ステルスマーケティング手法を禁止する新しい英国の消費者保護法(前編)
願わくは、この投稿がSEOmoz読者各位の御意にかないますように。
ヨーロッパでは、ステルスマーケティングの手法を一部禁止する新法について同業者らが大騒ぎしていて、Distilled、IPA、BBC NEWS、bigmouthmedia、Times Online、mad.co.ukといったサイトは、新法の影響についてさまざまな推測を巡らしているの。有料リンク、でっち上げのレビューやブログ、コメント機能を利用したシーディング(仕込み)など、よく使われているけど議論の的となることが多いマーケティングテクニックの裏ワザは使えなくなるという予測しているところが多いみたいね。
この法律で、実際には何が禁止されるの? ステルスマーケティングの終焉ってこと? 英国で仕事をする可能性のある英国外のステルスマーケティング業者にとって、どんな影響があるのかしら?
まず、経緯を簡単に整理しておくわね。2005年5月に「不公正商行為についてのEU指令」(UCPD)が採択された。EU加盟各国は、指令の内容に沿った国内法がない場合、迅速に立法手続きを取ることが求められるの。英国では、UCPDを受けて「不公正取引から消費者を保護するための法律(PDF)」(CPUTR)を制定し、他の加盟国と足並みを揃えたというわけ。EU加盟国に本拠を置く事業者が別の加盟国で製品のマーケティングや販売を行う際、なじみの薄い現地の規制が障壁とならないようにするため。CPUTRは2008年5月26日に施行された。
新法で実際に禁止される行為とは?
法律の大部分は、従来の消費者保護法を焼き直したもので、おとり広告商法や詐欺的行為、甚だしく強引な販売手法など、消費者に対する昔ながらの不正行為を禁じている。CPUTRでは不正行為について、31項目にわたって具体的に言及しているけれど、そのうち、新しい分野に踏み込んだ重要なものは2つしかないの。
議論になっているのは第11項と第22項で、広告において、営利関係が存在することを秘匿する行為が問題になっているの。詳しく見て行きましょう。
第11項では、料金を受け取っていながら、そのことを示さずに編集コンテンツで商品を宣伝することを禁じている。
この記事全体にわたって、原文にある"trader"(売買業者、トレーダー)という言葉を「事業者」という言葉に書き換えている。
新法では、売買業者という言葉を「自らの事業に関連した目的のために、商行為に関わる活動を行う者、および売買業者の名において、または代理として活動する者」と定義している。これは企業のことだけど、オークションサイトを利用して自宅からインターネットで頻繁に物品を販売している個人も、ここに含まれる可能性がある。
個人が「売買業者」として行動しているかどうかの判定は、その商行為に関わる活動を業務として行っているかどうかによる。ときどき不要なものを処分するのにインターネットで物品販売する個人は、この定義には含まれないと思われる。
(11)事業者※1が宣伝料金を支払っておきながら、コンテンツ内で、または消費者が明確に識別可能な画像や音声によってそのことを明示することなく、メディアの編集コンテンツを使って商品の販売を促進すること(記事体広告)。
続いて、英国の規制当局が「公式」に示した違反事例を挙げるわね。
雑誌が旅行代理店から料金を受取って豪華な紅海ダイビングスクールを宣伝する特集を掲載する際、「広告記事」「記事体広告」などの明示を怠り、有料の記事であることを明確にしていない。
このように、広告主とメディア企業との営利関係を明記しないことを、新法は直接的に禁止しているの。この法律で、事業者がブロガーやアフィリエイトにお金を払ってレビューを書かせた場合も、営利関係を明示しないと違法になることは、簡単にわかるわよね。
ウェブサイトにリンクを貼るのと引き換えにお金を受け取り、なおかつ金銭的な報酬があることを明示しない場合は違反となるのかどうかは、解釈の余地が残る。有料リンクは「記事体広告」にあたるのかしら?
私が判断を下そうとしている裁判官だとすると、ほかに何も付加的要素がない単なるリンクなら、「編集コンテンツを使って商品の販売を促進すること
」には当たらないと裁定するでしょうね。でも、有料リンク周辺の文脈全体が、商品に対する意見やその推奨記事(つまり「編集コンテンツ」)になっていれば、もちろん、開示なしでは面倒なことになる可能性があるわ。大事を取るのならば、「私の好きな商品や企業」といった見出しのついたリンクリストには、リンクに対する報酬を受け取っているのかどうかを明記しておくべきね。
第22項はもう少し適用範囲が広く、営利目的ではないという誤った印象を与えたり、偽装して消費者であるかのように振る舞うことを禁止している。
(22)事業者が自らの商行為、業務、技芸、専門的職業などに関連した意図を隠し、事実と異なる主張をしたり、誤った印象を与えようとすること。また、消費者であると偽装すること。
たとえば、次のような行為はこの項目に違反するわ。
中古車ディーラーが中古車を付近の道路に展示し、「オーナーは1代。慎重な運転で家庭使用。2,000ポンド前後で売却希望。お問い合わせは01234-56789のジャックまで」という手書きの広告を掲示した場合、業者として売っているのではないという印象を与えるため、この法律に違反する。
つまり、第22項はソックパペット(なりすまし、自作自演)などのイカサマを防止するためのもの。この項を適用すれば、ウォルマートの偽ブログや、失敗に終わったソニーの「AllIwantforxmasisapsp.com」、ブログのコメント欄に自社や自社製品に好意的な意見を匿名で書き込む行為などは、違法になるというのが大多数の見方。
さらに、Amazon.comで著者が自分の本を賞賛するレビューを匿名で投稿することもできなくなる。また同様に、ホテルのオーナーがTripAdvisorのようなサイトでランクを上げるために、でっち上げのレビューを入れるのもダメになるわね。
この記事は前後編に分けてお届けする。今回は、英国の新消費者保護法で新たに禁止される2種類の不正行為について詳しく説明した。次回は、新法の運用や影響についてお伝えする。→「ステルスマーケティング手法を禁止する新しい英国の消費者保護法(後編)」を読む
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