「インターネットショッピング2007調査報告書」ハイライト
年11.6回の利用で合計10万6,174円
「価格」「品揃え」で選んで「信頼」「デザイン」に満足感
「インターネットショッピング2007調査報告書」
ハイライト
総務省の調査によれば、ネット利用人口は2006年末で8754万人となり、インターネットを使ったショッピング(消費者向け電子商取引)、いわゆる「ネットショッピング」の利用者は全体の92%にあたる8055万人となっている。成長スピードは若干緩やかになりつつも、まだまだ堅調にネットショッピングは成長を続けている。子供と高齢者の新規利用も目立ってきた。
本記事では2007年8月に公表された「インターネットショッピング2007調査報告書」(株式会社富士通総研)の一部を紹介しつつ、インターネットショッピングの実態について考察する。
テキスト:編集部 調査:株式会社富士通総研
「インターネットショッピング2007調査報告書」は、2001年9月、2004年2月、2006年3月に続き、今回が4回目の実施となる。
2007年4月13日〜30日に、電子メールでの告知によるウェブアンケートを実施(iMiネットの調査パネルを利用)。対象は10〜69歳で、この1年にネットショッピングを利用した人。2000件の発信に対し、1545件の回答を得た(有効回答率77.3%)。性別の内訳は45.4%、女性54.6%。年齢の内訳は10代7.4%、20代27.9%、30代37.1%、40代18.3%、50代7.1%、60歳以上2.3%。ネットショップ利用の開始時期は、実質5年以上(2000年以前〜2001年)25.4%、実質2〜5年(2002年〜2004年)43.6%、実質2年以内(2005年〜2006年以降)31.0%となり、“ネットショッピング初心者”ともいえる実質2年以内のビギナー層が、過去の調査結果より増加している。
ネットショッピングは利用歴が長ければ利用額も倍増していく
図1は、富士通総研が、経済産業省の「平成18年度電子商取引に関する市場調査」と、それ以前の類似調査から独自に作成したものだが、2006年のネットショッピングの市場規模は4兆2,980億円、成長率は27%となっている。2004年以前と2005年以降で調査方法が変更されているため、厳密な比較はできないが、2005年の市場規模3兆3,710億円から9,270億円の拡大を成し遂げているわけで、まだまだ成長の余地は残っているともいえよう。ただし、その成長率は鈍化傾向にあるのは否めない。
これを消費者側から見てみると、過去1年間のネットショッピングの利用回数は平均11.6回、合計10万6,174円となっており、実際にいずれも微増している(図2)。ただし前々回調査(2004年2月)から前回調査(2006年3月)の増加は1.8回・7,604円だったのに対し、前回調査から今回調査の増加は0.2回・2,964円と、かなりの縮小を見せている。ただ、ネット利用歴で見てみると、実質5年以上の15.2回・15万9,436円と実質2年以内の8.3回・7万2,482円とで、ほぼ倍の開きがある(図3)。やみくもに品数を増やし出費を促すのでなく、「ビギナー2人を取り込むか、上級者1人を惹き付けるか」といった判断、さらには既存顧客を取り込んで長期顧客化させる努力や工夫が、今後のeコマースサイト構築には求められるだろう。
ちなみにネットオークションの閲覧については、PC利用者77.3%、携帯電話利用者20.5%がこの1年以内に利用したと回答しており、オークションもネットショッピングと同列の選択肢として利用されている。消費者は複数サービスを比較し出費を抑えようとしているわけだ。
最大の魅力は24時間営業
20代の利用回数、50歳以上の消費額が今後のカギを握る
同様の傾向があるか、性別・年齢層なども見てみよう。ネットショッピングの利用回数については30代以上の女性が、利用金額については30代〜40代男性が突出して見える(図4、図5)。「少額商品を堅実に」が女性、「ネットでも不安なく大人買い」が男性、といってもいいのかもしれない。ただし、既婚家族の場合、世帯主でもある壮年男性の名義で買い物を行っているケース、高額商品のため世帯主しか売買できないといったケースも想定できるので、その点は考慮しておくべきだ。
それでも、男女を通して30〜40代の層が、もっともネットショッピングを利用しており、代表的な利用者層だといっても良いだろう。これ以外の目立つ個所として、20代の利用回数、50歳以上の消費額をいかに増やすかが、今後のネットショップのキーだろう。また理由を推察しにくいが、50歳以上女性の利用回数が最も多い点も要注目だろう。
では、利用者はネットショッピングの何に魅力やメリットを感じているのだろうか(図6)。メリット意識については「24時間注文できるので便利」「配達してくれるので便利」「ネットと実店舗を比較し選んで購入」が上位に来た。またほぼすべての項目で、ネットショッピング歴が長いほど、メリットを感じている度合いが強くなった。表は割愛するが、逆にデメリットについては「送料がかかるのが気になる」「ネットショッピングはセキュリティ(クレジットカード番号や個人情報)が心配だ」「商品の写真や説明がわかりにくい」「どのショップが信用できるかが不明」が上位となっている。このなかでは「商品の写真や説明がわかりにくい」というデメリット、「ネットと実店舗を比較し選んで購入」というメリットが、ちょうどコインの裏表の関係であり、ウェブ担当者によるテコ入れが望まれるポイントだといえる。ウェブエクスペリエンスでできることできないことの見極めが、顧客の購買意欲を左右するといっても良い。
実際こういった面で、モールタイプのショップだと他店との差別化を打ち出しにくいため、サイトデザインに左右されないような商品については、結局Amazonやニッセン、DHC、JALなど、大手ショップや独自サイトに集中する傾向が生まれてしまうと考えられるかもしれない。
ショップ選びは「価格」「品揃え」
満足感は「信頼」「デザイン」
ユーザーは何を理由にネットショップを選び、優良顧客となるのだろうか。ネットショッピング全体ではなく、個別のネットショップ同士に焦点を当てて、店舗の形態ごとに見てみると、「価格」「品揃え・在庫」「ポイント特典」「限定商品」といった理由が上位に来ているのがわかる(図7)。多数店舗がひしめくモールほど価格競争が厳しく、ネット単独店・店舗系ではいつでも注文できるよう在庫があることが重視されているのがわかる。これは売買の大原則みたいなもので、ネットショップも例外ではない。
一方で、どういった理由で選んだショップだと、満足度が高くなるのかを集計すると「信頼できる/できそう」「商品説明やおすすめが的確」「商品画像がきれいだった」(満足度)、「以前利用時の対応が良かった」「サイトのデザインや使い勝手が良い」「信頼できる/できそう」(ロイヤルティ)が上位項目となっている(図8)。つまり、選ぶ理由は「価格」「品揃え・在庫」だが、満足を感じるのは「信頼」「デザイン」といった、商品そのものとは関係のない部分で、顧客が左右されているのだ。これらは抽象的な印象要素も含んでいるが、つねにサイトとしても、“商店”としてもチューンしていく必要がある部分だともいえる。顧客のロイヤルティ・ポイントを向上させるには、「質の高いサービスを提供していることを印象づける」のが大切なのだ。そういう意味で、発送遅れや在庫切れは、通常店舗以上に“致命傷”となりかねないだろう。
ネットショップを選んだ理由(回答者数) | 順位 | 満足度 | ネットショップを選んだ理由(回答者数) | 順位 | ロイヤルティ |
---|---|---|---|---|---|
全体(1,545) | - | +5.9 | 全体(1,545) | - | +3.6 |
【上位項目】 | 【上位項目】 | ||||
信頼できる/信頼できそう(373) | 1 | +6.9 | 以前利用時の対応が良かった(153) | 1 | +5.7 |
商品説明やおすすめが的確(96) | 2 | +6.8 | サイトのデザインや使い勝手が良い(79) | 2 | +5.6 |
商品画像がきれいだった(87) | 3 | +6.7 | 信頼できる/信頼できそう(373) | 3 | +5.6 |
サイトのデザインや使い勝手が良い(79) | 4 | +6.6 | メルマガやメールDMが良かった(34) | 4 | +5.1 |
送料や配送条件が良かった(410) | 5 | +6.6 | いつもそこで購入しているから(296) | 5 | +5.0 |
メルマガやメールDMが良かった(34) | 6 | +6.6 | 商品が探しやすかった(240) | 6 | +5.0 |
商品画像がきれいだった(87) | 7 | +5.0 | |||
【参考項目】 | 【参考項目】 | ||||
品揃えが良い、在庫があった(507) | 14 | +6.2 | 品揃えが良い、在庫があった(507) | 12 | +4.5 |
ポイントなどの特典がある(446) | 15 | +6.1 | ポイントなどの特典がある(446) | 15 | +4.1 |
他より商品の価格が安かった(650) | 16 | +6.1 | 他より商品の価格が安かった(650) | 16 | +4.0 |
ショップタイプ別にロイヤルティ・ポイントを見てみると、ネット単独店が高評価を得ているのがわかる(図9)。ネット単独店が選ばれる理由は「品揃え・在庫」「価格」「会員登録済み」「信頼できる」「送料・配送条件」となっており、どの項目も平均的に高いポイントを獲得していることが見て取れる。やはりネット単独店ほど、さまざまなノウハウを蓄積するとともに、デザインやインターフェイスなどの部分に独自チューンを施すことで、顧客ロイヤルティを引き上げていると結論づけて良いだろう。
ユーザーにショップをアピールしリーチするにはまずSEO
DMやメルマガはフォロー手段に
ロイヤルティが上昇すれば、顧客はリピーターとなってくれるはずだ。新規/リピートの内訳を見てみると、新規ショップ利用が約4割、リピートは約6割といった比率になっている(図10)。やはりネットショッピング歴が長い人、年間ネットショッピング回数が多い人ほど、リピートしている。逆に初心者ほどリピート率は低い。彼らに2度3度と買い物をしてもらえるよう、初回から好印象を与えたいところだ。
ではそもそも、どういった流れで新規顧客はショップにたどり着いたのかについては、「検索エンジンで検索」(27%)、「モールで検索」(21%)が大きく、「メルマガやDM」「ネット以外」などは10%を切っている(図11)。ショップ種類ごとに見てみると、特徴的なのは通販系で「ネット以外で知った」(47.2%)が目立つ。これはやはり、カタログやTV CMからの流入だろう。そのほかはどのショップ形態でも、「検索エンジンで検索」が3〜4割前後となっており、SEO/SEMの大切さが浮かび上がってくる。メルマガやDMなどの効果は薄れつつあるがリピーター確保には有効なので、使い分けが望まれる。
最後にケータイショップについても見ておこう。PCショッピング利用者のうち、ケータイショッピングも利用という人は17.5%ほどだ。合計金額も年間平均5万2,641円とやや低い(図12)。理由についてはほぼ予想どおりで、「パソコンのネットショッピングで十分」「画面が小さく商品画像等が見にくい」「パケット代がかかるから」といった項目が上位に来ており、これは「利用する気がない」ユーザーほど高い。独自のケータイショップサイトに注力するより、パソコンの補助手段、リピーター確保の手段と割り切って活用したほうが、最終的な売り上げに結び付きやすいだろう。
「ネットショッピングというと、Amazonのような大手ネット単独店が目立つが、知名度を持たない小規模な商店が、“オンリーワン”な商品の魅力のみで客を惹き付けるケースも多く、日本のネットショッピング市場はモール抜きには語れない。これは、ブログで話題になった商品や検索で見付けた商品など、少し珍しいアイテムをふと思い立って購入するといったシーンで利用されることが多いためだ。とくに経験の浅い利用者の受け皿として、長大な“ロングテール”を形成しているともいえる。
国内のネットショッピング市場の成長はすでに減速傾向にあり、急拡大は望めないだけにますます競争は激しくなっていく。そのときに、商品力・価格といった商店としての要素だけでなく、サイトのインターフェイスやデザイン、ユーザーのページ遷移の把握など、ウェブサイトとしての完成度が、今後より重視されるだろう。
発行日:2007年8月
頒価:税別28,000円(税込29,400円)
サイズ・判型:A4正寸
ページ数:308
発刊・発行・調査:株式会社富士通総研流通コンサルティング事業部
http://jp.fujitsu.com/group/fri/report/cyber/
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