マーケティング初心者がやるべきことは「ビジネスモデルを理解する」
新人マーケター:マーケティング担当になったものの何から手を付ければいいかわからない……。とりあえずリスティング広告を出せば良いのかな?
黒須:わかりますよ。SEO担当とか、広告担当と言われるとわかるんですが、マーケターって何からすればよいかが難しいですよね。
新人マーケター:そうなんですよ! マーケターと言われると範囲が広すぎて! 全体を考えるってどうすれば良いんですかね?
黒須:具体的な事例をもとに考えると頭が整理されるので、今日はビズリーチ社を題材に解説しますね。
マーケティングとは?
マーケティングって本当に難しいですよね。個人的に難しいと思う一番大きい理由はマーケティングという言葉の意味が人によって意味がバラバラなことです。
ある人は市場調査、ある人は商品開発、ある人は広告をマーケティングと呼んでおり、これは混乱するなあ、と日々感じます。
この記事では
- あなたのサービスに関心をもってもらう。
- 買ってもらう。
- 繰り返し買ってもらう。
この3つの目的を達成するためのすべての行動をマーケティングと呼ぶことにします。
具体的には、以下のような施策がそれぞれの行動に当てはまります。
- インターネット上に広告を出す。
- テレビに取り上げてもらうようにプレスリリースを送る。
- チラシを配る。
- 様々なお客様の決済手法に対応するために、後払い決済を導入する。
- ウェブサイトの使い勝手を良くするために、スマートフォン対応をする。
- LINEで友達追加してもらい、定期的に有益な情報を配信する。
- 繰り返し使ってもらう必要性を作るためポイントシステムを導入する。
これらの施策例は一部ですが、やることがたくさんありますよね。「やることがたくさんある」というのもマーケティングが難しいと感じる1つです。ですが、これらすべてに精通してる人は多くありません。
私自身ずっとSEOのコンサルティングをしていたのでわかるのですが、様々な会社が特定のサービスを提供しているので、そもそもマーケティング活動の全体を見る機会は多くなく、人数も少ないのです。これを、私が所属する才流ではドーナツ化と呼んでいます。
では、「マーケティングの目的を決め、どう目的を達成すればいいのかを考える」にはどうすれば良いのでしょうか?
そしてマーケティングを考える上で重要になるのが、どこからどのようにして粗利(売上-原価)を作っているのか。つまり事業の内容いわゆるビジネスモデルを理解しておくことです。
ビズリーチのビジネスモデル
2007年創業のビズリーチ。代表の南氏はモルガン・スタンレーという外資金融会社から転職する際に、自分にあった求人を探すことが困難だったと語っています。この問題を解決するためにできたのがビズリーチでした。
楽天やAmazonなどができたことで、消費者と小売はこれまで問屋などを通さなかったいけなかった商習慣が直取り引きになり、様々なコストが安くなりました。
同じことが人材事業でできないのか? という仮説をもとにできたのが、求人サービスのビズリーチです。ビズリーチの特徴は課金システムにあります。
通常の求人サイトの一般的な構造は以下の通りです。
- 求職者→求人を見るのは無料が無料。
- 求人を掲載する企業→運営会社に広告費を支払う。
しかし、ビズリーチは違う構造をしています。
- 求職者→求人を見るのは有料。
- 求人を掲載する企業→運営会社には求職者のデータを見る権利料を毎月支払う。
以上のように、「自社で集めたデータにアクセスする権利を販売」する一風変わった仕組みになっています。
データにアクセスする権利は、求人を掲載する企業だけではなく、人材エージェントやヘッドハンターにも販売しており、ビズリーチ経由で採用が決まると対価として成約手数料を支払う構造です。
この構造が成り立つのは、マーケティングによって希少価値が高い人材のデータベースを構築し、掲載企業やエージェントを数多く集めているからです。ビズリーチはこの2つの両輪をフル回転させて急拡大しています。
2つのターゲットと3つのマーケティング施策
前提として、ビズリーチのサービスは求職者(BtoC)、人事担当(BtoB)とターゲットがわかれています。そのため、マーケティングも求職者向け、企業向けの2通りがあります。
人材サービスはどの会社も求職者向けに力をいれることが多いですが、ビズリーチは企業向けのマーケティングも非常に長けている印象です。
両ターゲットに対するマーケティングで代表的な施策を2つに絞って解説します。
- 広告施策
有料広告、主にインターネット広告で人を集める施策。 - PR施策
メディアに働きかけ、自社をとりあげてもらうための施策。また、自社でメディアを立ち上げ、人を集める施策。
広告施策
人材サービスはサービスの単価が高いので、かなりの金額を広告に使ってもそれなりのリターンが返ってきます。そのため、人材領域の広告技術は他の業界と比べても競争が激しいです。
そのなかでもビズリーチは事業構造的に広告にかなりの施策と検証を重ねている会社です。
たとえば、広告の受け皿となるランディングページ。それぞれのデザインを見ると、短期間に細かなポイントが変わっているのがわかります。数多くのパターンを出稿し、最も良いページを残すことで成果を改善する「A/Bテスト」という方法とっているからです。
広告のキャッチコピーのアイデアに悩んだときには、ビズリーチの広告ランディングページを見るとアイデア発見の刺激になるはずですので、ちょっと眺めてみてください。
なぜ広告施策に注力しているのかというと、ビズリーチの事業構造がWebサイトの形と関連しているためです。
一般的な求人サイトは求人情報が公開されていますが、ビズリーチは希少性の高い求人情報がセールスポイントなので、ページに記載されている情報量が乏しいです。
情報が乏しい状況だと検索エンジンからの流入が見込めないため、広告費をかけざるを得ません。
また、ビズリーチ社のサービス、ビズリーチは500万円以上の年収がターゲットの人材ビジネスなので、商品の単価が通常の求人ビジネスよりも高いです。そのため、広告費用を積極的にかけられるといったポジティブな背景もあります。
PR施策
ビズリーチはPRが非常に上手です。特にテレビに対する露出(パブリシティ)が非常に上手く、日本に数多くある人材サービスのなかでもトップクラスに露出をとっていると思います。
エピソードとして有名なのは、ビズリーチ立ち上げのとき、テレビを含めて数多くのメディアで取り上げられた「ピンクスリップパーティー」です。
アメリカでは解雇通知書をその色にちなんでピンクスリップと呼び、失職者向けのパーティーが開催されています。
ビズリーチはこの日本版をリーマン・ショック時に実施し、PRとして大成功しました。ビズリーチのPR責任者の田澤玲子さんが数多くのウェブメディアでインタビューを受け、PR、広告が注目されるために重要な3つのポイントを語っています。
PR施策、広告施策が注目される3つのポイント
ポイント 1トレンド
まず、社会の関心にあった文脈でメディアに情報を提供しましょう。ビズリーチでは、「会社が言いたいことではなく、社会の課題を解決できる」といった文脈でメディアに情報を提供しています。
また、トレンドに合わせて新たな言葉を作り、社会に浸透させて市場を開発していくことも重要です。たとえば、ビズリーチ社が提唱した言葉に、「ダイレクトリクルーティング」があります。世の中より先に作り、世間に啓蒙していくことを意図していたそうです。
「◯◯といえば△△社」という顧客想起をPR活動で作ろうしている会社は少なくありませんが、ビズリーチはこの◯◯を自社で先に作ってしまうという発想です。
ポイント 2絵を事前に持っていく
そのニュースが映える絵になるかどうかも考えましょう。メディアに取り上げてもらうには、掲載後に人目を引けるかもポイントになってきます。そのため、事前に絵コンテなどを用意して、メディアの担当とコミュニケーションをとっておくと良いでしょう。
ポイント 3意外性を用意する
社会課題を解決する話は退屈や真面目なものになりがちです。 記者は時間がなく、大量のニュースに日々接しているので、短時間で関心を持ってもらう必要があります。
最後の「驚き」は何かを人にお話しするときに、最初の2、30秒で「へー!面白いですね!」という反応をしていただけるかどうかです(田澤玲子氏)
https://seleck.cc/1245
このように、ビズリーチではPR施策をマーケティングの一環ととらえ、相当な時間と費用を投資して行っています。
まとめ
ビズリーチでは、闇雲に情報を発信するのではなく、自社の特徴やビジネスモデルにあった広告施策、PR施策をしています。
広告費をかける部分と、費用をかけずに自社のサイトを使ったり、外部のメディアを使ってPRしたりと、使いどころを上手にわけているのです。
このように、自社のビジネスモデルを理解することによって、相性の良い施策を打って効率的にアプローチすることができます。
「マーケティングを考える前にまずビジネスモデルを理解する」
この意識できっとあなたのマーケティングは良くなるはずです。
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