【2020年下半期】SNS炎上最新企業事例まとめ 拡大の流れと対策
SNSマーケティングで効果を上げている企業でも、ちょっとしたトラブルがきっかけで、成果を台無しにすることがあります。本連載は、企業のSNS担当者なら絶対押さえておきたい「守りのSNSマーケティング」=「SNSリスクマネジメント」をテーマに、炎上・誹謗中傷などSNSに潜むリスクやトラブルについて、基礎知識から予防&対応策までをわかりやすく解説します。
前回は、SNSに潜むリスクのなかでも「企業が特に注意すべきトラブル」の1つとして「誹謗中傷」を取り上げました。今回は「炎上」について解説します。
「炎上」の発生件数は右肩上がり
企業のSNS担当者がもっとも恐れるトラブルは「炎上」ではないでしょうか。2019年版情報通信白書では、「炎上」を以下のように定義しています。
「炎上」とは、「ウェブ上の特定の対象に対して批判が殺到し、収まりがつかなさそうな状態」「特定の話題に関する議論の盛り上がり方が尋常ではなく、多くのブログや掲示板などでバッシングが行われる」状態である。出典
総務省「令和元年版 情報通信白書」 第1章第4節 8ページ(PDFファイル)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/pdf/n1400000.pdf
日本国内での炎上発生件数は2011年から増え続けており、総務省の調査結果によれば1,000件を超える年もあるようです。
この数字からもわかるように、現代は「炎上しやすい時代」とも言えます。正当な批判に限らず、誤解・嫉妬・極端な正義感・言いがかりなど、さまざまなきっかけで炎上は起きており、事前に100%防ぐのは難しいのが実情です。
だからと言って炎上を怖がる必要はありません。前回の繰り返しになりますが、大切なのは、「SNSを利用しない」ことではなく、「トラブルの予防策と、発生時の対応体制やフローを整えた上で、SNSを正しく活用する」ことです。
現在自社でSNSアカウントを運用している/いないに関係なく、炎上のメカニズムを知り、「予防策」「早期発見&早期消火策」「炎上発生時の対応体制&フロー整備」を備えていきましょう。ここからは、炎上の最新事例や「発生~拡大のプロセス」を解説します。
炎上の怖さを知る――個人・企業にはこんなダメージが
炎上による被害は、個人も企業も受ける可能性があります。炎上に巻き込まれると、個人・企業にはどんな影響が及ぶのでしょうか。それぞれ考えられる影響の例を列挙してみます。
【例】個人への影響
個人が炎上に巻き込まれると、本人だけでなく周囲の人間関係やあらゆるライフステージにまで悪影響が及ぶ危険性があります。
- 個人情報(本名、顔写真、住所、勤務先など)の流出と晒し
- いたずら電話などの嫌がらせ
- ネットストーカー
- 友人・家族・所属企業/団体への嫌がらせ
- 離婚・一家離散・婚約破棄
- (企業からの)損害賠償請求・解雇・内定取り消し
- (学校からの)停学/退学処分
【例】企業への影響
企業が炎上に巻き込まれると、さまざまなダメージが及ぶ可能性があります。企業活動そのものが炎上原因である場合だけでなく、従業員の言動が原因の場合でも同様です。
- 不買運動・取引停止
- 売上/株価の下落
- 企業としての信用失墜・ブランドイメージ低下
- クレーム対応/商品回収/返金対応/訴訟対応などによるコスト増
- 求人応募者の減少・内定辞退者の増加
- 従業員のモチベーション低下・退職者の増加
- 倒産
最新の炎上事例(2020年6月~9月)を振り返る
「炎上」は、最近も数多く発生しています。2020年はコロナ禍による激動の1年でしたが、それとは無関係に、日々さまざまなケースが発生していました。2020年6月~9月に発生した炎上事例の、ほんの一部をご紹介しましょう。
- 紳士服販売店が「透けハラ」をテーマにキャンペーンを実施し炎上(2020年6月)
- 専門商社が性別を理由に就職説明会の申込を一方的にキャンセルして炎上(2020年7月)
- 大学の専任講師がSNSで暴言を投稿して炎上(2020年8月)
- 生活情報サイトが科学的根拠に乏しい記事を配信して炎上(2020年9月)
(1)紳士服販売店が「透けハラ」をテーマにキャンペーンを実施し炎上(2020年6月)
ある紳士服販売店が「透けハラ」問題を解決できる商品を扱ったキャンペーンを実施したところ、「『透けハラ』をあおってしまっているような表現」とユーザーに捉えられて炎上。
→ 投稿を削除し謝罪。キャンペーンは終了。
(2)専門商社が性別を理由に就職説明会の申込を一方的にキャンセルして炎上(2020年7月)
ある専門商社の総合職向け就職説明会に申し込んだ女性が、性別を理由に一方的にキャンセルされた体験談をTwitterに投稿。「時代錯誤だ」「男女雇用機会均等法に違反するのでは」などの批判が商社に向けられ炎上。
→ ネットニュースやTwitterなどでも話題になるも、企業側は特に何も対応しないまま、うやむやになった。
(3)大学の専任講師がSNSで暴言を投稿して炎上(2020年8月)
ある大学の専任講師も務める政治学者が、前首相の辞任会見を聞いて「泣いちゃった。切なくて」とラジオで発言した女性歌手に対してFacebook上で暴言を投稿して炎上。
→ 本人は投稿を削除して謝罪。大学からも厳重注意を受ける。
(4)生活情報サイトが科学的根拠に乏しい記事を配信して炎上(2020年9月)
ある生活情報サイトが「子どものためのごく一般的な料理を、体に害があるかのように極端に表現した記事を配信」したことから、科学的根拠などに対してSNS上で疑問・批判が集中。
→ 編集部にて内容を確認・検討し、当該記事を削除するとともにお詫びをWebに掲載。
「SNSで炎上しやすいテーマ・トピック」は、その時代の世相やトレンドの影響を受けやすいものです。定期的に最新の炎上事例をインプットすることで、「昨今炎上しそうなテーマ」を察知できるアンテナの精度を高めましょう。
炎上の発生から拡大までのプロセスを知ろう
一見すると「同じ炎上などありえない」と思うほど、多種多様な炎上が日々ニュースを騒がせています。しかし実際には、どんな炎上も発生から拡大まではほぼ同じような流れをたどります。炎上をやみくもに恐れるのではなく、その「発生~拡大プロセス」を知ることで、万が一の際にも落ち着いて対応できるように備えましょう。
- ステップ1炎上のきっかけとなる事象が発生する
- ステップ2Twitter/Instagram/Facebook/匿名掲示板などに、当事者・関係者・目撃者が投稿する
- ステップ3ステップ2で投稿された内容を、別の一部ユーザーが話題にし、拡散する
- ステップ4ステップ2で投稿された内容を、インフルエンサーが話題にし、さらに多くのユーザーに拡散する
- ステップ5ステップ1の事象の説明、ステップ2~4での話題化・拡散の経緯が、「まとめサイト」「ネットニュース」に掲載される
- ステップ6「まとめサイト」「ネットニュース」の記事を閲覧したユーザーが、さらに話題にし拡散する
- ステップ7マスメディアに取り上げられ、世間一般にも認知される
ステップ1炎上のきっかけとなる事象が発生する
どんな炎上も、まずは原因となる事象、つまり「火種」の発生がスタートラインです。企業や従業員が巻き込まれうる炎上の原因は、下図の5パターンに分けることができます(詳しくは次回以降で解説します)。
ちなみに、「火種」は最近のこととは限りません。数年前や数十年前のSNS投稿や不祥事などが、ある日突然炎上してしまうケースも存在するのです。これは、インターネット上に一度アップロードされたテキスト・画像・動画を半永久的に消すことができないためです。アップロード・SNS投稿などした本人が、そのテキスト・画像・動画を消しても、世界中の誰かにコピーを保存されている可能性があることを忘れてはなりません。
ステップ2Twitter/Instagram/Facebook/匿名掲示板などに、当事者・関係者・目撃者が投稿する
ステップ1の事象を、「本人」や「第三者」がSNS(Twitter、Instagram、Facebookなど)や匿名掲示板に投稿したり、拡散したりします。
投稿者本人は「友人限定」でSNS投稿したつもりでも、その友人がその投稿のコピー(スクリーンショット)を「全体公開」で投稿してしまい、結果的に炎上するケースも多々あります。
ステップ3ステップ2で投稿された内容を、別の一部ユーザーが話題にし、拡散する
ステップ2の投稿を、他のユーザーが見つけてコメントや返信をしたり、シェア・リツイートしたりすると、そのユーザーのフォロワーに伝わります。そしてまたフォロワーの誰かがコメントしたりリツイートしたり……を繰り返すことで、ステップ2の投稿は、ますます多くのユーザーの目に入ることとなります。
ステップ4ステップ2で投稿された内容を、インフルエンサーが話題にし、さらに多くのユーザーに拡散する
ステップ2の投稿を目にしたインフルエンサー(多くのフォロワーを持ち、彼ら彼女らの思考・行動に影響力を持つユーザー)が、当該投稿にコメントしたりリツイートしたりすると、インフルエンサーとつながっている数万~数十万のフォロワーにも伝わり、ますます話題化・拡散が加速していきます。
ステップ5ステップ1の事象の説明、ステップ2~4での話題化・拡散の経緯が、「まとめサイト」「ネットニュース」に掲載される
SNS上で拡散が進むと、「まとめサイト」や「ネットニュース」のライターや記者らに発見され、「炎上の経緯」「批判コメント」などをまとめて掲載されてしまう場合があります。多くの読者を抱えているこれらのサイトに掲載されてしまうと、一層多くのユーザーに「炎上案件」として認識されることとなります。
ステップ6「まとめサイト」「ネットニュース」の記事を閲覧したユーザーが、さらに話題にし拡散する
「まとめサイト」「ネットニュース」における炎上解説記事を読んで興味をもったユーザーが、実際に炎上原因となった投稿やコメントを見に行き、自分自身も批判コメントを付けたりリツイートしたりする場合があります。ふだんはさほどSNSを利用していないユーザーにも、この炎上に対する認知が広がっていきます。
ステップ7マスメディアに取り上げられ、世間一般にも認知される
炎上の最終ステップ、それは、テレビや新聞・雑誌などのマスメディアに採り上げられてしまうことです。バラエティ番組やワイドショー、ニュースや雑誌の特集などで大きく扱われることで、「炎上」は「社会的事件」として日本中に知れ渡ります。もはやSNSやインターネットという枠を超え、あらゆる世代・属性の国民の記憶に残ることとなるのです。
この最終段階に至ると、炎上の拡散を止めることはもはや不可能であり、炎上に巻き込まれた企業や個人は金銭的にも社会的にも甚大な損失を被る可能性が高いでしょう。
ちなみに、炎上を知ったきっかけ(確認経路)を問う調査によれば、約6割が「テレビのバラエティ番組」、約3割が「テレビのニュース番組」と回答しています。もはや「炎上」は、SNSのなかだけの話ではありません。
以上が、基本的な炎上の発生プロセスです。あらゆる炎上はほぼ同じ流れで発生・拡大し、ステップが進むにつれて消火が難しくなります。だからこそ炎上対策は「予防策」に加えて、「早期発見・早期対応」が非常に重要でしょう。
まとめ
今回は、SNSのトラブルである「炎上」について、個人や企業への影響、最新事例、発生から拡大までのプロセスを解説しました。次回からは、SNS担当者が取り組むべき対策や、従業員全員で取り組むべき対策を具体的に解説していきます。
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