成功事例から紐解く、BtoCサービスを成長させる「マーケティングメソッド」を大公開
「データマーケティングで収益拡大を実現している企業の多くが、6つのステップをたどることがわかった」と語るのは、フロムスクラッチの三浦將太氏。データマーケティングプラットフォーム「b→dash」を提供するフロムスクラッチは、幅広い業界、業種のマーケティング支援を行っている。その経験から、不変のマーケティングメソッドにたどりついたという。
オンラインで行われた「Web担当者Forum ミーティング 2020 春」で、三浦氏はそのメソッドについて講演を行った。
データマーケティング成功のための共通の6ステップ
幅広い業種・業態の企業へのb→dash導入を通してわかった6つのステップ。それを、フロムスクラッチでは、サービスグロースのためのフレームワーク「Growth method」と呼んでいる。
三浦氏はそれぞれのステップについて次のように解説した。
1.Funnel(ファネル)
最初はFunnel。「量」と「率」の観点で、顧客の行動プロセスを操作可能な“変数”に変えていくステップだ。
このあとのステップで、実際の量、率を数値で分析していくことになるが、ここでは「どれだけ粒度を細かく、変数を整理できるかがポイントとなる」という。
2.Bottleneck(ボトルネック)
次は、売上増加を阻害する“お荷物指標”Bottleneckを特定するステップ。Funnelで整理した変数に数値を当てはめて計算していく。
たとえばECサイトなら、サイト訪問から購入までのプロセスにおいてどこでユーザーが脱落しているのかを数値で把握。次の2つの側面から、Bottleneckを特定する。
- その数値を改善したときの売上インパクトが大きいこと
- 改善施策を実施できる可能性が高いこと
3.Microscope(マイクロスコープ)
3番目はBottleneckの不調要因を、解像度を上げて分析するステップ。Bottleneckに特定した数値をさらに分解して細かく見ていくステップだ。
たとえばカート落ち率であれば、ユーザ属性、行動、購買実績などいろいろな切り口からセグメントに分け、それぞれの傾向を把握することで、カート落ちという事象の解像度を上げる。そして、特定のセグメントでカート落ち率が高いようであれば、そこを改善するための仮説を立てていくのだと、三浦氏は説明する。
また、1つの事象に対して多角的かつ粒度の細かい分析をするには、アクセス解析、ユーザーデータ、購買データなど、異なるデータを掛け合わせる必要があるとし、次のように付け加えた。
取得可能なデータをCDP(統合基盤)を活用して1つに統合し、あらゆる角度で分析できるようにしておくことが望ましい(三浦氏)
4.Reverse(リバース)
4番目はBottleneckの逆側の数字に注目するステップ。たとえば会員登録率が10%でBottleneckとした場合、登録しなかった90%に注目するのがReverseだ。
なぜ90%の人たちが会員登録しないのか、その理由をしらみつぶしに考え、顧客に聞き、そしてデータ分析を行うこと(三浦氏)
なお、Bottleneckの把握まではできている企業は多いが、リバースまで押さえている企業は少ないという。
5.Unrefusable Offer(断れない提案)
5番目は絶対に断れない提案・施策を企画するステップ。たとえば先の会員登録しない人たちの理由をつぶしていく。会員登録しない理由が「今登録する必要がない」ということならば、今登録するきっかけとしてクーポンを用意するなど、理由への対策となる施策をあてはめていく。
6.Operation(オペレーション)
そして最後の6番目が、改善のための施策を実施し、徹底したKPIモニタリングを行うステップだ。このステップでは、結果指標(メール開封率、登録数など)ではなく、現場が動きやすい、わかりやすい行動目標を設定することが重要だと三浦氏は語る。たとえば、「受付担当者はお客さまに必ず会員登録を勧め、そしてその行動自体にKPIを置く」といったアクションを決めておく。
なお、集計はできれば日次で行い、関係者で数字を共有していく仕組みを整えることが大切になる。
以上、6つのステップが「Growth method」となる。「この6つのステップができている企業が、業種・企業規模を問わず、成長している企業だ」と三浦氏は改めて強調した。
成功事例:ロイヤル化率アップで、売上22億円増加
続いて三浦氏は、大手EC専業アパレルA社がGrowth methodで売上22億円増となった事例を紹介した。
1.Funnel(ファネル)
まずはFunnelで次のようにビジネスプロセスを整理し、量と率の観点から操作可能な変数に変えた。
2.Bottleneck(ボトルネック)
その上で改善可能性があり、売上インパクトが高いものをBottleneckとして抽出したところ、その1つが「ロイヤルカスタマー率」だった。A社ではロイヤルカスタマーを「年4回以上購入する顧客」と定義しているが、施策実施前のロイヤルカスタマー率は約19%だった。
3.Microscope(マイクロスコープ)
このボトルネックを改善するため、Microscopeのステップでは、取得したデータをさまざまなセグメントに分解。ロイヤルカスタマーがどんな人なのかを分析した。つまり次の図のように、広告・キャンペーン、カート内商品、アクセスログ、ポイント保有など複数の観点から、統合したデータを細かく分析していったわけだ。
その結果、「ロイヤルカスタマーの72%が機能性インナーを購入している」ことがわかった。しかも「機能性インナーの購入者のうち39%が半年以内に同じ商品を追加購入」していた。
そこで、「機能性インナー購入」にロイヤル化のヒントがありそうだと判断し、追加購入の理由について仮説を立ててユーザーアンケート調査を実施。「消耗品だから追加購入」「家族のために追加購入」という声が多いことがわかった。
これらの結果から次の示唆が得られた。
- 機能性インナーの購入がロイヤル化につながるかもしれない → 機能性インナーの購入を促す
- 一度購入すると、自分用/家族用に追加購入機会がある → 機能性インナー購入経験者の追加購入を促す
4.Reverse(リバース)
こうした示唆から、Reverseのステップではまず「機能性インナーを購入しない75%」に着目。ここでもアンケートを実施して機能性インナーを購入しない理由を調べたところ、次の図のような「知らない」「興味がない」「商品ページが魅力的ではない」「口コミが少ない」といった理由があげられた。
そしてサイト分析からは、「全購入者のうち30%しか機能性インナーの商品ページを閲覧していない」ことがわかった。ここから、「機能性インナーへのページ導線を増やして認知拡大する」のと同時に、「商品ページ、レビューを充実させる」ことで、機能性インナー購入を促せるという仮説を立てた。
次に、購入経験者の追加購入を促すための仮説を立てる。購入後6ヶ月以内に追加購入したのは55%なので、「追加購入しない率45%」に着目。追加購入しない理由のアンケート調査を実施した。
追加購入していない顧客の多くは10代後半から20代前半だったが、追加購入しない理由の30%は「色を含むデザイン、バリエーションの不足」との回答だった、そこで、特に「若い世代向けの色・デザインのバリエーション拡充」が効果的なのではないかと考えた。
5.Unrefusable Offer(断れない提案)
Unrefusable offerステップでは不調要因をつぶすための提案を行う。
例えば、「機能性インナーを知らない」のであれば、オンライン広告や雑誌、バナーなどによるPRやメルマガ配信などで認知向上を図る、「商品ページの魅力がない、口コミがない」場合であれば、特設ページの開設やコーデ写真掲載、口コミ紹介などで信頼向上を図る、「色・デザインが少ない」のであれば、デザインバリエーションの拡充を含めた商品開発を行うなどの改善を行い、購買促進施策を実施することとした。
6.Operation(オペレーション)
最後のOperationでは、Bottleneckのロイヤル化率だけでなく、ビジネスプロセス全体の各種KPIを日次でモニタリングして調整していく。更に、施策の結果にもKPIを設定し、日々PDCAを回していく。事例では、「口コミを閲覧可能にすること」を施策として実施し、KPIの1つに「口コミの閲覧率」を設定、表示する口コミ数や表示方法をテストして日次で検証した。
この6つのステップを実施した結果、ロイヤルカスタマー率は19%から25%に向上し、ロイヤル化率としては32%アップ、売上は22億円増加するという大きな改善成果が得られた。
データマーケティングに潜む2つの落とし穴
この6つのステップのような改善を、すでに実践しているという企業もあるかもしれない。しかし、思ったような成果があげられていないというケースがあるなら、「多くの場合データマーケティングの落とし穴にはまっている」と三浦氏はいう。「同じ轍を踏まないようにその原因を説明したい」と続けた。
「データがバラバラ」の落とし穴
落とし穴の1つが「データがバラバラ」であること。MicroscopeではBottleneckをさまざまな観点から分析して解像度を上げていくが、ユーザーデータ、アクセスデータ、購買データなど、取得したデータがバラバラに管理されていると、掛け合わせて分析していくことが難しい。調べたい内容に合わせて、関連データを紐付ける必要があるが、その作業に時間がかかってしまい、不調要因の特定に至らないこともある。
しかしテクノロジーを活用すれば、この問題を回避できると三浦氏は語る。
CDP(Customer Data Platform)を活用すれば、顧客に関するあらゆるデータを一元管理できるようになります。結果、マーケティング施策や分析の度に発生するデータの連携工数を大幅に削減できます。b→dashを導入頂く皆様も、CDP機能を活用頂いております(三浦氏)
「データの運用」の落とし穴
次の落とし穴が「データの運用」だ。データ分析により施策が決まったあと、施策を実施するツールを導入するが、そのツールとのデータ連携や運用結果の分析でつまずく企業が多いのだ。
データ運用にはSQLなど専門的なプログラミングスキルが求められるため、マーケターが自ら「データ運用」を実践することは難しい。多くの企業は、社内エンジニアか、外部企業に依頼するかしかなくなってしまい、ある企業では社内エンジニアを使えば平均380時間という莫大な工数がかかり、外部企業に依頼しても数千万円単位のコストがかかってしまってしまうという状態だった。
b→dashは、テクノロジーでの解決をご提案しています。b→dashには、データの取込、統合、変換作業を、プログラミングなしで簡単に画面上で行える、「Data Palette機能」が備わっています。ある例では、400時間かかっていたデータ処理時間を5時間に削減。コストも、外注時にくらべて1/10程度におさえられます(三浦氏)
さらに、b→dashには施策を実施するためのさまざまなツール(MA、レコメンド、Web接客、LINE連携など)がオールインワンで入っている。フル機能が不要であれば、必要な機能だけ選んで使うことも可能だ。「b→dashであれば、データマーケティングの落とし穴を回避して、データによるGrowthができる」とアピールし、セッションを締めた。
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