企業ホームページ運営の心得

セットとパックとプレミアム。コラボで上げる売上の秘密

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の七十八

一生楽しむなら方法を覚える

人生を楽しむ方法として1時間なら飲酒を、3日間なら結婚を薦める中国のことわざがあります。続いて1週間なら豚を潰しなさい(牛を飼うとも)とは食べること、そして「一生幸せになりたいなら、釣りをしなさい」といいます。夕方から翌朝まで飲むこともあり、結婚生活も11年を重ね、豚を1週間かけて食べ尽くすのも飽きてしまう私ですが、しかし「釣りをしなさい」には大賛成です。「釣りは奥が深く一生楽しめる」という理由ではなく、食いっぱぐれない方法を学ぶという解釈です。

答えとやり方。困っている人は答えを求め、ずっと役立つのはやり方です。そこで両方を提示します。前号の「価格の付け方」はオリジナル商品やサービスに絞りましたが、今回は仕入れて売る「流通系」の商売でも使える答えとやり方です。

セット・パック・プレミアム

いきなり答えを書くのは「ブログ」などのネット系で読ませる技術の基本として紹介したことがありますが、最近の新書やビジネス書でも「第1章」に表題が語られていることが多くなりました。本好きとしては最終章での大団円を期待するので残念です。本コラムはネット系。答えを先に書きます。

セット、パックはどんな商売でも使えるユーティリティプレイヤーです。さしずめプレミアムはファンタジスタといったところでしょう。3本セット、スターターパック、サマープレミアム。それぞれの違いは名称だけです。これらは店舗の都合により異なり、「3個セットパック」という石けんが販売されているのを見たことがあります。そして、行き詰まると「プレミアム」と目先を変えます。

仕組みを知ることはやり方を知ること

セットでもパックでもプレミアムでも、複数個や幾つかの商品を一緒に販売することとまとめても良いでしょう。そのメリットは割安やお得感の演出だけではないことを知っておくことが「やり方」に通じます。

商品には店舗賃料の何百分の1かが経費として掛かっています。よく売れる商品というのは、売上が良いだけでなく「商品当たりの賃料」、すなわち経費が少ないといえます。「倉庫」も同じで、一般的に「回転率」と評価し、複数の商品が同時にはける(売れる)ことは回転率の上昇を意味します。

1つの取引にかかる人件費は単品販売とセット販売ではさほど変わりません。つまり同じコストなら多く売るセット販売はコストダウンにつながるのです。さらに、取引額の増加で「他店に流れる金」を抑制することもできます。

単品ごとの値引きとの違い、賃料や回転率に差が出ることを覚えておいてください。

限定がうける理由

プレミアムとツートップを組むのが「限定」です。セットとパック同様、混同することもあり、もちろん「限定プレミアム」も間違いではありません。

街角で観察していると、若干「限定」のほうが得点力は高いようです。なくなるかもという焦燥感と、特別が簡単に手にはいることが背中を押します。早い者勝ちのイメージが重なるのも理由でしょう。

また、「自分は特別」という思いもプレミアムや限定にセンタリングをあげます。特別な存在になるための努力も才能も必要なく、手にした瞬間に他人との差別化が成功します。そして、限定商品に出会えた自分という「ストーリー」に購買意欲が刺激されるのです。

とても日本人的です。スーパーでの買い物にもストーリーという「エンタメ感」を求める日本人は世界で一番難しい消費者と呼ばれています。

ストーリーからパックを作る

セットやパックの成功の極意は「組み合わせ」です。何本セットにするのか、どれとどれでパッケージにするのか? ここで「ストーリー」を意識すると「●●パック」のレベルが上がります。

石けん3個入りセットを売るとしたらどうするでしょうか? 割引はいつでもできるので、私ならこんなストーリーを考えます。

「パパママ僕の自分用石けんセット」

説明文はこうです。

「自分で体を洗う練習を始めたら『自分用石けんセット』。パパ用、ママ用、幼児用の3種類をセットにしました。いちばん体をきれいに洗えるのは誰かな? 楽しみながら体を洗う習慣が身につく石けんセットです」

ママ用にはスキンケア、幼児用に薬用や低刺激、パパは……余り物でも結構ですが、組み合わせます。3個セットを売るということは、購買間隔が長くなることも意味します。そこで、家族で楽しんで石けんを早く使って貰おうという狙いを込めてのストーリーです。そして、客が食い付けば「サマーバージョン」「オータムプレミア」「クリスマスエディション」と発展させることもできます。

ストーリーを教えてくれる場所

現場百遍は捜査の鉄則。困ったら現場に、実戦の学舎です。セット、パック、プレミアム。そして最近では「コラボ」も仲間入りしました。私の学舎の1つがスーパーマーケットです。先着○名様、限定○パックに鮮魚コーナーに薬味ネギやシソが陳列され、青果コーナーでは「野菜炒めパック」が並びます。店頭に並ぶ野菜は店舗のバックヤードで詰められているので、組み合わせはアイデア次第です。すべてキッチンや、食べるシーンを想定して「ストーリー」が組み立てられます。小売りの現場ではさまざまなアイデアが形となり陳列されています。

油断できないのが「雑誌コーナー」です。ニコラ、ピチレモン、CAWAII!。女子中高生向けファッション誌には男子の想像を絶する付録が。ニコラにはビーチサンダルが、ピチレモンにブレスレット、CAWAII!には……生理用品がついてきます。拡大解釈でいえば「付録パック」です。タイアップ……もとい、コラボとはいえ雑誌本体の価格から考えれば破格です。一方の男性向け雑誌は「DVD」や「クリアファイル」がせいぜい。柔軟な発想が年老いていく脳を刺激します。

単なる値引きではなく、世界一難しい消費者が望んだ「答え」がセットやパックです。

♪今回のポイント

買い物にエンタメを求める日本人。

単品値引きとセット販売の根本的な違いを知る。

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