもあるからといって、地域住民に罪悪感を抱かせるのは優れた戦略とは言えない。1割でも地域での支出にシフトすれば、地域社会にプラスの影響をもたらし得るのだ。 - 地域社会のリソースを明確に評価する
強力なキャンペーンを生み出すのに必要な組み合わせの独立系ビジネスが、すべての町や都市、あるいは地方に存在しているわけではない。たとえば、米国人口の約2.2%は、食料雑貨店から何キロも離れた「食の砂漠」に住んでいる。これらの地域には、他にも欠けているローカルビジネスがあるかもしれず、市民農園や移動式マーケット、個人投資家、その他の独創的なソリューションを取り巻く草の根のキャンペーンを、地域社会の手で生み出す必要があるかもしれない。
要するに成功するかどうかは、同情を引く戦術を採るのではなく、明確な定義、明確な目標、多様な参加者、独立系ビジネスとしての誇り高いアイデンティティを持っているかどうかに大きく左右されるということだ。
そしてウェブへ戻る――我がホームグラウンドへ!
ここで、クライアント候補がBuy Localプログラムに参加する気になったとしよう。 では、次に何をすればいいだろう?
ミルチェン氏とのインタビューの中で私は、デジタルマーケティングにおいて「Buy Localキャンペーンに参加するビジネスを売り込むために何が使われていたか」を尋ねた。同氏によると数社のアライアンスがワークショップを行っている間は、その事業はまだ成長過程であり、将来成長することを願っているものだという。
ローカルSEO担当者として、その「将来」とは「今」であり、あなたとあなたのクライアントのものだ。以下では、Buy Localプログラムをデジタルマーケティングに生かするためのいくつかのキーワードと方法を紹介する。
基本的なデータ配信と一貫性
小規模なローカルビジネスは、ローカルビジネスのリスティングページに一貫性がなかったり、掲載すらしていなかったりする場合でも、気づかないことがある。オーナーがとにかく忙しいからだ。
このシナリオをデモする場合に最も手っ取り早いと私が思うのは、企業名と郵便番号を無料のMoz Check Listingツールに入力して、実際にどう表示されているかを見せる方法だ。手作業またはMoz Localなど手頃な価格のソフトウェアを使ってデータのエラーを修正し、空欄を埋めよう。
さらに、クライアントが地域や業界に特化したあらゆるディレクトリやプラットフォームでも存在感を発揮していることを確認しよう。
ハイパーローカライズ(超現地化)したコンテンツ制作チーム
そのビジネスがBuy Localプログラムに参加することを誇りとするコンテンツを構築する。
- そのビジネスについてクローズアップし、住民が支援できる理由、あらゆる経済、環境、社会的利点について書く。
- 意欲のある独立系ビジネスは、時間をかけて顧客を知ろうとする。その中にストーリーがある。顧客とそのニーズについて書こう。私は、独立系のレストランがメニューに大切な常連客の名前を付けているのを見たことさえある。個人としてのつながりを強調しよう。コミュニティを築くのだ。
- 小さな町でも、旅行客にとって強力な観光地になり得ることを忘れてはいけない。旅行者や、引っ越してくる隣人を温かく歓迎するコンテンツも作成しよう!
リンクビルディングを積極的に活用する
ローカルビジネスの連携は、B2Bの強力な絆を形成する。
- リンクを構築できる関連ビジネスとの関係を見出そう。たとえば、ケータリング業者はウエディングケーキの職人を知っており、ウエディングケーキの職人はプロの仕立屋を知っており、プロの仕立屋は聖職者を知っており、聖職者はDJを知っており、DJは花屋を知っている。
- 地域の組織、チーム、イベントを後援する機会や、ワークショップや会議を主催したり参加したりする機会、奨学金や特別なサービスを提供する機会に積極的に飛び込もう。
- 地域のメディアと率先して親しくなる。ニュースにする価値のある存在になろう。
感情の源泉
独立系ビジネスは、ビジネスと地域社会の強力な絆を形成する。
- ビジネス側が本当に顧客のことを知っていれば、オンラインレビューもはるかに頼みやすくなる。地域社会によっては、レビューを残す方法を顧客に教える必要が生じるところもあるかもしれないが、いったん戦略が決まれば、あとは簡単だ。
- 企業のウェブサイトに公開する文章や動画での「お客様の声」を依頼するのも、自然にできるようになる。
- その間も、クチコミマーケティングの力を忘れてはいけない。後援者は素晴らしい資産だ。
- 障害となるのは、ビジネスモデルが機密性を要する場合だ。結束の固い地域社会とは、住民がプライバシーの保護を望む傾向が比較的強いコミュニティなのかもしれない。
在庫状況をデジタル化する
消費者の30%は、店舗が近くにあると知っていれば、オンラインではなく地域の店舗で購入するとグーグルのThink with GoogleのUnderstanding Consumers' Local Search Behaviorでは述べている。消費者の半数以上は、店内に入って製品を手に取ってみる方を好む(Local Search Association)。消費者の63%超は、競合企業と比べて信頼できる企業から購入したいと述べている(Bright Local)。
これらはいずれも、信用度の高い独立系ビジネスなら、オンラインで存在感を示し、オンラインで購入するユーザーに対して必要な製品の在庫があるとのシグナルを送る必要があることを示すものだ。
多くの小規模なローカルブランドにとって、ウェブサイト上でEコマースを本格的に展開するのは、実装や管理の面であまりに大仕事だ。この問題は、小規模なローカルビジネスを何年も悩ませてきた。
小規模事業主は、アイルランドのスタートアップ企業であるPointyが提供する物理的デバイスをバーコードスキャナに取り付けることで、製品をPointyが管理するウェブページに掲載できる。しかし、それだけではない。PointyはGoolgeマイビジネスのナレッジパネルに在庫情報が表示される機能「See what's in store(*)」と連携するのだ。実際の例として、カリフォルニア州サンマテオにあるTalbot's Toylandの場合をチェックしてみてほしい。
Pointyは新興企業だが、WordPressの創業者やGoogleマップの共同開発者からエンジェル投資を受けたほど期待の持てる企業だ。私には真の勝者のように思えるし、アマゾンなどの大手デジタルブランドの台頭を受けて売上が低迷している実店舗型の独立系ビジネスにとって、真の答えを提示していると言えるかもしれない。
この記事は、前中後編の3回にお届けしている。最終回となる次回は、Buy Local運動においてローカルSEO担当者が果たすべき役割を、米国の実情を交えて紹介する。
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