企業ホームページ運営の心得

数字を弄べ。平均・基準・割合……数字の魔法でコンテンツをランクアップ

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の伍十七

1937ブックマークのコラム

Web担当者フォーラムの記事には「はてなブックマーク」と「livedoor クリップ」の登録ボタンが付いていて、簡単にブックマークに登録できます。どちらも気になった記事をチェックしておくのに使われ、アクセス数や被リンク率と同様に注目度を計る指標となっております。

この「心得」のはてなブックマークが1937、livedoor クリップが291を記録しました(記事執筆時点)。Web担2007年人気記事ランキングの結果、最もアクセス数を集めた記事「検索エンジンが順位を決める53の要因」が925と114ですから前者がダブルスコアで、後者がトリプルスコアと……比較するのはイカサマです。「心得」は第1号から第50号までの約1年間の合計だからです。

しかし「昨年の実績」としては真実の数字です。実績として喧伝……もといコンテンツとするなら合計の方がインパクトがあります。今回はコンテンツ作りに役立つ「数字の弄び方」。

7000万円まで小遣いの格差

数というのは非常にあやふやなものです。「100」という数は多いでしょうか少ないでしょうか。「1」と比較すれば多いですし、「1テラ」とならば鼻息で飛ぶ程度の数となります。数字は絶対ではなく、基準や集計方法で白にも黒にもなります。

最近さわがしい「格差社会」ですが、働いても生活保護世帯の収入を下回るというワーキングプアが加速させていると報道されます。国税庁の民間給与実態統計調査(平成18年)によると、日本人の会社員(給与所得者)の平均年収は435万円(対前年月比0.4%減)。さらに、働けど暮らしが楽にならないワーキングプアが年収200万円以下となると確かに格差は2倍以上です。

アジアのご近所の国をみてみます。五輪の建設ラッシュを支える農村部からの出稼ぎ労働者の平均月収が1000元(1元15円)と産経新聞にありました。日曜日もなく深夜まで働いてです。一方で、日本観光を楽しむ香港の富裕層がテレビの取材にこう答えます。「滞在中に7000万円まで小遣いで使える」。

家族を養う月収と小遣いですから比較できませんが。

伸縮自在の針小棒大

格差議論も基準次第です。ちなみに「一億総中流」といわれた昭和を格差のない良い時代だったというニュアンスで使う人がいますが、当時は「アメリカンドリーム」のような立身出世も叶わない、ウサギ小屋程度のマイホームしか手に入れらないことを慰める意味合いの方が強かったと記憶しています。

「平均」も怪しいものです。日本が世界に誇る平均寿命をもの凄く単純に説明すると、100才の天寿をまっとうする老人が10人いても、出産直後の0才で亡くなる乳児が90人いれば平均寿命は10才となります。実際には、20代や30代が元気に生きていてもです。先ほど紹介した平均年収も、年収1億円が10人で100万円が90人なら平均年収は1090万円に跳ね上がります。

実態を即していなくても数字として事実となり、これが数の弄び方です。「数字」ほど便利な商売道具はありません。ナノよりも小さく、テラよりも巨大に華麗に変身します。

基準すらも勝手に決められる

数字はコンテンツの説得力を増します。「数字」は揺るがないという勘違いが背中を押します。

「月に4000円しか払えない」と電話口で伝えると即座に3780円の保険料を提示する某保険会社のCMがあります。さもリクエストにお応えしますといった演出ですが、唐突に切り出される4000円の根拠はなんでしょうか。

さらに安い3000円の保険商品があるとすれば、こちらを勧めたほうが、安さのアピールにおいては適任です。しかし、少しでも高額商品を売った方が儲かります。そこで「3780円」を割安と感じさせるための「基準」として4000円を登場させたのではないでしょうか。

広告を非難するつもりはなく「基準」を勝手に決められるのも数の魅力ということです。

30万円値引きか3割引きか

数を弄ぶコツは求められているものを見極めることです。大きく見えることが求められているなら単位を変えて1kgを1000gと桁数を増やすことでボリューム感をだし、反対ならば「象に比べれば痩せている」といった例えを用意してあげ、比較基準を巨大にすることで演出できます。これらはごくホンの初級レベルです。

実戦レベルでは「割合」と「実数」の使い分けも組み合わせます。

全品30%割引きのセールをしたとします。日用品などの単価の低い商材ならば「割合」表示でもよいのですが、たとえば家具屋で100万円の高級桐箪笥があるならば「実数」に変換して

「最大30万円値引きします!」

とするとインパクトがでます。割合と実数どちらにするのか、この使い分けが商売人の腕の見せ所です。

4より3でボリュームを上げる

最後に応用編。

昨年のアクセスランキングでこの「心得」はベスト20に4本入りました。3、6、7、17位にランクインです。そこで、見出しにするならこうなります。

「年間アクセスランキング、ベスト10に3本ランクイン」

単純に数からみればベスト20で4本の方が多いのですが、占有率は25%です。ベスト10に絞ることでランキング占有率は33.3%となりボリュームアップです。どうしても4本ランクインという実績を主張したいのであれば3位となった「グーグル? ヤフーで問題ないしという国民気質」を織り込んで

「ベストスリーを筆頭に4エントリーがランクイン」

と分母をあえて記さないとよいでしょう。

冒頭の「心得」のブックマークの平均は38.74件です。インパクトなら足しっぱなしの「1937」を採用ですが、こういった表現もアリです。

「毎日5人がブックマークするコラム」

割合に総計、平均と基準……数字は本当に便利です。

ちなみにもっとも都合の良い数字を手前味噌としてあげるのなら、通販支援ブログでの連載が「2007年下半期1位から5位まで独占」のほうを喧伝します。

♪今回のポイント

針小棒大は定義次第で真実となる。

数字の使い方でコンテンツはランクアップする。

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