[特集]Web 2.0がクチコミを連れてきた!
決してやってはいけないクチコミマーケの禁じ手
田中 双葉
ネットの普及した今日では、クチコミを誤って使ってしまうと、ネガティブな評判も瞬く間に広がってしまう。考査を経なければ露出・掲載できないマス広告と比べ、事前の第三者チェックがなく、手法も多様なクチコミマーケティングでは、自主的なルール設定が不可欠となってきている。このため、WOMMAの活動主旨の1つに「倫理的ルール作り」があるように、業界全体として倫理的にやってはいけないことを明確化しようとしているのが現状だ。
クチコミでやってはいけないのは、大きく分けると以下の3つだ。
クチコミNG手法その1
意図的にターゲットを騙してまでクチコミを狙うこと
自らを偽ったり、名前を伏せたままターゲットに近づいて結果的に騙すような手口。日本でも「やらせ」とか「サクラ」などといわれるようなものは、オンライン/オフラインを問わず総じてNGだ。
倫理的に考えれば当然だが、数年前の一時期、米国では、企業やブランド名を伏せたままターゲットを騙してクチコミを狙う手法が、「ステルスマーケティング」や「アンダー・ザ・レーダー(レーダーに捕獲されない)」などという名の下に「賢くてクール」なやり方として脚光を浴びていたこともあった。しかし「やらせ」に気付いた一般生活者がネットなどで暴露・批判をし始めて、悪評があっという間に広がって評価が一転した。
以来、これを教訓に「誠実さ」や「透明性」が何より重要との共通認識ができあがっている。あえて始めは正体を明かさないようなケースでも、必ず最後には「ネタばらし」をすることを忘れないこと。
クチコミNG手法その2
未成年者にマーケティングの片棒を担がせる
ティーン(10代)をターゲットにすること自体が問題なわけではないが、彼らをなんらかのエサで釣り、企業のマーケティング活動の一端を担わせるところまでいってしまうと、倫理的な問題が生じてくる。
ネットやケータイを活用すればターゲットの組織化も簡単にできてしまうが、やり方を一歩間違えるとしっぺ返しを食らうことになる。
特に米国で議論になったのが、新商品サンプルや関連情報を組織化したティーンに恒常的に送り届け、自分の友人たちへ何気ない推奨を促すような方法だ。あまりにもダイレクトなやり方は、同世代の反感や、親などからの強い非難を浴びることになってしまうため気をつけたい。
クチコミNG手法その3
パーミッションのないメールやコミュニティへの潜入
メールやオンラインコミュニティなどでは、相手のパーミッション(許可)なしにアプローチすることが禁じ手なのは常識である。
しかし、予算が限られている場合など、効率を重視しすぎてうっかりやってしまうケースもいまだにあるようだ。
個人情報を勝手にどこかから入手してメールを送りつけたり、関係ない話題で盛り上がっている掲示板やコミュニティにいきなり潜入して自社商品などのアピールをするなどの突撃的なアプローチは、ネット利用者の一般的マナー感覚としても自爆行為以外の何者でもない。改めて言うまでもなく、「なぜこの企業が自分のアドレスを知っているのだろう?」といぶかしく思うメールもいまだに多いからこそ、いま一度確認したい点だ。
米国WOMMA(クチコミマーケティング協会)が定める倫理規定
消費者に報酬を渡しながら、企業との関係を明らかにすることなく、商品推奨を依頼する行為をしない。
消費者同士のクチコミにおいて、サクラを起用したり、覆面マーケティングを行わない。
クチコミで何を言うべきかを消費者に指示しない。
クチコミ唱道者の本当のアイデンティティについて、消費者を混乱させたり誤らせたりする開示は行わない。
クチコミマーケティングプログラムに子供は関与させない。
競合企業のネガティブな情報流布を目的とした活動などを行なわない。
既存ビジネス慣習を理解し、既存ビジネスで認められている手法は、その領域では継続して活用する。 (例:BtoC領域でこれまで行われている自動車評論家とのリレーション活動等)
クチコミマーケティングを提案・受注する際には、広告主にこれらのリスクの説明を行う。
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.2』 掲載の記事です。
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