成果につなげる! コンテンツマーケティング最前線

5年間熱望したキーワード「確定申告」で上位表示を実現! 検索流入を昨年比165%アップさせた弥生流コンテンツ制作ノウハウ

キーワード「確定申告」で検索3位を取った弥生株式会社のオウンドメディア「スモビバ!」。そこに至るまでの改善ポイントをご紹介します。

「スモビバ!」は個人事業主の確定申告や会計をサポートするソフト「弥生」シリーズを提供する弥生株式会社が運営するオウンドメディアです。2013年12月に公開され、同社のメインターゲットとなる個人事業主や起業家、中小企業の経営者などスモールビジネス事業者が運営上知っておきたい情報や、直面しがちな悩みに答えるコンテンツを提供しています。

外部パートナーと協力しながら5年間運営を続け、成長の停滞を感じるようになった「スモビバ!」が、ミエルカを導入し、苦境を脱した経緯をマーケティング部マーケティングコミュニケーションチームの庄子佑氏、遠藤哲郎氏、上原昌代氏に伺いました(インタビュアー=Faber Companyカスタマーサクセスチーム 脇野兼大氏)。

<施策のポイント>
  1. 改修工数を削減しつつ、狙った記事を効率的に作る体制を構築
  2. キーワードごとにユーザーに近い立場のライターをアサイン
  3. ターゲットに合わない記事はあえて作らないことでCVに繋がりやすいPVを獲得
(左から)弥生株式会社 マーケティング部マーケティングコミュニケーションチーム 庄子佑氏、遠藤哲郎氏、上原昌代氏、Faber Companyカスタマーサクセスチーム 脇野兼大氏。

個人事業主・起業家・中小企業向けメディア「スモビバ!」を2人で運営

―― 皆様で「スモビバ!」を運営されているということですが、まずは皆さんが担当されてらっしゃる業務についてお聞かせください。

庄子佑氏(以下、庄子): 私は申告製品/会計製品をメインにプロモーションを担当しており、「スモビバ!」もマーケティング手段の一つとして活用しています。「こういうキーワードで集客したい」というときには遠藤、上原に相談して、叶えてもらっているんです。

申告製品/会計製品をメインにプロモーションを担当する庄子氏。

遠藤哲郎氏(以下、遠藤): もともと上原が「スモビバ!」を担当していて、私が1年半前くらいに入社しました。現在はオウンドメディア運営全体の統括を私が担当し、上原が実務をメインにミエルカを活用してコンテンツ制作を担っています。上原は弥生製品にとても詳しく、その知識も記事作成に活かしています。

上原昌代氏(以下、上原): 私は、おもに記事の企画やコンテンツ確認、執筆者の選定、スケジュール管理などを行っています。どうしても、業務軸や法令に関係する記事が多くなりますので、間違いがない情報を提供するように心がけています。

課題だった記事改修時の工数を削減、さらに狙い通りの記事を効率的に作る体制を構築

―― ミエルカを導入された経緯は?

庄子: 2013年から5年間、コンテンツSEOに関しては特定のツールを使うこと無く、ほぼ自力でやってきました。外部のSEO会社にも相談しましたが、内部構造などテクニカルな話が多く、コンテンツ内容にまで言及されることは少なかったですね。2017年になると成長が鈍化して、製品サイトへの送客が前年比マイナスになってしまい、どうしたものかと悩んでいました。

遠藤: その課題は入社してすぐ「スモビバ!」の担当になってから感じていました。特にコンテンツの作成方法に問題があると。前職でミエルカを利用していたこともあり、正しく活用すれば「スモビバ!」でも効果が出るはずだという思いがありました。

オウンドメディア運営全体の統括を行っている遠藤氏。

―― 実際に導入されて、いかがでしたか?

庄子: 社内で記事を改修するにあたって、ミエルカ導入以前は、制度変更や法令改正に合わせて、関連する記事で古くなった部分のみをその都度改修していました。SEOを意識した取り組みはできていませんでしたね。しかし、導入後は情報の更新のタイミングで記事の内容自体を見直すようになり、より効果的に記事改修を進められるようになりました。

上原: SEOを意識した記事改修については、SEOコンサル会社に提案を受けてはじめてターゲットキーワードの検索ボリュームや改修候補の記事の順位を確認し、「改修する or しない」を決めていたのでスピードが遅かったですね。ミエルカを使うようになってからは社内でターゲットキーワードの検索ボリュームや記事の順位をモニタリングできるようになったので、「本当にその記事を改修すべきなのか」「提案を受けた記事の中でも優先順位が高いのはどれなのか」を検討する時間を短縮化できました。

4つの力(集客力・閲覧力・誘導力・成果力)を指標に、各記事の強み・弱みを把握・分類の上CV導線の参考にしたり、ターゲティングキーワードごとの検索順位をモニタリングして競合に負けている記事を発見したりなど、記事改修の優先順位付けを自力でできるようになりました。また実際に改修する時には、ミエルカを使って上位サイトと質問サイトの共起語を調査。記事内に不足しているキーワードを洗い出すことでどんなトピックスが不足しているのか分析できるので、スピーディな取り組みが可能になりました。

サイトの成果をあげる4つの力
4つの力が、サイトの成果を上げるための指標となる。

―― 新規記事の作成で変わったことはありますか?

遠藤: 導入前は、税理士など専門家の方々に記事執筆を依頼する際、ざっくりしたキーワードと記事の概要をお伝えするだけでした。できあがった記事は読み物としてはものすごく役に立ちますし、読みごたえもあって面白いのですが、検索流入で読まれるという観点でいうと、専門知識がありすぎるがゆえにユーザーの検索意図とズレてしまっている場合も多く、狙ったキーワードで検索上位に表示されることが難しいこともありました。

そうした課題もあったので、ミエルカによってユーザーの検索意図まで組み込んだ構成案を作成し、それをもとに専門家の方に依頼するようになりました。具体的には、ターゲットキーワードと、その検索結果・サジェストキーワード分析による検索意図、どんな人が何を知りたくて読むのか、読んだ後にどんなアクションをとるのか、などを前提とし、記事の構成案(各章の仮見出し、記載してほしい内容)を執筆者にお伝えしています。

税理士など専門家に執筆を依頼することが多いため、専門家ならではの知見や、疑問に対する正確な答えなども構成案の段階で入れてもらうようにお願いしています。そうすることでSEOコンテンツとしての精度が上がり、成果が出やすくなっただけでなく、専門家の方々とユーザーニーズをすり合わせやすくなりました。

上原: 専門家の方が「そんなことは前提知識であって、わざわざ書く必要はないだろう」と思って省いていた情報こそが、ユーザーが必要とする内容だった……ってことも多いですよね。ミエルカを使って構成案を作成することで、専門家の方にも「ユーザーはこの情報を知りたがってるんです」というところが伝わりやすくなり、手戻りが50~70%減りました。

導入前は、初稿のチェックを含めて2~3回は原稿を差し戻していましたし、時には全面改稿もありました。現在は、企画段階で固められるためユーザーニーズからずれた原稿がなくなり、チェック1回で公開できる原稿がほとんどです。

記事の企画やコンテンツ確認、執筆者の選定、スケジュール管理など、コンテンツ制作の実務を担う上原氏。

ユーザーニーズを理解した執筆者による、より検索意図に則した記事づくり

―― 社外の方とのコミュニケーション面での変化はありましたか?

上原: 検索意図やユーザーニーズに合った執筆者の選定ができるようになったことです。

左から、上原氏、遠藤氏、庄子氏。3人の真摯な取り組みが、スモビバ!の成功へとつながっている。

弊社では専門家だけでなく、個人事業主のライターさんなどにも記事を依頼しています。キーワードによっては専門情報を伝えるよりも、ユーザーさんに近い立場の個人事業主のほうが検索意図を汲み取れるということもありますので。たとえば、実際にe-Taxで確定申告をした体験談を語っている記事「マイナンバーカード方式を実際にやってみた」なんかがそうですね。

こういった、実際に体験談を読みたいユーザーが多かったり、実体験ならではの内容が生きたりするような場合にはライターさんに依頼し、一方で専門知識が必要な場合には専門家に依頼する、という出し分けをすることで、よりユーザーニーズに沿った記事をアップできるようになりました。

遠藤: 構成案の作り方も、ライターさんによって変えています。きっちり要素を指定したほうがいい記事を書いてくれる方もいれば、むしろエッセンスだけお伝えしてある程度自由度があるほうがいい記事になる方もいます。そういった執筆者に合わせた依頼方法も意識して変化をつけています。

上原: 法令に関する記事などはどうしても記事中に漢字が多くなってしまうので、柔らかい書き口の先生に依頼して読みやすくする、また先生の得意分野に合わせて依頼して知識を引き出すなど、個人の良さを活かし、ユーザーのためになる記事づくりを意識しています。

量より質!の筋肉質なマーケティング

―― 自然流入数が前年比165%、「スモビバ!」から製品ページへの遷移数が前年比133%、「スモビバ!」経由のCVが前年比120%という成果が出ていますが、秘訣はありますか?

庄子: 弊社の商品やサービスに直結しない無駄な集客はせず、ターゲットに合わない記事は作らなかったので、CVに繋がりやすいPVを集められたと思います。たとえばですが、会社員が医療費控除をする場合、確定申告に弥生の製品を使うことはありません。医療費控除の記事はPVが見込めますが、ターゲットではない会社員を集客することに意味はありません。個人事業主の方にサイトに来てもらって情報を得てもらうことが目的なので、「個人事業主の確定申告」にとってノイズとなる集客をしない。それが健全な成長につながったのではないかと思います。

左から、上原氏、遠藤氏、庄子氏。筋肉質なマーケティングが成功の秘訣だと語る。

さらに、記事中から製品ページへの導線設計でも、AMP(Accelerated Mobile Pages:モバイル端末でウェブページを高速表示するための手法のこと)で入ってきた方に対しても送客できるような仕組みを作ったり、広告枠のCTR(Click Through Rate: クリック率。検索結果に表示された回数のうち、実際にクリックされた割合を示す)を上げる取り組みを行いました。

上原: 一方で、CVにはつながらないけれども、個人事業主に必要な情報については記事を作成し、サイトへの信頼感を高める施策としています。実際に確定申告をするときに、「思い出してもらえたらラッキー」というような内容です。

庄子: わかりやすいキーワードだと「ふるさと納税」は一般の方も検索するのでPVがすごく稼げますし、節税の一手段として事業者の方にも有用な情報なので記事は作成します。ですが、それで1位は狙いにいきません。

遠藤: 製品についても、個人事業主だったら絶対に使わなければいけない、というものではないので、まずは記事の情報を役立てていただき、その上で申告ソフトを使うとこんなに良いことがありますということをお伝えして、必要があれば購入いただくというスタンスでメディアを運営しています。このスタンスが成功している要因ではないかと考えています。そのおかげで、本当に興味がある方、つまりCVにつながる方を集客できているのだと思います。

庄子: 弊社のプロモーションの方針として、広告でもコンテンツでも「大量投下をしない」という決め事があります。ニーズがあるところに狙い撃ちで計画を組んで、予算をかけるという形です。弊社では”筋肉質なプロモーション”と呼んでいます。ミエルカを導入した理由も、効率化もそうですが、何より質の高い記事をつくり、ユーザーに役立つ情報を提供したかったから、というところが一番大きいです。

5年間熱望したキーワードで国税庁、Wikipediaに次いで3位を獲得

―― コンテンツ作りを変えられてから、社内で一番盛り上がったのはどんな時でしょうか?

庄子: 今年の3月に「確定申告」で国税庁、Wikipediaに次いで検索3位を取ったときですね。

確定申告の分析結果
ミエルカの「インテンショングルーピング」機能を使って、「確定申告」を調べたユーザーの検索意図を自動で分類・可視化した例。意味の近い関連トピックは近い位置に表れる。
弥生会計目次
分析によって可視化されたユーザーニーズを、コンテンツの構成に反映。詳細かつ的を得た内容で肉づけしていく。

上原: 去年の10月くらいにミエルカを使って構成を組みなおしてリライトした記事です。また「e-tax」で検索1位になった時にも盛り上がりましたね。

遠藤: 特に「e-tax」は1位を狙って企画を立てて作った記事だったので、非常にうれしかったです。「これだけがっつり取り組んだのだから、順位が上がってくれないとな」という思いもありました(笑)。

左から、上原氏、遠藤氏、庄子氏。キーワード「確定申告」で国税庁、Wikipediaに次いで3位を獲得して盛り上がったという。

上原: 「スモビバ!」の成長の伸び悩みがあり、このあたりが限界なのかなと思うこともありましたが、「確定申告」で3位、「e-tax」で1位を取り、「まだやれることがたくさんある!」ということに気づけました。

―― 質にこだわったコンテンツ作りの成果ですね。

遠藤: コンテンツ作成の際には、執筆者だけでなく編集、校正など、多くの関係者がいます。同じ構成案を前提にすることで、記事の目的やユーザーの検索意図を共通の認識とし、意思統一ができるようになったことが大きいですね。

左から、上原氏、遠藤氏、庄子氏。そして、インタビュアーの株式会社Faber Company 脇野兼大氏。

未来を予測し、ユーザーニーズを先回りするメディアを目指す

―― 今後の課題と取り組みを教えてください。

庄子: 法令改正を先行して情報を出していくのは、「スモビバ!」だけでなく会社全体の課題ですね。世にまだ情報がないキーワードに対して、どうやってユーザーのニーズを先回りしてコンテンツを作るのかを考えています。

上原: 改正の発表からどれくらい経つと検索ニーズが高まるのかを予測し、タイミングを合わせて記事を作成する取り組みもしています。

庄子: ミエルカを使って「過去の経験・情報からコンテンツを作成する」はできるようになりましたが、未来を予測してコンテンツを作成する難しさを実感しています。

遠藤: 他のメディアに率先し、業界リーダーとして新しい情報を提供できるメディアになれればと思っています。

―― ありがとうございます。楽しみにしております。
 

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