ネット広告/マス広告とかの区別よりも、大切なのはコミュニケーションデザインでは?~Web担/日経BP/MarkeZine連動コラム
このコラムは、Web担当者Forumと「日経ネットマーケティング」「Markezine」各誌の編集長が、毎回共通のテーマでネットマーケティングを語るコーナーです。
第4回のテーマは「あえてオフライン広告について語ってみよう」です。
他誌編集長のコラムも同時に公開されていますので、併せてご覧ください。
- 求められるクロスメディア展開、業界再編は起こるのか(日経ネットマーケティング)
- 「オンライン広告1人勝ち」ってホント? テレビ広告費を上回る“オフライン広告”の世界(Markezine)
- ネット広告/マス広告とかの区別よりも、大切なのはコミュニケーションデザインでは?(Web担当者Forum)(この記事)
さて、マーケティングという企業活動を考えるうえで、「ネット広告」「マス広告」「オフライン広告」などの区別って、そんなに気にするべきものなのでしょうか? いま、本当に大切なのは、もっと別のところにあるのではないでしょうか?
最先端の技術を採用したネット広告の仕事をしている人は、ついつい「ネット広告マンセー」になってしまいがちですし、マス広告に人生を捧げてきた人は、マス広告へのこだわりは強いものでしょう。
それぞれの仕事を専業でやっているクリエイターさんや営業さんが、自分の扱っている広告商品に集中するのは当然だと思います。しかし、広告主やプランナーは、そういう分類よりも、もっと考えるべきものがあるはずじゃないかと思うのです。
使える宣伝費があって、想定した期間で、得たい効果が達成できるのならば、どの手法を使うかなんて、ぶっちゃけ、どうでもいいことなんじゃないでしょうか。逆に、手段にとらわれて目的を達成する遠回りになっちゃ意味がないですよね。
私が最近読んだ広告関連の本のなかで、最もお気に入りなのが、新書『明日の広告』です。電通の佐藤 尚之(さとなお)さんが本業関連で書かれた書籍で、私はその内容に感動して、佐藤さんのセミナーに足を運ぶようになりました。
「変化した消費者とコミュニケーションする方法」というキャッチのついたこの本で佐藤さんは、50歳を過ぎた宣伝部の部長さんでも古いタイプの広告代理店の偉い人でも理解できるような、非常にわかりやすい語り口で、今、広告というものがどんな状態にあり、どういう風に広告を考えていくのが良いのかを解説されています。
書籍の冒頭で説明しているような、「広告は企業から消費者へのラブレター」なんてことは、広告の世界ではよく使われてきた表現だと思います。しかし、人々の生活スタイルや行動パターンが変わった今は、ラブレターを渡すにもなかなか会えないし、見てもらえない。ではどうすればいいのだろうかということが本書の主題。その答の1つとして佐藤さんが出されているのが、今回のコラムのテーマに関係しているのです。
ターゲットを明確にして、その人がどんな風に生活していて、どういう行動を日々とっていて、何を感じて何を不満に思って何を好きだと感じるのか、それをしっかりと調べたうえで、うまく“出会える”場所を探して、必要ならその“場”を作りだし、相手にしてもらえる言葉で語りかける。それが、私の理解した「明日の広告」に必要なやり方でした。そこには、Web広告にするのかテレビCMか新聞広告かなんて選択のしかたはありません。そこにあるのは「どのコンタクトポイントが、相手にメッセージを伝える適切な場なのかを考える」という原則なのです。
ある広告マンが、若手の広告マンにこんなことを言われたという話を聞いたことがあります。
昔はテレビCMに「どんな広告を出すか」を考えるだけでよかったんですよね。
そんな時代、楽でいいですよねー。
人々の趣味趣向が多様化し、受け取る情報の量が急激に増え、メディアが多様化し、そして人々は広告に慣れて賢くなっています。今はそんな時代だということを理解すれば、「マスでごっそりと広くメッセージを告げる」が効くのは一部の消費財だけであり、ほとんどの場合はセグメントに合ったコミュニケーションのデザインが必要なんだというのは、好むと好まざるとにかかわらず、わかるはずでしょう。そして、そのコンタクトポイントの選定やコミュニケーションのデザインにおいて、マス広告かネット広告かというのは、選択の結果でしかないんですよね。
さらにその方向性を推し進めると、「クロスメディア」という考えも、ある意味では否定することになります。
というのも、メディアミックスやクロスメディアというと、複数のメディアを組み合わせることが前提となっていますよね。しかし、前述のコミュニケーションデザインの考え方でいくと、扱うメディアが複数かどうかも、どうでもいい話なんです。ラブレターを届けたい相手によっては、それが最適ならば1つのコンタクトポイントだけでいいはずなんです。複数のメディアを組み合わせるのは、あくまでもコンタクトポイントを複数使うのが効果的な場合に利用する手段であり、それを目的としてしまうのは筋が違うということなんです。
もちろん、コミュニケーションをデザインする流れのなかには、コンタクトポイントの設計以外にも、やるべきことはたくさんあります。
顕在化していないユーザーのニーズを浮かび上がらせたりといったことも必要です。それは、私が最近テーマにしている「ユーザー視点」の一部です。
また、人間なんて感性や感情をベースに行動することが非常に多いものです。そう考えると、押し売りやロジックではなく、「その人は何をどう感じるのか」をベースにしたクリエイティブやインタラクティビティの設計が必要になるでしょう。
そう考えると広告って、大変な、でもやりがいのあるお仕事ですよね。
今回「あえてオフライン広告について語ってみよう」というテーマを提案したのは私なのですが、箱を開けてみると、当初考えていたネタとはまた違う方向になっちゃいました。
でも、ベースにあるのは、いつもセミナーなどで繰り返している「目的を達成するためのアクションにフォーカスする」という点です。手段を目的を勘違いして無駄にする時間なんて、今のマーケの人には許されていませんからね。
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