インタビュー

顧客エクスペリエンス向上のためのプラットフォームになる/FatWire

来日したFatWireのCTOドミトリ・チェルヴィック氏に、製品の特徴やロードマップについて聞いた

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FatWire株式会社

マーケティングに必要な総合プラットフォームを構築
Webエクスペリエンスを管理して顧客満足度を向上させる

取材・文:柏木 恵子
写真:渡 徳博

FatWire ドミトリ・チェルヴィック氏

FatWire Softwareは、米国に本社を置く最大級のエンタープライズ向けCMSプロバイダだ。ワールドワイドに展開する金融業や製造業など、多くの大企業を顧客を持っている。新製品やロードマップの紹介のために来日したFatWireのCTOのドミトリ・チェルヴィック氏に、製品の特徴について伺った。

FatWireの基本的な情報は記事末尾を参照。


Webエクスペリエンス全体を同一プラットフォームで管理

FatWire Software
CTO
Dmitri Tcherevik 氏

●編集部 FatWire製品の特徴について教えてください。

●ドミトリ コンテンツ管理の中核製品であるContent Serverは、FatWireのすべての製品と連携することでWebエクスペリエンスやWebコンテンツの管理のための柔軟なプラットフォームを提供するものです。国際的な銀行や世界的な自動車メーカーなどに利用していただいています。特徴は、インターネット上の動画などのリッチコンテンツも含めて、企業がWebサイトの管理、特にWebエクスペリエンスの管理に必要とするすべてのメソッドを提供するということです。

Webページの制作や管理を行うツールは、一般的にはCMS(コンテンツマネジメントシステム)という言葉が使われますが、FatWireはWEMという言葉を使います。Webエクスペリエンスマネジメントの略です。単に静的なコンテンツを個別に管理するのではなく、閲覧者がどのような体験をするかという、Webエクスペリエンス全体を管理する発想で製品開発が行われています。

CMSとWEMの違いは何かというと、管理できる対象が違います。企業がマーケティングに利用しているWebサイトは、これまでは製品情報などが掲載されているだけの静的なサイトでした。この場合は、一般的なCMSでそのサイト内の記事を管理すればよかったのですが、現在、企業は従来のWebサイトの他にモバイルサイトやeコマースサイトなど複数のサイトを持つようになりました。また、文章と画像だけのページではなく、ユーザーが作成したコンテンツ(UGC)やブログ、ビデオ、さまざまなサービスのマッシュアップ、SNS、サイトの更新情報など、サイトで扱う情報も多様になりました。新しい表現手法が加わったため、Webサイトというものの見え方が変わっているのです。従来の静的なサイトを管理するためのCMSではこのような多様な内容を管理できないため、Webサイトの管理にも新しいプロセスが必要になりました。これは大きな変化です。

企業はまず、図1のようにさまざまなステップが存在することを理解する必要があります。我々はこれをWebエクスペリエンスマネジメントプロセスと呼んでいます。まず企画を立て(Conceptualize)、コンテンツ制作し(Author)、デザインし(Design)、公開し(Publish)、対象を決め(Target)、配信する(Deliver)。その後、アクセス解析(Analyze)やユーザーからのフィードバック(Participate)によって、さらに新しい企画を立てるといったサイクルをまわします。

FatWireは、このWEMプロセス全体をサポートする手段をフレームワークとして提供しています。さまざまなモジュールをプラットフォーム上で組み合わせて、すべてのものを管理するのです。CMSに当たるContent Serverに、ビデオや外部のサービスを組み込むような他のサーバー群を統合し、同一プラットフォーム上で管理できます。

図1 FatWireのWebエクスペリエンスマネジメントプロセス

パーソナライズしたコンテンツで顧客エクスペリエンスを高める

●ドミトリ FatWireのフレームワークでは、複数のサーバー群を連携してサイトの構築や管理をします。具体的にどのようなことができるのか、「Community Server」と「Gadget Server」の例を紹介しましょう。この2つは、今年の下半期にリリースする予定のものです。

複数のサーバーのサービスを利用する場合、その都度ユーザー名とパスワードを入力するというのはユーザーにとって煩わしいことですが、FatWireのソリューションではOpenIDを利用できます。OpenIDの利用者はもうかなり多数になっていますし、日本にも発行するベンダーがありますね。一度ログインすればシステムがユーザー名とパスワードを覚えておいてくれるので、何度も入力する必要がありません。

Community Serverは、簡単な操作でWebページにビデオや画像、プロファイル情報などを埋め込むことができるものです。写真などの画像やビデオなどの動画も、同様の操作で貼り付けることができます。また、たとえばFacebookのようなプロファイルサイト、SNSの一種ですが、これも画像を貼るのと同じような簡単な操作で埋め込むことができます。

Gadget Serverは、別のサイトにあるコンテンツを自分のサイトに埋め込むものです。iGoogleはいわゆる個人用のポータルサイトですが、我々の顧客の多くが、自分たちのサイトをiGoogleのようにしたいという要望を持っていました。Gadget Serverを利用すると、ページを制作するときに画像を貼るのと同じような感覚で簡単にいろいろなガジェットを追加できます。できあいのガジェットとしては、時計なんかはポピュラーですね。あるいは、米国の雑誌「TIMES」のクロスワードパズルなども簡単に貼り付けられます。ガジェット登録の画面を開いて選択していけばいいだけです。ページ上の配置も簡単に移動できます。また、インターネット上の動画をガジェットに変えて追加することもできます。

時計やクロスワードパズルを入れたり、お気に入りの動画をガジェットとして追加したりというのは、エンドユーザーがパーソナルポータルとして使う場合の例ですが、企業のサイト管理者がターゲティング広告などに利用することもできます。Gadget Serverは個々のページの設定情報を保存するため、どの地区に住んでいるか、年齢や性別などがわかるようにもできます。そのページを閲覧している人に合わせたサービスを、パーソナライズしたガジェットとして提供できるわけです。また、自社サイトにガジェットを作っておけば、それを持ち帰るサイトが増えることで自社サイトへのトラフィックも多くなりますから、広告掲載料金を払わずに自社サイトへのトラフィックを増やせるわけですね。

●編集部 iGoogleのようなサイトを作りたいというのは、企業側と利用者側の双方が望んでいたということでしょうか。

●ドミトリ そうです。どちらも閲覧するページをパーソナライズしたいと思っていました。たとえば自動車メーカーの場合、自動車を購入した人にその車種向けの新製品情報や法定点検のスケジュールを知らせるようなことができればと考えていましたし、エンドユーザーは車のページに交通情報や天気予報の情報があればいいと考えます。購入者ごとの個人ページに、それぞれが必要と思うサービスをガジェットとして配置できるのが、Gadget Serverです。

他の業種では、たとえば銀行は残高照会やローン情報の提供などさまざまなサービスをWebサイトで提供しています。それぞれは別のサービスですが、これらをガジェットにしてそれを組み合わせた専用のページを顧客ごとに作ることができます。その顧客の情報もGadget Serverに保存されていますから、その人に合わせたサービスを提供できます。ユーザーは残高照会のために頻繁にサイトを訪れますから、効果的に広告を打つことができますね。あるいは新聞社などのメディアサイトでは、事件やスポーツ、技術情報などさまざまなニュースカテゴリがありますが、これらを組み合わせてトップページを作ることができます。読者がこれらのカテゴリからほしい情報を自分で選んで、パーソナライズされた専用のページを作ることもできます。

●編集部 FatWireの製品はどのような企業がターゲットとなりますか。

●ドミトリ 動的なサイトを作り顧客満足度を高めたいという場合、特にパーソナライズが必要なサイトに適しています。事例として、1日に一千万ページをパーソナライズしているという銀行の例があります。これは、バックエンドの基幹システムのパフォーマンスが高いから可能という面もありますが、FatWireはクラスタリングでパフォーマンスをスケーラブルに増強できるので、それに対応できるのです。


図2 Gadget ServerやCommunity Serverによってパーソナライズしたコンテンツを簡単に提供できる
用語集
CMS / Java / SNS / UGC / Wiki / アクセス権 / アクセス解析 / アップロード / インタビュー / インデックス / クラスタリング / ディレクトリ / フィード / プラットフォーム / マーケティング / メタデータ / 顧客エクスペリエンス
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