コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の百弐十七
勝手にマイコミジャーナルと連動企画
SaaSやクラウドを指す「エンタープライズ2.0」がさわがしい昨今ですが、私が見聞きした理不尽なリアルをバージョンナンバー1.0の遙か以前の「0.2」として紹介するコラムを、今年の2月からマイコミジャーナルで連載しています。中小企業の現場では「理論」より「感情」が、「合理性」より「直感」が優先される場面は少なくなく、声高に叫ぶ人はいませんが、進化を望まない人もいるのです。
実は企画段階では短期集中連載を予定していました。私は商売人。関係者がみれば一目瞭然の「人間模様」をおもしろおかしく腐していることが「客バレ」し、リアルの世界で敵を作って得はありません。ところが気がつけば週刊連載。毎週「客バレ」の恐怖と闘っています。幸いにして「0.2」な人たちはネットの情報に疎いようで今のところクレームはありませんが、連載終了時はその裏側をそっとご想像ください。
さて、今回は久々の「勝手に企画」。両編集部に無許可で「連動」します。あちらは「進化を邪魔する社長たち」でこちらはこうお届けします。
「勝手に連動! 進化する社長たち」
当事者になったことで加速
先日、コンサルティング先の代表からメールが入りました。
「ミヤワキさんの仰っていたことの意味がわかりました」
こちらの企業では2年前から、代表とWeb担当者、ほか数人で月1回の勉強会を開いていたのですが、アクセス解析の必要性と、実戦的なSEOの仕掛け方を最近になってようやく理解したといいます。きっかけは代表者がコンテンツ原稿の執筆をはじめたことです。手書きの文章をWeb担当者がコンテンツに整え公開します。すると公開されたコンテンツのアクセスが気になりだしました。前日のアクセス数は「アクセス速報」としてメールで届くので、毎朝出社すると真っ先にメーラーを開きチェックするようになりました。速報については2年前の「三日坊主にしないためのアクセス解析の仕掛け」で紹介しています。
当事者となることでスイッチが入りました。すると進化の歯車がゆっくりと動きだし、次第に回転速度を速めていきます。
訪問者のストーキングの開始
始めは「PV(ページビュー)」。何ページ見られたかを喜び、執筆速度を上げてコンテンツを増やしていきました。アクセス速報には前日のPVとユニークユーザーとともに「アクセスキーワード」がランキングされています。ここに自分が書いたキーワードを見つけ、次のステップに進みます。
キーワードで実際に検索してみると、検索エンジンの8番目ほどに表示されていました。1~7番目のサイトをチェックしてみると内容で負ける気はしません。そこで代表は考えました。
「もっと順位を上げる」
技術的なアドバイスをすると予想通り順位が上がりアクセス数はさらに上昇しました。
しかしPVが増えても結果に結びつかないことに気がつきます。経営者の求める「結果」とは利益で、PVへの違和感を覚えたのはさすがといえるでしょう。
手玉にとる間隔
検索結果を操作できたことで進化が加速します。PVを上げることができたのだから「結果」に結びつける方法もあるのではないかと考えたのです。アクセスされたキーワードのチェック、移動履歴、滞在ページに直帰率といった「訪問者のストーキング」をはじめました。つまりはアクセス解析で、弊社独自開発のツールとグーグルアナリティクスを併用する方法をレクチャーするとある仮説にたどり着きました。
「悩みや不満を解決するコンテンツが求められている」
問い合わせや商品購入によって解決できる可能性を示すということです。悩みや不満を象徴するキーワードでのアクセスは多いのですが、解説や事例紹介では直帰率が高く、解決策を示したページは滞在時間が長く「次」をクリックする傾向がわかったのです。
答えは最初に示す
このとき、私の所に「わかった」とメールが届きました。直後の勉強会で社長自ら「アクセス解析」「SEO」に熱弁を振るいます。そしてコンテンツの奥義としてこう締めくくりました。
「メリットは最初に示す」
照れくさそうに補足しました。「2年前からミヤワキさんに言われていたことだが
」。序章から順序立てたコンテンツは最後まで見てもらえず、同じ内容を結論から書き始めたところ滞在率が上がったと体験を語ります。コンテンツを書いたことで、誰が見ているのかと興味を持ち、客をストーキングして次の扉が開きます。
オーバチュアなどの検索連動型広告です。オーバチュア経由で購入した客に訊ねると「検索エンジンの1番上にあった
」と訪問理由をあげます。オーガニック検索(広告以外の自然検索結果)は「無料」ですが掲載順位は「管理」できません。一方、広告は「有料」でも「狙え」ます。ならばと、有料広告で訪問した客に「買わせる方法」を見つける狙いです。費用がかかっても「狙える」意義が大きいのは不確定要素の排除が経営効率を高めるからです。
成功事例の難しさ
いま代表の要求で、アクセス解析の機能強化に追われております。更なる進化のために。リーダーが進化した企業は必ず伸びます。これは代表の言葉です。
「アクセス解析って毎日の仕事なんですね」
これも2年前からレクチャーしておりました。
マイコミジャーナルの連載は「進化を邪魔する社長」、ここで紹介している以上に「進化する社長」は多いのですが、彼らを実例と共に紹介する難しさを勝手に連動企画で気がつきました。実例紹介と情報漏洩の線引きです。成功例は顧客利益を損なう可能性があるのです。もっとも失敗例の公開で「客バレ」しても怒られるのですが。
最後にトリビアを。雑誌や書籍の「成功事例」に本当の全部を掲載することはありません。これは「成功イメージ」を与えるための「商品」であり、本当のなかの一部を抽出してパッケージしているものです。だって筆者が知り得た情報をすべて書いたとしたら「情報漏洩」で訴えられてしまいますからね。
♪今回のポイント
アクセス解析とは答えを見ながらの改善。
カンニングできるWebの魅力。
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