ベンダーよりもCMSに詳しくなる! 4つのステップで進めるCMSの情報収集
(4)実際に使ってみて現実を知る
ここまでで、理論と実践(事例)、現実(多様性)をある程度理解できたハズだ。これでもう表面的なデザインや本質的ではないファンシーな機能に惑わされることはないだろう。
最後に、実際に製品を見たり使ったりすることで、さらにCMSの現実を理解しよう。いくつかの製品を実際に使ってみると、カタログの機能一覧では同じ名称で掲載されていた機能が、実際はほとんど別の機能といってもいいくらいなこ場合があることがわかるだろう。機能の有無を知るだけでは、意味はないのだ。
何となく使ってみるだけでは、デザインや使い勝手のみが印象に残ってしまいがちだ。論理的で効果的な判断ができるように、以下のような点を意識しよう。
- どのような種類の「コンテンツ」をどう「管理」すべき、と開発ベンダーは想定したのか?
- 社内の体制やプロセスをどう変更すれば、その機能を使いこなせるようになるのか?
- 機能の多さと使い勝手、導入の手軽さと拡張性、初期学習コストと熟練者の生産性などのトレードオフにベンダーはどう対応したのか?
- どの製品も超えられなかった限界は何か?
まずはオープンソースCMSを実際にいじってみよう
まずは、オープンソースのCMS製品を使ってみることをお勧めしたい。オープンソース系CMSの場合、高価な商用製品と比べて機能がシンプルなことが多いため、マニュアルを読み込まなくても使いながら覚えることができる。また、デモ用の環境がオンラインで公開されていることが多いため、面倒な申請や難しいインストール作業をする必要がない。
CMS製品の公式サイトでデモ環境が公開されていない場合は、前述のOpenSourceCMSのサイトにアクセスしてみよう。数多くのオープンソース系CMSが紹介されているだけでなく、評価用にインストールされた多数のCMSが稼働している。一定時間ごとに環境がリセットされるので、遠慮なくコンテンツの編集や削除などを試すことができる。
オンラインデモでは試せない管理機能やモジュールの組み込みを試したいが、サーバーのセットアップやインストールをできる技術者がいないという場合は、「JumpBox」が役に立つ。
「JumpBox」では、CMSがインストールされた状態のサーバーを、VMwareのイメージとしてダウンロードできる。VMware Playerをインストールし、ダウンロードしたイメージファイルを指定して起動するだけで、CMSやデータベース、ウェブサーバーなどをローカルで仮想マシンとして立ち上げることができる。一時的な評価用の環境なので、動けばとりあえず十分だろう。
商用製品はベンダーのデモを中心にチェック
商用製品の場合、オンラインでデモ環境を公開しているところはほとんどない。あったとしても、ベンダーから直接説明を受け、知りたいことを質問するをするほうが効果的だ。
他のCMS製品を使ったことがある状態なら、デモを見るだけで本質を理解し的確な質問ができるだろう。また、無償のオープンソース系CMSでもここまでできる、という感覚があれば、ライセンス費を払う意義がどこにあるのかを質問し確認することもできるはずだ。
次回は「社内提案」
今回は、CMSの選定や導入を進める前の事前情報収集について、4つのステップで進めるアプローチと、注意すべきポイントを紹介した。
次に、要件をRFPにまとめて配布し、数社から提案を受けて製品とベンダーを選定するのがよくあるCMS導入の始め方だ。このプロセスは簡単なようで、実は非常に難しい。知識が不十分な状態で特定の製品に魅せられ、具体的すぎる偏ったRFPを書いてしまうと、ベストなソリューションの提案を受けられたであろう製品やソリューションが対象外になる。CMSの制約や現実を知らずに高い理想を掲げたRFPを書くと、風呂敷を広げた「何でもできます」的な提案になったり、特殊なニーズに応えるためにフルカスタマイズの高価な提案になったりしてしまう。こういうことがないように、今回紹介したステップを着実に踏み、理論武装をしておきたいところだ。
次回は、CMSの導入をプロジェクト化するための社内提案について取り上げる予定だ。評価や選定に進む前に、やることはまだまだある。
ウェブ以外の分野でも、コンテンツや情報を複数の人間が効率よく管理できるようにしたいというニーズが昔から存在し、似たような管理ソリューションが発達してきた。調べてみると、類似ソリューションを自社で導入していたため、オプションライセンスを追加すればウェブのCMS機能が使える、実はCMS以外にも必要なソリューションがあったなどの発見があるかもしれない。参考までに、簡単に紹介しておこう。
- ドキュメント管理(DM)
Office系ドキュメントやCADデータ、設計書など、業務で作成し利用されるドキュメント(文書/ファイル)を、セキュリティを保ったうえに効率よく管理するためのソリューション。ドキュメントの作成からレビュー、承認、保管、廃棄までのライフサイクルを管理するために、バージョン管理、ワークフロー、メタデータ、アクセス制御などの機能を抱える。CMSの前身でもある。
- デジタルアセット管理(DAM)
ドキュメント管理をベースに、マルチメディアドキュメント(画像、動画、音声)への対応を強化したソリューション。フォーマット変換や簡易編集機能、カスタムプログラムなどをワークフローに組み込むと、一連のプロセスを定型化することもできる。たとえば、高解像度のPhotoshop画像をDAMにアップロードすると、レビュー用の低解像度JPEGファイルが自動で生成され、承認された後は余白を切り抜き、レイヤーを追加し、カラープロファイルを変換した上でリサイズし、PNGに変換してサーバーに配信し、通知メールを配信する、といった連携が可能だ。
- 知識管理(KM)
これはソリューションというよりは考え方だが、業務上必要になる知識や情報をCMSやWiki、ブログ、ポータルなどのソリューションを活用しつつ、イントラネットやエクストラネットで一元管理する、という動きもある。企業の規模が大きくなると、実は知識管理のためにCMS製品を導入する予定があるにもかかわらず、別の製品を導入してしまった、という可能性もあるため、イントラネットなどを管理している部署との情報共有や連携も視野に入れておくといいだろう。
- レコード管理(RM)
情報セキュリティやJ-SOX法対応の一環として、帳票や資料の管理ポリシーを定め、ソリューションを導入して管理する場合もある。
- ビジネスプロセス管理(BPM)
申請フローなど、各種の業務プロセスを定型化し、効率よく管理するためのソリューション。CMSの「ワークフロー」は、ウェブコンテンツのレビューや承認に特化した簡易的なビジネスプロセス管理だ。ビジネスプロセス管理のソリューションは、プロセスの組み立て方の柔軟性、他のシステムとの連携、レポート機能、グラフィカルな編集機能などがCMSのワークフローよりも強化されている。社内プロセスが複雑なため、CMSのワークフローでは対応できない場合は、CMSとBPMを組み合わせるという方法もある。欧米では、複数のソリューションを連携させ、包括的に管理する事例が増えつつある。
コメント
Gartner資料の入手先
Gartner Merketscope for WCMがダウンロードできるSitecoreのサイトはこちら。
http://www.sitecore.net/Products/Resources/whitepapers/Gartner-Marketscope.aspx
9月末にはMagic Quadrant for ECMも出ました。
http://mediaproducts.gartner.com/reprints/microsoft/vol6/article3/article3.html
Re: Gartner資料の入手先
編集部の安田です。
この親コメントは、元記事の筆者の清水氏による投稿です。わかりにくくてすいません。
清水さん、追加情報ありがとうございます。