マーケティングコミュニケーションはB2CからB2C2Cへ
マーケティングコミュニケーションはB2CからB2C2Cへ
1人の人間がもつネットワークは、平均して100人程度だといわれる。あなたが出す年賀状の枚数や、携帯電話のメモリ(通常コミュニケーションをとっている人数)から見ても、さほど大きなズレはないはずだ。では、限られた個のネットワークの中(リアルな生活環境およびOne to Oneなど)でのみ可能だったインタラクティブなコミュニケーションが不特定多数の人間を介して行われ始めると、僕たちが生きているこの世界はどう変わるのだろうか。
マーケティングは、消費者・生活者に合わせて変化を遂げていく実践であるため、当然、パラダイムが大きく変わる。これからの時代は、マーケターの頭の中にも同様の変化がガツンと起こるのは当然だろう。その根っことなるポイントは次のとおりだ。
企業が、自社の商品やサービスに合わせてターゲット消費者を探していた
消費者が、自分に合った商品やサービスを探す
数年前までは、商品やサービスを開発・販売する企業が多くの情報をもち、それを比較・検討もしくは購買する生活者は、限られた情報の中で選択・行動するしかなかった。だからこそ「(情報を)もたざるもの/もつもの」という二項対立の中で、まるで川の流れのように“高いところ”から“低いところ”に情報が流れていたし、コミュニケーションもそのようにデザインされてきた。しかし、現在は、多くのクチコミ情報がインターネット上のコミュニティ(@cosmeや価格.com)やブログ、Wikipediaなどで整理されはじめてきた。
当初は「情報が氾濫している」とされてきたが、それらは「消費者自らの手で整理」されているわけで、「自分たちのコトバ」として、受け入れられやすい情報として取り込まれるようになってきている。そして、誰でも容易にその商品やサービスの情報を得ることができる。結果、企業よりも生活者のほうが多くの情報を保有するという“逆転現象”が生じるのだ。
これまでのマーケティングコミュニケーションは、B2Cで設計されてきた(つまり“高いところ”から“低いところ”へ流れる形)。同様に、One to OneマーケティングやCRMなども、この概念に沿って進められた施策だ(One to Oneマーケティングは、マスマーケティングを細切れにしたに過ぎない)。しかし、生活者の情報取得行動やライフスタイルは大きく変わり、メディア接触時間および接触態度も大きく変化した。
1人の生活者が1日の中で接触する広告メッセージは、500だとも10,000だともいわれるが、これはあくまでも「広告」だけの話。その他の情報を含めたらトンでもない数の情報を受け取っているわけだ。そんな中で、企業からの一方的なメッセージは届きにくいし、そもそも受け取りたくない。なので、企業が生活者に何かを伝えたい場合に大切なのは、企業から一方向的にメッセージを発信するのではなく、そのメッセージが「いかに生活者間でクチコマれるのか」までを含めたB2C2Cの設計をどう作り上げるかなのだ。
購買行動プロセスの変化は“AIDMA”から“AISAS”だけか?
ある商品やサービスの存在を知ってから購買に至るまでの購買プロセスは、大きく変わりつつある。これは、一消費者としてあなた自身の購買プロセスを考えてみると、すぐにわかるはずだ。
今まで、この購買プロセスは、AIDMA(注意→興味→欲求→記憶→行動)だといわれてきた。しかし、インターネットおよびブロードバンドの普及、検索エンジン技術の高度化などによって、購買プロセスはAISAS(注意→興味→検索→行動→共有)に変化したといわれている(図2)。
たとえば、ある商品に興味をもったら、Googleなどに気になるキーワードを入力して検索し、検索結果から該当するサイトを見てみて、その情報がよかったら他の人にも勧める(共有する)ということだ。確かに、そのとおりだ。しかしながら、これはあくまでも一消費者の行動を、先にあげた「消費者=使い尽くす人」というモデルから少し拡張しただけに過ぎない。マーケターとしての視点からすると、もっと大胆にかつ正確に“その後”の行動も捉えなくてはいけないだろう。そこで提示したいのが図3の「購買行動の12段階モデル」である。
消費者は商品を買って終わりではないわけで、商品・サービスに満足した結果、友人・知人に情報をシェアしようとする。しかもそのあと、この「一度買った人・使った人」に再購入を促し、関係をより強化していくことまで考えていかなければ、マーケティングコミュニケーションのすべてを見渡したとはいえないのだ。ちなみに、この購入後のアクションから「Share(他の人にも勧める)」を抜いてみると、後半部分は従来“CRM”と呼ばれてきたものになる。この12段階モデルには、AIDMA的要素、AISAS的要素に加えて、CRM的要素も含まれているのだ。
さて、この12段階モデルをじっと見ると、消費者が「自ら」情報の構築にかかわってくるのはどれなのかが自ずと見えてくる。「Search」による「情報取得行動」はその“行動”だけでは成立しない。当然、そこに「情報がある」ことが前提となる。「Comparison/Examination」といった消費者自身の「比較検討」も同様だ。
ではこの検索や比較検討の際に参照される情報はどのように形成されたものなのか? ここに他の人の「Share(他の人にも勧める)」が関係してくる。つまり、いい情報であれば消費者はインターネットを通じて「Share」するため、それが情報としてインターネットの世界に刻み込まれていき、「自分たちの目線」の情報として吸収されていくのである。
そしてこの消費者自身が生成する部分が「クチコミマーケティング」や「バイラルマーケティング」において注目されるポイントなのだ。
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