広告効果測定市場の最新動向~「測定」という過去形から「改善」という未来形へ
広告効果測定市場の最新動向
~「測定」という過去形から「改善」という未来形へ
4セッション目は、広告効果測定市場に関する内容。Webサイトのアクセス解析ではなく、広告効果はなぜ出ないのか、どうすれば改善できるのかにフォーカスしている。
石井氏は、広告効果が出ない理由は、次の3点にあるという。
- 無駄クリックが多い
- ランディングページの造りが悪い
- コンバージョンへのモチベーションが低い
広告は「良いのがあるよ、みんな来てよ」と誘う内容なので、関心の低い人までもが誘いに惹かれてクリックして、「やっぱり良いや」と帰ってしまう。PPCはクリックされるたびにコストが発生するので、無駄。
広告は「クリックされてなんぼ」ではなく、「関心のある人を誘導してなんぼ」。広告表現が「だれでも来てください」ではNG。関心のある人を誘導するけれども、ターゲットではない人はクリックしないように、広告表現を鍛えることで、広告効果をアップさせられる。
たとえば、東京の不動産屋なら、「東京の土地・建物」のように明記することで、エリア外の人のクリックを防げる。絶対数としてのクリック数は少なくなるが、コンバージョン率が上がるので、広告効果はアップする。
ここでも石井氏は、4象限を利用して解説する。今回は、X軸にクリック数(左=クリック少、右=クリック多)、Y軸にコンバージョン率(上=CVR高、下=CVR低)で、出稿しているPPC広告のキーワードごとに解析し、プロットしてみる。
右下は、コンバージョン率が低いのにクリック数が多い広告。つまりムダクリックが多い広告。予算がかかっているということなので、ここは重大。広告表現を工夫するか、ダメならここの出稿は予算を削っていくべき。
左下は効果が低く、改善なしでは伸ばしていけない。
左上は、密かに効果を出している広告。ここを伸ばすと効果が上がる。場合によっては、右下エリアから削った広告費をこちらに回すのもいいだろう。
広告はなんでもかんでも露出すればいいわけではない。本当に欲しいと思う人の前にだけ現れる広告、それがコンバージョン率が上がる広告なのだと石井氏は強調する。
ランディングぺージを改善するだけでコンバージョン数が倍
石井氏によると、多くの広告ランディングページの平均直帰率は97.5%。たとえば、クリック単価100円で10万円の予算を使う場合を考えてみよう。
↓(直帰率98%)
フォームへ移動20人
↓(フォーム完遂率50%)
コンバージョン10人
この場合、コンバージョン率は1%、CPAは10,000円となる。
しかし、直帰率を2ポイント減らせたらどうだろうか。
↓(直帰率96%)
フォームへ移動40人
↓(フォーム完遂率50%)
コンバージョン20人
この場合、コンバージョン率が2%、CPAは5,000円と、顧客獲得単価が1/2になる。
このように、PPCシステムのクリック率だけを見てもだめ。サイトに至ってからのランディングページ以降の動きまで含めて評価しないと、広告の効果を測定していることにはならない。
では、ランディングページをどう改善するのか?
- どこがクリックされているのか
- どこまでスクロールされているのか
- 直帰者を含めてページ滞在時間を計算すると?
といったところまで解析して改善する必要があるのだという。
そして石井氏は、わかりやすい改善手法として、アクション喚起ボタンのラベリング(どんな表現を書くか)を挙げる。ゴールへ行く人が少ないということは、ゴールへの誘い方が悪いのではないだろうかという部分だ。たとえば、「資料請求」「今すぐ購入」「お問い合わせ」と書かれているボタンは、訪問者にとって魅力的だろうか。
石井氏は、ボタンのラベル1つで改善した例として、人材系のサイトを挙げる。人材系サイトでよくあるボタン「エントリー」。これは、訪問者にとっては少し敷居が高いのだろうということから、これを「会社見学を希望する」としただけで、コンバージョン率が2倍になった事例もあったのだという。
LPOやA/Bテストは小手先にならないよう?
続いて石井氏は、LPOやA/Bテストについても、根本を説く。
LPOとは、ランディングページ最適化のこと。たとえば「マンション 渋谷」で検索してきた人には、ランディングページで「渋谷のマンションをお探しなら」と表示し、「マンション 新宿」で検索してきた人には、ランディングページで「新宿のマンションをお探しなら」と表示する仕組み。
これは、検索に応じて表示を変えることが重要なのではなく、訪問してきた人に、「あ、ここに自分の求める情報があるんだ」と安心させ、前に進んでもらうための仕組みなのだと強調する。LPOでページ一部の文言を変えるのが重要なのではなく、ユーザーにそれぞれ適切な価値を提供できるようにすることが本質的に重要であることを理解するべきなのだという。
A/Bテストに関しても同様。複数のランディングページのデザインを表示して良い方を自動的に多く表示するA/Bテストはあるが、どちらの表現も悪い場合というのも考えられる。その場合、「良いデザインを残す」ではなく「マシなデザインを残す」しかできず、訪問者が本当に望むものを得られているかは定かではない。ランディングページの良し悪しは、最終的な成果やそれにつながるページへの誘導数から考えた絶対評価を行うべきなのだという。
石井氏によると、広告効果分析とは、広告を出すたびに成果を向上させられて、ノウハウを与えてくれるもの。また、媒体そのものを評価できるもの。
広告は、出してから「結果はこうでした」ではなく、広告を出す前に、どれだけ広告を鍛えられるかが大切。たとえば、並んで出る他の広告がどのようなものがあるのか、どんなキーワード(ニーズ)に答える広告にするのかなどは事前に調整できる。広告効果測定でいえば、出稿を開始して3日間のデータで検証して広告クリエイティブを変えるなどして、PDCAサイクルをどんどん回せるような広告効果測定ツールが良いのだと強調する。
リスティング広告を使っている方は、オーバーチュアやグーグルからのレポートを(加工した形であれ)見たことがあるだろう。しかし、本来あるべき「広告のレポート」とは、こういった成果につながる部分まで含めて検証し、改善するべき点が見えるものではないだろうか。
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