なぜあのサービスはデータで成長したのか? 成功・失敗事例に学ぶデータマーケティングの新常識
「店舗の売り上げ日報」「ECサイト内の行動履歴」「顧客属性」などの企業の持つ各種データを繋げ、収益の向上に繋げる、そんなデータマーケティングを実現するために、ツールや人員体制をどうすればよいのか、頭を悩ませているマーケターは多いだろう。
「Web担当者Forum ミーティング 2019 春」に登壇したフロムスクラッチの三浦氏は、「中途半端な導入では、むしろ業務効率を下げてしまう」と警鐘を鳴らし、同社のデータマーケティングプラットフォーム「b→dash」を活用して、データマーケティングを成功に導く道筋を紹介した。
実話を基にしたおぎやはぎ×ボブ・サップのコマーシャル動画
データマーケティングとは、消費者の行動をさまざまな形でデータ化し、その結果を分析して、より理論的かつ精緻にマーケティング施策を実行しようという概念だ。
フロムスクラッチが開発・提供するマーケティングプラットフォーム「b→dash」は、そのキャッチフレーズが「5万円から始められるデータマーケティング」。お笑いコンビ・おぎやはぎをブランドキャラクターとしてCM動画を制作するなどして認知向上を図っている。
CM動画は、ある会社のデータマーケティング部に勤めるおぎやはぎとボブ・サップ(格闘家・タレント)が、データ活用シーンでよくある課題に振り回されるというストーリー。三浦氏によれば、その元ネタは、実際にb→dashの導入を検討しているユーザーから寄せられた失敗談だという。
たとえば、セミナー当日に上映された動画「お金がかかる」篇では、「データマーケティング実践のためにWeb接客やDMPなどのツールをドンドン導入したものの、コストばかりがかさんでしまい、それの責任を押し付けられたボブ・サップが“ビースト化”する」という構成だ。CMの反響は大きく、3000件を超える問い合わせがあったという。
動画の内容に共感していただいたというのはもちろん、データマーケティングへの注目がそれだけ高まっていることだと感じた(三浦氏)
実際にさまざまなサービス・事業がデータ活用によって成長を実現している一方で、データマーケティングを巡る失敗事例があらゆる業界で発生しているのもまた事実だ。よくある失敗は下記のようなものになる。
- データがバラバラで活用できない
- 複数のツールを導入してコストがかかりすぎる
- ツール操作が難しく使いこなせない
- リテラシーがなくてデータを使えない
三浦氏は、データマーケティングを失敗に終わらせないために、実際にあった「典型的な失敗事例」を3つ紹介した。
失敗事例 その① データ処理の膨大な作業に苦しむアパレル企業
とあるアパレル企業は、ECサイトと全国の店舗と間で相互送客を行うオムニチャネル化にいち早く取り組んでいた。その一環として、マーケティング部長主導のもとMAツールを導入したのだが、そもそも、店舗やECサイトごとにデータがバラバラに管理されているという状況があった。
そこで、ツールを使う以前に、データの抽出・統合などの作業を行わねばならず、データ処理の工数が予想以上に膨らんでしまった。担当者はSIerとのやりとりにかかりきりになり、とうとうプロジェクト開始から6か月経ってもMAツールを使い始めることができず、頓挫してしまった。
オムニチャネル化のためにMAを導入すること事態は間違っていない。問題の本質は、データの統合基盤を構築していなかったことに尽きる(三浦氏)
MAでデータを活用するには、事前準備が必要だ。三浦氏によると、少なくとも「取得」「取込」「統合」「変換」の4つのステップを経なければ、データはそもそも活用できない。
このアパレル企業の場合、店舗とECサイトでは収集しているデータが根本的に異なっており、最初のステップである「取得」の時点でつまずいていた。データを統合するデータウェアハウス(DWH)なしに、毎回手動でMA用にデータを揃えるのは、現実的には難しい。
データ統合自体も、正攻法でやろうとすると極めて複雑な作業になってくる。どこにどのデータがあるのかを調べることからはじまり、どのデータを統合し、どれを対象外とするかの選別、データクレンジングなどさまざまな対応が必要となる。そのため、1回のデータ統合に300時間以上かかることも珍しくないという。
失敗事例 その② ツール追加導入によるコスト増加と運用不全に悩むスポーツメーカー
グローバル展開をしていたスポーツメーカーでは、日本市場だけECサイトの収益率が低かった。これを改善するために、MAツールを皮切りに、レコメンドツール、Web接客ツール、そしてデータ処理の工数を削減するためのDMPと、各種ツールを次々と導入していった。
しかし、ツールが増えた分、各ツールを運用する工数が膨大になり、使いこなすことができず、やはりプロジェクトは頓挫してしまった。
失敗事例 その③ リテラシー不足に苦しむ健康食品通販メーカー
ある健康食品通販メーカーは、自社の抱える約180万人の会員に向けたOne to Oneマーケティングの実現を目指していた。そのために、マーケティング部がMAツールとDMPツールを導入したが、担当者のリテラシーには限界があり、施策用のデータを揃えるには、情報システム部のエンジニアの手をその都度借りなければならなかった。
情報システム部のエンジニアは、通常業務をこなしながら、マーケティング部の依頼に答えなければならない。スケジュールをやりくりしてやっとデータを揃えても、また別のデータがすぐにも欲しいと言われる。エンジニアにかかる負荷が大きすぎるため、この会社では、マーケティング部と情報システム部の関係が悪化してしまったという。
この事例では、先に登場したデータ活用4つのステップ「取得」「取込」「統合」「変換」のうち、「変換」をマーケティング部の担当者が自力ではできなかったのが失敗の原因だ。一般的にこの作業にはSQL言語を用いるため、リテラシーが高くないと扱いづらい。もちろんDMPのようなツールがあれば、これらの手間を軽減できるが、データの絞り込み条件をわずかでも変えようとすると事情が変わってきてしまう。
データマーケティング実現の3原則
これらの事例から得られる教訓は、せっかく導入したツールが、結局のところコストと工数の負担増だけを招いてしまうケースがあるということだろう。
では、データマーケティングを真に実現するためには、どんな手段をとるべきか。その1つの解が「データマーケティングプラットフォーム」だと三浦氏は指摘する。マーケターにとって真に使いやすいツールとなるべく、提供・開発が続けられている。
三浦氏は、データマーケティング実現にあたって重要な3原則として下記を挙げる。どれか1つではなく、3つすべてを同時に満たさなければならない。
- いつでもデータが使える:データの統合性
- ひとつでデータが使える:機能の網羅性
- 誰でもデータを使える:サービスの利便性
b→dashは、この3原則を満たしたプラットフォームだという。具体的な中身を見ていこう。
その① いつでもデータが使える:データの統合性
失敗事例でも言及したように、データをマーケティングに活用するには、商品情報・売上データ・サイト内行動履歴などから必要なものだけを抽出し、さらに連携・統合までを行わなければならない。この作業をマーケター1人で行うのは難しく、社内エンジニア・外部SIerの力を借りなければならなかった。
これに対し、b→dashはCDP/DMPとして機能するため、日々蓄積されていくデータが常に整理され、マーケター単独でも簡単に利活用できるようになる。
この根幹を成すのが、特許出願中の「Data Palette」技術である。フロムスクラッチのデータアナリストが25万時間以上の解析作業を行った、110業種・13万テーブル分の機械学習データが蓄積されており、これを活用することで、これまで数百時間をかけてきたような統合作業も、直感的な操作で数時間で実現できるという。
300時間かかっていた作業が10時間で終わるようになる。すると、290時間分は、マーケターがキャンペーンを企画したり、本質的な分析をしたりといった本来の業務のために時間を使える。この時間の使い方のチェンジが、企業にとっての勝ち筋の1つ。機械にできることは機械に任せ、人間は人間にしかできないことをやるのがポイントだ(三浦氏)
その② ひとつでデータが使える:機能の網羅性
マーケターにはやりたい施策がたくさんある。たとえば、顧客を育成したいならMA、サイト流入客のコンバージョンを向上させたいからWeb接客ツール、データを可視化するためにはBIといった具合だ。成果を追及すればするほどさまざまな機能が必要となり、しかし、すべて導入すると、コストや運用負荷がうなぎ登りになってしまう。
b→dashでは、マーケターが必要な機能・ツールを統合的に提供している。異なるツールを連携させるための設定も必要ない。必要な機能だけを段階的に契約できるため、最も安価なプランであれば月5万円からデータマーケティングを始められるというわけだ。
その③ 誰でもデータを使える:サービスの利便性
データ活用には、専門知識を持つエンジニアや、ツールを運用するための人的リソースが必要となり、リテラシー不足やリソース不足といった課題が付きまとう。
しかし、b→dashでは操作体系を全面的にGUI化することで、SQLの知識がなくても、直感的な操作でデータ分析を行えるようにした。導入から運用までの活用サポートやコンサルティングも充実させた。
三浦氏は「担当し始めて1年目というような方でもデータマーケティングのツールを使える体制にしておかなければ、プロジェクトは上手くいかないだろう」と補足。知識・経験を問わずに使えるデータマーケティングプラットフォームの意義を重ねて強調した。
b→dash導入企業の成功事例2つ
この成功の3原則を満たした事例として挙げられたのが、大手飲料メーカーのオンラインショップと、大手ファッション通販サイトだ。
大手飲料メーカー データ処理工数が300分の1、CVRは1.5倍に
大手飲料メーカーの一般消費者向けECサイトにおける事例である。同社の販売の主軸は卸売りであり、ECサイトは消費者と直接取引できる貴重なチャネルではあるが、データ分析にまで手が回らず、収益が伸び悩んでいた。
そこでb→dashを導入したところ、それまで1施策ごとに約3000分近くかかっていたデータ処理工数が約10分となり、1%以下まで激減した。
さらに、会員向けメール配信のアプローチも高度化した。これまではセグメントデータの掛け合わせができず、粒度の粗いコミュニケーションになっていたが、ユーザー属性や行動に合わせて、きめ細かい1to1マーケティングが可能になった。
結果、b→dash導入によってCVRは1.5倍、メール経由の売上は2倍、事業売上は1.35倍へと伸長したという。
大手ファッション通販サイト 企画から施策までのスピードが数十倍に向上
ある大手ファッション通販サイトも、b→dash導入によって成果を上げたという。以前は、データの取得基盤が未整備だったため、最大でも月に2~3回程度しか営業成績などのKPIを測定することができず、結果として意思決定のスピードが遅かった。また、そのKPIも売り上げや会員数など限られた範囲にとどまっており、的確な課題分析が難しかった。
b→dash導入でこれが変わった。KPIの管理は日次単位となり、またKPIの種類も30~50だったものを100以上に増やすことができた。これにより、企画から施策までのスピードが数十倍に向上、精緻な課題把握と意思決定が可能になったという。
三浦氏は最後に、「b→dash以外にもデータマーケティングプラットフォームは数多くある。導入するならさまざまな業者から話を聞いてみてほしい。機能で比較するのもいいが、担当者の熱意もデータマーケティングプラットフォーム導入の成否を握ってくる部分となる。抱えている悩みやワガママなど、いろいろな要望をぶつけてみてほしい」とアドバイスし、講演を締めくくった。
ソーシャルもやってます!