アフターコロナでどう変化する? 生活や購買行動で変わったことを聞いてみた
新型コロナウイルスの流行は、マーケティングにも不可逆な変化を強いています。顧客体験のこれからを、数値ではなく生活者のナラティブ(語り)から読み解くと……? コレクシアの村山氏が解説する集中連載。(第1回)
生活者の行動が変わった今、マーケターがすべきことは
すでに多くのマーケティング担当者は、新型コロナウイルスの影響によるさまざまな生活者行動の変化を目の当たりにし、その対応を進めている最中であると思います。
博報堂生活総合研究所が発表した、「第1回 新型コロナウイルスに関する生活者調査」(2020年4月)によると、以前と比べて生活者は大きく不自由を感じ、旅行やレジャー、交友を控えるなどといった行動の変化が表れていることが報告されています。
マーケターが目にする自社ブランドの顧客動向や、自分自身に及んだ変化を顧みても、コロナ禍が生活者の行動を大きく変えたことは誰しもが実感していることでしょう。
生活者の行動が変化したことで、現在多くのマーケターが今まで予定していたマーケティング活動の変更を余儀なくされ、対応に追われています。ですが数か月か、半年か、1年以上かはまだわかりませんが、いつかコロナ禍が過ぎ去り世界が平穏になる時は訪れるでしょう。
しかし、コロナ禍が過ぎ去った後、世界は何もかも元通りになるでしょうか。マーケターはコロナ禍が過ぎ去った後は、元々予定していたマーケティング活動を、今まで通りの戦略でそのまま再開すればよいでしょうか。おそらくその答えはNOです。コロナ禍は不可逆な変化を生活者にもたらし、マーケターは顧客の捉え方を見直す必要に迫られます。
日本人の約半数が戻れない変化を自覚している
生活者に及んだ変化は、コロナ禍が過ぎ去った後も残り続けるのかを調査した結果を紹介します。「あなた自身の『商品の購入方法や購入頻度、商品を選ぶときの基準や選び方』に変化はありましたか。」という質問を、日本全国20~69歳の男女を対象にアンケート調査を行い、集計しました。
結果、すでに商品の選び方や買い方に何かしらの変化があったと自覚している人の合計は55%にのぼり、そして変化を自覚した人のうち約80%が、すでに変化した自分の「商品の選び方・買い方」は、コロナ禍が過ぎ去っても「変化したままだと思う」と回答しています。
つまり、すでに日本の約半数の生活者が、コロナ禍によって自分の購買行動に不可逆な変化が起こったことを認識しているわけです。これはマーケターが今までに思い描いていた生活者像は変わってしまっていることを示し、ひいては今まで想定していた顧客向けに作られたマーケティング戦略そのものが、アフターコロナでは役に立たなくなる可能性を大いに含んでいると言えます。
今マーケターが知るべきは、生活者の「認識変化」
では、アフターコロナに備えてマーケターは何をするべきでしょうか。たとえば「家にいる生活者に接するためのデジタル施策を強化する」というのも決して悪い指針ではありませんが、具体的な施策を論じる前に、生活者に起こっている「認識変化」を捉え、自社のマーケティング活動にどのような影響を及ぼすのかを理解することが先決です。
新型コロナウイルスの影響でもたらされた、生活者の「行動変化」を分析し発表した記事はすでに多く見られます。動画配信サービスの利用が増加したことや、生活必需品の需要が増えていること、外食やアパレルの利用は減っていることなど、実際に生活者の行動は変化し、それはさまざまな数値で観測されています。マーケターの方々であれば、自身が日々確認しているUUやCV等の各種KPIについても変動が確認できていることでしょう。
しかし「行動変化」というものは、何の前提もなく突然起こるものではありません。生活者に何らかの「認識変化」が起こった結果、それが行動に反映され、「行動変化」が起こります。
たとえば非常に簡単な例ですが、「動画配信サービスの利用が増加した」という行動変化が起こった背景には「外で遊べなくなって、暇な時間が多くなり退屈だ」という生活者の認識変化があると推測されます。
認識変化: 外で遊べなくなって、暇な時間が多くなり退屈だ
→ 「娯楽に時間を使いたいが外に出られない」というインサイトがある
↓
行動変化: 動画配信サービスの利用が増加した
行動の背景にある認識変化を理解し、生活者にどのようなインサイトがあるかを捉えて初めて、「じゃあそのような生活者に自社のサービスは、どのように価値を提供できるだろうか」というマーケティング指針の議論ができるわけです。
現在、マーケターはデータ上で生活者の行動変化を捉えていると思いますが、その背景にある生活者の認識変化を捉えて初めて、アフターコロナで行うべきマーケティングの指針をつくることができます。
n=1の生活者のナラティブ(語り)から、背景の認識変化を読み解く
では、生活者の「認識変化」をどのように捉えるべきでしょうか。最もシンプルな方法は「生活者に直接語ってもらう」です。まず下準備として、簡単に以下のようなアンケートを行い、実際に「行動変化」した人を集めました。
このグラフでは、3,023名の回答者に、どのような行動の変化が起こったかを選択(複数回答可)してもらっています。すでにさまざまな記事でも語られているように、動画配信サービスなどの利用増や、キャッシュレス対応の促進、自宅での飲食機会の増加が起こっていることは、このデータからも見受けられます。
さらにここから、変化が起こった人に「どのような変化があったのか」を、自由記入回答形式で答えてもらいました。大きく分けて以下の3パターンに分けてまとめています。
- 今までも使っていたが、別の良さに気付いてさらに使うようになった商品・サービス
- 今まで使っていなかったが、良さに気付いて使うようになった商品・サービス
- 今まで使っていたが、使わなくなってしまった商品・サービス
簡単にアンケートした結果を直接読み、「今後も消費者の習慣として定着しそうなもの」をハイライトしてまとめています。
たとえば、一例読み取ってみましょう。「1.今までも使っていたが、別の良さに気付いてさらに使うようになった商品・サービス」の回答を見ていくと、YouTubeやNintendo Switchのようなメディア・プラットフォームは、以前から指名の動画やゲームを楽しむために使われていたものの、今回の新型コロナの影響により、「オンラインで遊べるものも多く、無料ダウンロードできるソフトも多数あるのでよく遊ぶようになった。」というように、プラットフォームとしての利便性が感じられている、ということが読み取れます。
この現象を消費者の認識変化として捉えると、元々は「遊びたいゲームを遊ぶためにSwitchを使う」であったのが、「ゲームを探せるプラットフォームとしてSwitchで遊ぶようになった」という変化が起こったと読み解けます。この結果から、今までWebサービスやアプリなどでプラットフォームを提供していた商品・サービスは、今回の環境変化により、その価値を見直され、顧客のLTV(Life Time Value/顧客生涯価値)が向上している可能性がありそうだ、という仮説が得られます。
今回は一例だけ読み解いてみましたが、以上のように、顧客に直接聞くだけで多くの仮説が得られます。数値を見て顧客の心理を想像するよりも多くの仮説が、ただ聞くだけでわかってしまうことがあるというわけです。
本連載は次回の第2回より、より具体的に顧客の「変化」を読み解き、新型コロナによる行動変化の背景にある、今後の生活者の習慣として根付くと考えられる変化を読み解いていきます。
調査概要
- 【調査対象】男女 20歳~69歳(日本)
- 【調査方法】Webアンケート調査
- 【調査期間】2020年4月
- 【有効回答数】3,023名
※調査データの詳細はコレクシアのサイトよりダウンロード可能
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