ベンダーよりもCMSに詳しくなる! 4つのステップで進めるCMSの情報収集
(2)CMS導入事例から学ぶ
次に、導入事例について調べてみよう。Web担でもCMS導入事例のコーナーで数多くの導入事例をレポートしているが、製品ベンダーや制作会社に直接聞いたり、ユーザー会やカンファレンスに参加して企業側の担当者に話を聞く、という方法もある。
事例の収集にあたり、以下の3つのポイントについて意識しよう。
Q1. その事例では何のためにCMSを導入したのか?
事例を参考にする際に「そもそもなぜCMSを導入したのか」の目的がブレると判断を誤るため、この根本を明確にしておくべきだ。よくある目的としては、以下のようなものだろう。
- コンテンツオーナーによる直接編集を可能にし、運用のスピードを上げたい。
- レビューや承認のプロセスを確実に守り、記録が残るようにしたい。
- デザインテンプレートを活用し、ブランディングを強化したい。
- コンテンツの活用を促進したい。
- 開発者に頼まずに動的なサイトを実現したい。
- リンク更新やFTPなどの単純作業を減らしたい。
CMSにはいろいろなメリットがあるため、つい欲張ってたくさんの目的を要件に入れてしてしまいがちだ。だが目的の中には、お互い相反するものもあるため、優先順位を明確にしておくことが重要だ。たとえば、コンテンツオーナーがコンテンツを直接入力するなら運用のスピードは上がる。だがセキュリティやコンプライアンスを重視してレビューや承認のワークフローに大人数を組み込むと、運用のスピードが落ちてしまう。あるいは開発者に頼まずに動的なサイトを実現したはいいが、今度はCMSベンダーに依頼をしないとテンプレートの大幅変更ができなくなった、なんてこともある。
もし導入済み企業の担当者と話す機会があったら、「なぜCMSに注目したのか?当初の目的は何だったのか?」「設計や実装、運用を経て、どの目的を達成できたのか?」を聞き出してみよう。
Q2. ROI(規模感)は?
扱うコンテンツのボリュームや関わる人数が組織によって異なるため、CMSの規模や種類は幅広く、導入費や運用費もピンキリだ。そのため、CMSの効果やメリットは、規模や費用とのバランスで相対的に考える必要がある。コンテンツや組織の規模、コンテンツの更新頻度や再利用頻度、ライフサイクル(掲載期間)などが近い事例を参考にするのがベストだが、CMSの導入事例自体があまり多くない。
自らのケースとの差分を意識しながら、なるべく相対的に解釈するようにしよう。「この事例ではワークフローで承認者を固定しているが、弊社の場合は異動が多い。その場合の設定変更の手間や所要時間はどうなのか?」などと、具体的な疑問・確認ポイントが洗い出されるだろう。それらはメモしておくと、後の製品選定や要件定義のときに役立つ。RFPを書きながら机の上で頭をひねるよりも、具体的な事例をベースとして検討するほうが創造的で生産的なのだ。
なお、ここでいう「コスト」とは、初期ライセンス費や制作・開発の外部委託費だけでなく、確認作業や調整などの社内負荷、導入後の体制や運用コストなども含む点に注意したい。コストを左右するために明確にしたいポイントとしては、
- 管理するのはコンテンツのみか? モバイルや印刷物でのコンテンツの流用はあるのか?
- 人や組織の変革も行ったのか? それとも現状の体制を維持したまま導入したのか?
- 扱うコンテンツは貯める一方なのか? 保管期限を定めて削除も管理しているのか?
- 導入後は内製化したのか? 制作や運用管理の体制は?
- 移行した既存コンテンツはどれくらいあったのか?
などがある。
Q3. うまくいかなかった点は?
CMSは発展途上にあるため、販売や導入を行うベンダーにとっても、まだ試行錯誤が必要なのが現状だ。美しい成功事例よりも、何がうまくいかなかったのか、想定外だったのは何か、それらをどう切り抜けたのかが参考になる。
- 不適切な製品を選定してしまった。
- 要件定義や設計が不十分だった。
- ベンダーと建設的な関係が築けなかった。
- 社内が新しい管理プロセスに適応できなかった。
- 運用後に問題が続出した。
CMSを導入した事業者の担当者に話を聞くのがベストだが、難しい場合はベンダーに聞いてみよう。海外で開発されたCMSの場合、販売ベンダーよりもCMSを実装する制作会社やシステム開発会社のほうがノウハウを持っていることがある。説明を受ける段階で、制作やシステム会社の紹介を受けて同席してもらう、という方法もある。
(3)CMS製品を洗い出す
CMSの基本をある程度理解し、事例について学びつつ疑問点が沸いてきたところで、いよいよ具体的な製品に目を向けよう。ここでの目的は、自社にとって最適な製品をいきなり「選定」することではなく、世の中にどのような製品が存在するかの「選択肢」を広げることだ。
よく耳にするもの、導入実績が多いもの、国内で入手可能なものはごく一部に限られるため、その中のみから選ぶと、実は非常に偏った選択をすることになる。最終的に選ばれる可能性が低いとしても、選択肢は抜け漏れのないように広げておき、相対的な判断をしたいところだ。特定のニーズに特化したものや、実績は少ないが先進的なものなど、幅広く候補をリストアップすようにしよう。
情報源としては、雑誌の記事や巻末カタログ、CMSの紹介サイトやカンファレンス、ベンダー主催のセミナーなどがある。日本語の情報源では対象が限定されるため、海外のレポートやサイトも参考にするといい。
- Web担当者Forum:企業で使えるオープンソースCMS一挙12種類解説
12種類のオープンソースCMSについて、詳しくレビューしている。基本的な機能については表で一覧可能になっているほか、対象規模やインストール・管理難易度も解説されている。
→Web担当者Forum:企業で使えるオープンソースCMS一挙12種類解説 - CMS DESIGN
CMSのテンプレートデザインを受託している株式会社スリーピースコミュニケーションズのサイト。「オープンソース系CMS比較!」のコーナーで、10種類のCMSを紹介している。
→CMS DESIGN - CMSナビ
フリーまたはオープンソースのものを中心に、41種類のCMSについて簡単なレビューが掲載されている。知名度が低いものも多いため、選択肢を広げるきっかけになるだろう。
→CMSナビ - CMS比較.com
CMSに関するニュースやカタログを掲載。67種類のCMSが掲載されている。上記の3サイトがカバーしていない商用製品が中心だ。
→CMS比較.com - OpenSourceCMS
英語サイトもいくつか紹介しておこう。このサイトには大量のオープンソースCMS製品に関する情報が掲載されているため、選択肢が一気に広がる。コメントの書き込みも多く、世界中でいろいろな人が同じ悩みを抱えていることがわかる。時間はかかるが、参考になるヒントが見つかることもある。さらに、オンラインデモも数多く設置しているため、実際に操作して試すことができる。
→OpenSourceCMS - The CMS Matrix
さらに大量のCMSについて、スペックを指定して検索し、比較できる。数が多すぎるため、ある程度の条件で絞り込む必要がある。OSや開発言語、予算、必須になりそうな機能の有無などで検索しながら、前述のサイトでは見つからなかった候補製品をさらに洗い出してみよう。
→The CMS Matrix - Open Source Content Management Systems(CMS) in Java
英語サイト。Javaで実装された32のCMSを紹介している。社内のITポリシーにより、動作環境がJavaに限定される場合に役立つリストだ。
→Open Source Content Management Systems(CMS) in Java - MarketScope for Web Content Management(Gartner)
大手調査会社のガートナーが毎年発表しているCMSの評価レポート。24ページで1,995ドルの商用レポートだが、上位に選定されたCMSベンダーが権利を買い取り、期間限定で公開することがある。今年はSitecoreから入手が可能だ(要登録)。
→MarketScope for Web Content Management(Gartner)
コメント
Gartner資料の入手先
Gartner Merketscope for WCMがダウンロードできるSitecoreのサイトはこちら。
http://www.sitecore.net/Products/Resources/whitepapers/Gartner-Marketscope.aspx
9月末にはMagic Quadrant for ECMも出ました。
http://mediaproducts.gartner.com/reprints/microsoft/vol6/article3/article3.html
Re: Gartner資料の入手先
編集部の安田です。
この親コメントは、元記事の筆者の清水氏による投稿です。わかりにくくてすいません。
清水さん、追加情報ありがとうございます。