サイト改善レポート実践活用術~具体的なサイト改善をスムースに行うために
サイト改善レポート実践活用術
~具体的なサイト改善をスムースに行うために
2セッション目は、「サイト改善レポート」に関する内容。アクセス解析レポートではなくサイト改善レポートとはどういったものを示すのだろうか。
サイト改善レポートとは
石井氏によると、まだ多くの会社でホームページは2年に1回リニューアルすると定められている。または、半期に一度くらいで新商品を追加したり廃盤商品を削除したりする程度。
しかし、リニューアルすることと改善することは別なのだという。載せているコンテンツを大幅に変更しなくても、最適化することは可能。ホームページにはどこかしら良くするべき点はあるし、現在良い点はさらに伸ばせる。それを、アクセス解析レポートという形でわかりやすくしていくのが「サイト改善レポート」なのだと石井氏はいう。
たとえば、入口ページ上位50~100ページ程度を、ページごとに、X軸を訪問回数(左が少、右が多)、Y軸を直帰率(上が低、下が高)にプロットしてみる。
右上に入っているページは、人を多く集めていて、しかも来た人をちゃんとつかまえているページ(最良)。
右下に入っているページは、人を多く集めているのに、来た人をどんどん突き返しているページ、これは困るので、改善するべき(PDFや古いプレスリリースなどが多い)。
左上に入っているページは、人は多くは集めていないけれども、来た人はちゃんとつかまえているページ。そのページに対して張られたリンク方法が良いのか、ページの内容が良いのか、その方法論を活かしていくといい。または、効く内容なら、そのコンテンツを今後出す広告にうまく使うなどするといいだろう。
サイト全体を修正すると大変だが、こういった分析でサイト内を少しずつ最適化していけば、サイト全体のパフォーマンスを向上できる。
サイト改善レポートとは、このように、アクセス解析のデータから目標を達成するために、どこを直せば良くなるのか(成果を伸ばせるのか)を見極めて、会社に提案するレポートのことをいう。もちろん改善の実施後は、その成果を検証して、その報告をレポートにする。
リニューアルは大変だが、こういったことをレポートベースですぐに行動していくことが大切なのだと石井氏はいう。
狙いとノウハウのない全面リニューアルは悪
狙いもなしに行う全面リニューアルは、たんなるデザイン刷新でしかないと石井氏は強調する。その場合、以前のデザインで抱えていた問題がリニューアル後も発生するのだという。
リニューアルというのは、サイトの現状での問題点をリストアップし、それを解消するために行うべきものである。
また、リニューアル前には改善予定の項目をテストしておくことが大切。小規模な修正で、変更による影響を測っておくことで、リニューアルの方向性を正しく保てるのだ。
石井氏は、リニューアルのためにチェックするべきポイントとして、多くのサイトが抱える次のような点を挙げた。
- サイト全体の直帰率(参考指標:47.5%)
- トップページの直帰率(参考指標:32.5%)
- 多くの訪問者を帰らせる入口ページの直帰率(参考指標:70.2%)
- 重要なのに訪問が少ないキーワード(参考指標:15回)
- 閲覧してほしいのに見られていないページ(参考指標:52セッション、コーナートップページは多く見られているけれども、本当に見てほしいのはその先の詳細ページであれば、そちらが「見られていないページ」となる)
こういったことをうまく行っていないサイトでは、SEOでがんばって集客しているけれども、せっかく来た人をすぐに追い返してしまっている場合も多いのだと石井氏は言う。
サイトで達成すべき目的がわからないサイトも多い
石井氏はさらに、Webサイトを設置している目的がぼやけてしまっていることが多い点も指摘する。直販をしていないメーカーサイトなどでは、「うちのサイトにゴールなんてありません」と断言する場合もあるのだという。
しかし、ゴールとはいわゆるコンバージョンばかりではない。「会社の認知度を高める」「既存の取引先を優遇する」「営業をサポートする」「CSRを行う」「IRを行う」など、さまざまな目的が考えられ、それを反映する目標が定められるべきである。そして、その目標達成に資する要因を分析し、それを増やしたり、その達成を阻害する要因を見つけて削除する。それが日々のサイト運営なのだと石井氏は強調する。
その具体的な方法論として、たとえば、自分のサイトで目標をすべて書き出して表にしてみることを石井氏は薦める。サイト全体だけでなく、事業部ごとやコーナーごとに複数の目標があるのが普通なので、すべてをリストアップする。目標は会員登録数の増加、閲覧者数の増加、ダウンロード数だったりする。この際に、状況によって目標は、まずは「このページへのアクセス数」といったレベルで我慢するのも重要だ(本来は実事業での指標にするべきだが、そうするといつまでたってもサイト改善が進まない)。
それを各事業部に渡し、確認/追加してもらう。そして、アクセス解析で現状の数値状況を書き出して、目標設定をする。1つひとつはすぐに達成できるものになるだろう。
こういったまとめは、Web担当者が1人で全部やると大変なので、各事業の担当と協力しながら行うこと。そして、1項目ごとに、アクセス解析をしてボトルネックを解消していく。
そして1つずつ目標を達成していき、それを改善レポートとして経営層に提出する。ゴールが100項目出たとして、1日2項目ずつ改善していくと、50日、つまり2か月少しでひととおりのゴールに関する改善ができることになる。そして、ひととおり終わったらまた最初のゴールの状況をチェックして、改善するというサイクルを回していくのだ。
石井氏は、その際に意識するべきこととして「ゴールデンルート」を強調している。たとえば「事例のページを見た人は、資料請求をしてくれる確率が非常に高い」ことがわかっているならば、そこをうまく利用する。たとえば事例のゴールデンルートでいうと、トップページから製品ページに行くと事例ページへの経路がなくなるサイトが多い。そこで、製品ページなど他のページから、ゴールデンルートである事例ページへの誘導を強化するのが良いというのだ(必ずしもトップページから直接事例ページに行かせる必要はない)。
石井氏によると、資料請求が少ないと嘆く多くのサイトで問題なのは、フォームではないのだという、問題はフォーム自体ではなく、フォームのページに適切な訪問者がたどり着いていないことが多い。そこからさらに遡ると、「このページを見たら資料請求したくなる」というモチベーションの元となるページにたどり着く人自体が少ないのかもしれない。そうして遡っていくことで、ゴールデンルートへの合流型誘導の考え方が出てくるのだという。
「アクセス解析レポート」といった結果に関するレポートの話ではなく、「サイトをどう改善するか」に関するレポートの話は、実は「クリックされる場所にボタンを置く」「ページをスクロールした先に誘導の経路を造る」「ゴールへのモチベーションの高い人が見るページからゴールへの経路を造る」といったシンプルな対応の話であった。その問題点をいかにして見つけるか、それがアクセス解析なのである。
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