【レポート】Web担当者Forumミーティング 2019 Spring

検索ユーザーに選ばれるコンテンツ設計とは?―小手先のノウハウではなく“検索意図”と“背景”を捉える

コンテンツを作る際に意識すべきこと、どうすれば検索の意図や背景を把握できるのか、実践を交えて解説
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検索エンジンが機械学習でランキングを決める現在、SEOで成果を上げるためには、小手先のノウハウではなく検索意図に応えるコンテンツ設計が重要だ。

Web担当者Forum ミーティング 2019 春」に登壇した、「Faber Company(ファベルカンパニー)」の白砂氏は、さらに、「検索意図を特定するだけでなく、なぜ検索したかという背景まで捉えることが大切」と述べ、検索上位を狙うためにやらなければならないことを、SEO初心者にもわかりやすく解説した。

白砂ゆき子氏
株式会社Faber Company コンテンツマーケティング部 シニアコンサルタント 白砂ゆき子氏

検索行動“意図の種類”を知っておく

検索エンジンは、検索順位を決めるために機械学習を使っていると言われている。そのような時代に上位表示されるのは、以下のようなコンテンツだと白砂氏は推測する。

  • クリックされるコンテンツ:検索ユーザーの欲しいものになっている
  • しっかり読まれるもの:読みやすく理解しやすい
  • 新しい提案があるもの:記事中や読了後に適切な誘導がある

コンテンツを作る時には、この3つを意識すべきということだ。

また、実際にコンテンツを作る際には、検索意図を把握しておくと作りやすい。情報収集段階であるインフォメーショナル・クエリで検索上位を狙いやすいのは、以下の4つだ。

①「とは」検索

基本的な情報が知りたいという意図。効果、症状、原因、時期、事例など、後ろに「とは」がつくようなキーワード。例えば、「着圧ソックス 効果」「反抗期 ない」など。

②「HOW TO」検索

やり方・使い方など、目の前の課題を解決したくて、「どうしたらいいのか」と思って検索しているもの。例えば、「靴下 畳み方」「反抗期 不登校」など。

③「比較検討」検索

「どれがいいか」を選ぼうとしているもの。例えば、「ブランド スニーカー」など。

④「感情」検索

気持ちをそのまま検索窓に入力するもの。誰かと共感したい、相談したいと思っている可能性がある。例えば、「旦那 嫌い」など。

◇◇◇

上位を狙える検索クエリの種類は、これら4つに加えて、購入直前に検索するトランザクショナル・クエリに近い「商品名 口コミ」などのクエリだが、「自分が狙うキーワードがどの種類に当たるか把握しておくと、ページの構成を作りやすい」と白砂氏は言う。

“本当の意図”に寄り添うタイトルと構成を作る

コンテンツの構成を考えるには、「ユーザーがどういうつもりで検索したのか」をわかっていなければならない。それを実感した白砂氏の失敗談がある。

白砂氏は、「SEOとは」という検索を行う人に対して、「SEOとは? 基本の手法とKPI設定・効果を出すには」というタイトルのコンテンツを作成したことがある。

KPI設定は重要だが、しかし、そもそもSEOが何かわからない人が、「KPI設定」という言葉を使うだろうか。自分のわからない言葉がタイトルに入っているコンテンツを、初心者はクリックしないのではないか。当然このコンテンツは成果がでなかった。こうした前提のズレは、「その分野に詳しい人ほどやりがち」と白砂氏は言う。

検索者の理解できない「言葉」を使わない

検索意図は、わかりやすいものもあれば、わかりにくいものもある。例えば、上で例に挙げた「靴下 畳み方」は靴下を畳む方法が知りたいのだと誰にでもわかる。しかし「反抗期 ない」の場合は以下の2つが考えられ、キーワードを見ただけでは判断がつかない。

  • (A)最近の子は反抗期がないって本当?
  • (B)反抗期がないことってヤバイの? 大丈夫?

このような場合に検索意図を深く知るには、下記のような方法をとる。

STEP ① その検索クエリでの検索結果を見る

実際にそのクエリで検索を行い、その結果を見てどのようなページが上位になっているかを確認する。「反抗期 ない」の場合は、(B)のコンテンツが上位にきていたため、「反抗期がなくて大丈夫なのか」を語るコンテンツを作ればよさそうだということがわかる。

STEP ② 周辺キーワードを調べる

検索意図がわかったら、その背景を探るため、サジェストキーワードを使って周辺キーワードを調べる。反抗期の場合、可能性としては2パターン考えられる。

  • (a)現在、子どもの反抗期がないことを心配する親
  • (b)過去、自分には反抗期がなかったが大丈夫かと心配している本人

サジェストキーワードを調べると、現在と過去のどちらのキーワードもあるが、現在を心配している(a)のキーワードのほうが少し検索ニーズが多いことがわかった。

STEP ③ 掲示板を読みまくる

どちらのパターンでコンテンツを作るべきか確定させるためには、Q&Aサイトや相談掲示板などをたくさん読むのがよい。すると、(a)も(b)も存在するものの、より悩みが深そうなのは(a)だと推測。

STEP ④ 検索結果を分析する

次に、実際の検索結果を注意深く分析する。以下の図は、検索エンジンの検索結果を白砂氏が分析したものだ。基本的には、親(保護者)向けのサイトで、良いか悪いかの議論があるものが上位に並び、その下に「反抗期がないのは悪いこと」と決めつけた対処法が並んでいる。

◇◇◇

ここまでの4ステップの分析で、「反抗期 ない」の周りに存在する意図と背景について、およそ以下のようなことがわかった。

  • 検索キーワードは「現在」「過去」両方が存在し、「現在」を意味するものが多い
  • Q&Aサイトでも「現在」「過去」両方が存在し、「現在」を相談するほうが悩みが深そう
  • 検索結果では、思春期・反抗期の保護者向けの内容が多く、上位3つは「良いか悪いか」を明記しているタイトル文
  • 検索結果にでる関連キーワードには、「将来の不安」が多い

これで作りたいコンテンツが明確になった。下記のようにペルソナと背景、伝えたいことで整理する。

ペルソナと伝えたいことが洗い出される

これらを踏まえたコンテンツに、白砂氏は以下のタイトルをつけた。

「専門家監修【反抗期がない】は大丈夫?対処法と実例、なかった子の将来」

Faber Companyが提供しているSEOプラットフォーム「MIERUCA(ミエルカ)」を使えば、ここで行ったようなサジェストキーワード分析やユーザーニーズの分析などが可能となる。

順位を上げるためにすべきことはコンテンツの改善

検索エンジンは当初から、ユーザーの利便性を第一に考え、ユーザーが喜ぶことをというスタンス。それは最近の検索順位を見ていて、よくわかる(白砂氏)

UX(ユーザー体験)をよくすることがすなわちSEOにつながると白砂氏は考えている。一度作ったコンテンツの検索順位が伸び悩んでも、改善(リライト)すれば検索順位が上がる可能性がある。そのために役立つのがヒートマップツールだ。

ヒートマップツールを活用してユーザーの閲覧傾向を探った事例として、白砂氏は、カゴヤ・ジャパンの「カゴヤのサーバー研究室」というオウンドメディアでの取り組みを紹介した。本取り組みから以下のような傾向と施策が、ユーザー体験を良くすることに繋がるのだと解説した。

Tips ① 図解大好き

ヒートマップでは、閲覧者が長く見た(=熟読)箇所が赤く表示される。事例にあげたページでは、全体で最も熟読されている部分は「図解」の部分だった。他の記事においても同じく図解部分がよく見られていた。

特に「とは」検索において、ユーザーは図解を好む。必然的に、図解の近くにあるテキストは熟読される傾向になる。

Tips ② 書式の変化で足止め

以下の図は、ユーザーが行った「スクロール」と、実際にユーザーが熟読した「箇所」をグラフにしたものだ。スクロール率は徐々に下がっていくのに対して、熟読箇所は“山”と“谷”を繰り返している。

熟読箇所は山と谷を繰り返す

この山になっている部分をヒートマップデータで確認すると、ユーザーが熟読しているエリアは、見出し、図、表組み、箇条書きなど、書式の変化をつけた部分だとわかった。

Tips ③ すぐに疲れる(特に「とは」検索)

某キーワードで検索1位を獲得しているコンテンツのヒートマップデータを見ると、前半こそ読まれているものの、後半はほとんど読まれていない。つまり、ユーザーは記事を読むのにすぐに疲れてしまうため、最後のほうは流し読みされる傾向が強い

ヒートマップデータからわかった読者の閲覧傾向

ここまで、ヒートマップツールを活用した分析からわかったことをまとめると、読者が記事を閲覧する際には、以下のような傾向がある。

  • 意味のないイメージより理解を促してくれる「図解」を好む
  • だらだらと長く続くより、「書式の変化」を好む
  • コンテンツ下部のほうはしっかり読んでもらえない

つまり、読者を飽きさせないデザインを用いて最後まで読んでもらう可能性を高めることが重要だと白砂氏は言う。

ちなみに、Faber Companyは、SEOに特化したシンプルな機能と価格の安価さが特徴の「MIERUCAヒートマップ」も提供している。

「スクロール」「アテンション」「クリック」の3つが確認できる「MIERUCAヒートマップ」

最後に白砂氏は、本日のまとめとして、コンテンツを作る際のポイントを下記のようにまとめ、講演を締めくくった。

  • ユーザーの「背景」まで含めて、検索意図を読み取ろう
  • 図や書式を活用してユーザーに読んでもらいやすい工夫を
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