Cookie-less時代のオンライン広告で注目される「ゼロパーティデータ」の活用とは?
多くのマーケター、広告代理店が気にかけているのが、これからCookie規制が強化されたときのオンライン広告のあり方だ。「Web担当者Forum ミーティング 2020 秋」では、このテーマに対し、会員データを活用した広告商品である「ドコモ広告」の事例が紹介された。
本セッションは、登壇者のNTTドコモ 棚澤康之氏に、Web担当者Forum 四谷志穂編集長が質問する形で進行した。
Cookie-less時代に何が起こるのか
セッションの冒頭でCookie規制の現状と今後の見通しについておさらいした。世界的には、EUではすでにGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)が施行されており、さらにe-Privacy規則が施行予定、北米ではカリフォルニア州でCCPA(California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法)が施行予定となっている。
日本でも公正取引委員会主導で、プラットフォーマーへの個人データにかかわる規制を強化する動きがあり、プライバシーデータの保護に向かっている。さらに、AppleはSafariブラウザに実装したITP(Intelligent Tracking Prevention:サイトトラッキング抑止機能)により、Cookieをもとにしたトラッキング/ターゲティングをやりにくくしている。
Cookieの規制によって、リターゲティングやコンバージョンタグ分析などができなくなることが想定され、顧客獲得の「量」と「質」が減少します。「顧客獲得が困難な時代」が訪れるでしょう(棚澤氏)
また、AppleではIDFA(Identifier for Advertisers:iPhoneなどiOS端末の広告識別子)を利用した広告配信でも、2021年上旬から広告配信媒体と広告主アプリ両方で、ユーザーからの追跡許可を得るように変更予定で、ここでも広告媒体のトラッキングが難しくなると考えられる。
こうした変化を受けて、広告主は大規模な会員IDを保有する企業との連携が必要になる。棚澤氏は、膨大なゼロパーティデータを持つ企業の一つであるドコモ広告の可能性について紹介した。
ゼロパーティデータは、ユーザーの同意が得られた1stパーティデータ
1stパーティデータは、媒体が持っているユーザーの各種データを指すが、「ゼロパーティデータ」は、データ活用についてユーザーの同意を得られている1stパーティデータのことを指す。
ドコモの場合は、次のような情報を含む会員データを1stパーティデータとして所有しており、ユーザーからデータ活用の同意を得ている。
- 携帯電話契約時の情報
- キャリア決済の購買情報
- 基地局をもとにした位置情報
- アプリの利用情報
なお、ドコモでは2019年よりパーソナルデータを取り扱うための意思決定基準として、6つの行動原則を定めた「パーソナルデータ憲章」を制定し公開している。顧客は、「パーソナルデータダッシュボード」から同意内容の確認、変更がいつでもできるようになっている。
ドコモでは、20年以上前からゼロパーティデータを活用して配信するさまざまな広告プロダクトを提供している。ただし、広告商品が多すぎて、広告主、広告代理店から「わかりにくい」という声があったため、「ドコモ広告」に名称を統一し、広告主の課題やニーズに応じて提案できるようにした。
ドコモ広告の3つの強み:リーチ、ターゲティング、フルファネル
棚澤氏はドコモ広告の特長について以下の3点を挙げ、説明した。
- 日本最大級の圧倒的なリーチを誇るメディア
- 独自データによるセグメント生成と詳細なターゲティング活用
- ブランディングから刈り取り、ファン化までのフルファネル対応
特長①日本最大級の圧倒的なリーチを誇るメディア
ドコモでは、国内携帯電話シェア率45%・契約者数が累計約8,000万人(※一般社団法人電気通信事業者協会調べ:2020年6月末時点)となっていることに加え、モバイルポイント事業の「dポイントクラブ会員数」も7,800万人(※NTTドコモ調べ:2020年9月末時点)にのぼる。
さらに「dmenu」「マイマガジン」などのドコモのメディアのMAU(Monthly Active Users:月間アクティブユーザー数)は約4,600万人(※ニールセン デジタル調べ「ニールセン デジタルコンテンツ視聴率 2020年4月 Monthly Totalレポート」より)となっている。
他の大手メディアと比較しても遜色ない利用者数である事実に、正直、私たちも驚いています(棚澤氏)
特長②独自データによるセグメント生成と詳細なターゲティング活用
約7,800万の会員データを活用して配信できるドコモ広告だが、携帯電話契約時の属性情報、位置情報データ、メディアの利用履歴に加えて、d払い、dポイントなどのドコモ決済サービス利用から生まれる購買履歴を活用できるのも大きな強みで、広告主からも好評だと棚澤氏は述べる。
なお、基地局から収集した位置情報データを活用して、ジオターゲティング広告の配信もできる。
ジオターゲティング広告では、今この瞬間、そのエリアにいる人に、リアルタイムにPUSH通知を送る広告配信ができます。来店訴求やイベント集客と相性がよく、たとえばショッピングモールの周辺にいる人に絞って「今からモール中央の特設ステージでイベントを開催します」といった案内もできます(棚澤氏)
ちなみに、この位置情報データはコロナ禍において、各エリアの人出数を把握するために、各情報機関に提供しているという。
特長③ブランディングから刈り取り、ファン化までのフルファネル対応
ドコモ広告は消費者の認知から刈り取り、ファン化までのフルファネルに対応した各種広告メニューを取り揃えているのも特長だ。また、配信先の99%が自社メディアとなり、契約時にスマートフォンに標準搭載されている次のようなものに配信可能だ。
- dmenu
コンテンツやサービスを探せるドコモのポータルサイト - メッセージS
企業が提供するキャンペーンや新商品のお知らせなど、メッセージS専用受信フォルダへ配信されるメールサービス - マイマガジン
ドコモスマートフォンにプリインストールされているホームアプリ「docomo LIVE UX」の機能の一部で、ホーム画面から起動することができるキュレーションメディア
スマートフォンに標準搭載されているので、ドコモユーザーなら誰でも触れ得る媒体です。「dメニュー」や「マイマガジン」などのディスプレイ広告だけでなく、「メッセージS」があるのも強みです。PUSH広告を持っているのは業界でも珍しいですし、お客様の受信箱に広告が残り続ける、かなり斬新なタイプの広告商品です。ディスプレイ広告を見た人に、「メッセージS」でリターゲティングするという組み合わせも可能です(棚澤氏)
健康食品メーカーと大手携帯電話メーカーでの活用事例
ここで、棚澤氏は健康食品メーカーと大手携帯電話メーカーでの活用事例を紹介した。
事例1健康食品メーカー:媒体とデータの信頼性を評価
サントリーウエルネス株式会社では、健康食品「セサミンEX」などでドコモ広告を活用しているが、主に「メッセージS」を利用している。同社では、成功要因として次の3つを挙げている。
- ①ドコモブランドの信頼感とアドベリフィケーションの重要性
インターネット広告の場合、広告がどこに出稿されているのか、広告主がコントロールしきれない場合があるが、ドコモ広告ではドコモメディアへの掲載となるので、信頼性がある。 - ②携帯電話キャリアの正確な情報が持つ価値
商品特性として、ユーザーの年齢が重要である中、キャリア契約時に身分証に基づく正確な性別や年齢が登録されていることを評価。 - ③メディア利用者が抱くポジティブなイメージ
ドコモ広告では、トライアルに結び付くコストが低く、本商品の購入に至る割合が高い。つまり、ユーザーがトライアルの意向や商品についてポジティブなイメージを持つ確率が高く、結果、獲得効率が非常によいと評価している。
アドフラウドはインターネット広告の課題ですが、大規模なリーチ数と、ブランドセーフティの担保ができているのがドコモ広告の特長です。そちらを評価いただいており、成果も上がっています(棚澤氏)
事例2大手携帯電話メーカー:カスタムセグメントによる広告配信
2つ目に紹介したのは、某大手携帯電話メーカーの活用事例だ。広告主の与件にあわせたユーザー抽出を行い、さらに自社製品を利用していないユーザー、利用期間別のユーザーなど、ドコモのデータを使ってセグメントを作成し広告配信をしている。
さらに、広告配信後のレポートでも、ドコモのデータを使ってセグメントごとの効果を分析し、追加配信を行うなど最適化を行っている。
なお、コンバージョンしたユーザーをもとに、いろいろなドコモデータをかけあわせて、コンバージョンしそうなユーザーを予測するモデルを作成し、配信対象者をセグメント化する営みをドコモではカスタムセグメントと呼んでおり、広告主が気付いていないユーザー層を見出した配信も可能だ。
ドコモ広告では、ダイレクト業種といわれる健康食品、通販コスメ、金融の成果が出やすい、といわれています。購買情報のデータが使えることもあり、最もROASに合わせやすいからです(棚澤氏)
屋外広告×PUSH通知で行動変容を促す
ドコモ広告では、オンライン行動だけでなく、位置情報やOOH(屋外広告)との連携などオフラインデータを活用したユーザーへのアプローチも可能だ。
ドコモでは、全国でOOH事業のデジタル化(DOOHネットワーク)を推進しており、ドコモデータと組み合わせてOOH視聴データの整備や、広告出稿の自動化(配信時間、掲載期間の最適化)に取り組んでいる。
さらに、DOOHの屋外広告でリーチしたユーザーに、ドコモのPUSH広告「メッセージS」を組み合わせることで、ユーザーの行動変容を促すといった広告もすでに配信している。その結果、DOOHネットワークのみ、PUSH広告のみ、2つを組み合わせた場合を比較すると、連動させた場合で、大きく行動変容スコアが上がることがわかった。
ドコモの契約プラン訴求として、DOOHで認知を促進し、PUSH広告で理解を促進し、来店やサイト往訪をコンバージョンとして計測したところ、非接触ユーザーと比較して、1.52倍の来店率を計測することができました。DOOHによる世の中ゴト化とPUSH広告による自分ゴト化の組み合わせは、行動喚起に有効であるといえる事例です(棚澤氏)
来るCookie-less時代に向けて
2020年8月にリリースした「docomo data square」も、ゼロパーティデータ活用の一つだ。これは、テレビCMやWeb広告、DOOH広告の接触から商品の購買行動まで、効果測定をID単位で可能にする取り組みだ。
これにより、オフラインデータとオンラインデータの統合や、“ID”単位でターゲティングが可能な良質なメディアの統合、広告と販売促進の統合が可能となる。
トライアルで実施した来店率をKPIとした施策で、DOOHの来店効果を検証したところ、効果の高さに加え、テレビCMやWeb広告併用時の相乗効果を確認できました。テレビ広告に接触した人が購買したかまで可視化しているソリューションはなかなか無く、ドコモ広告の各特長をひとまとめにした、一大基盤です(棚澤氏)
最後に棚澤氏はCookie-less時代において、今までのようなインターネット広告配信では成果を出しにくくなっているが、ドコモの保有するゼロパーティデータを活用すれば、広告主の課題解決や顧客獲得のための手助けになると述べた。
また、購買データまで捕捉したキャリアデータ、広告主の自社データ、第三者データを統合管理することで、Cookie-less時代に顧客獲得効果を落とさず、今まで以上の成果を出せるような戦略も可能になると語り、講演を終えた。
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