部署縦割りではなく、企業全体で1つのストーリーとしての一貫したコミュニケーションを
部署縦割りではなく、企業全体で
1つのストーリーとしての一貫したコミュニケーションを
●政治の世界からPRの世界へと活躍の場を移す決意をしたスレイビー氏。これまでの経験から、企業が現在おかれている状況と変化、そしてソーシャルメディアでのコミュニケーションを前提とした組織について、どのように考えているのでしょうか?
スレイビー氏: メディアの状況はより複雑になっています。PRという観点でいえば、従来のメディアリレーションよりもコミュニティ運営のほうが、組織に貢献できることが多くあると思います。企業が効果的なPRを行うためには、テレビ広告よりコミュニティに参加すること。そして会話ベースのコミュニケーションを行うことがますます重要になっていきます。
人々が企業とエンゲージするとき、特定の部署と対応するのではなく企業全体と対話しようとしているのです。そのことを意識して、企業はすべてを1つのストーリーとして考えなければなりません。これまで縦割りに組織されてきたコミュニケーション部門、ブランド、マーケティング、サポート、PR、コーポレートコミュニケーションの各部門が一緒に仕事ができるように統合していくことが大事なのです。
古い考えの企業にありがちな失敗ですが、企業がソーシャルメディア上での会話をコントロールしようとすると、大変な窮地に追い込まれることになるでしょう。会社やブランド、組織は、オープンで透明性のあるコミュニケーションを行うよう努めるべきです。そのことが、より深い繋りを持つ機会をもたらしてくれます。コミュニティが企業になにを求めているのか、理解しようとする謙虚な姿勢が必要です。
●企業にとって、これまで行ってきたマスメディア中心の一方通行コミュニケーションの経験は、参加型のコミュニケーションを行うにあたっての障害になるのではないでしょうか?
スレイビー氏: デジタルコミュニケーションを受け容れることは、企業にとっては、企業文化を変化させることにもなり得ます。対話を支援してオープン化し、新しい対話のあり方を模索する必要があるのです。
企業は、これまでの慣習を変えなければなりません。このことは、企業にとっては大きな壁になります。いままで通りのやりかたを続けたいという慣性がはたらくため、実際に慣習を変えるのは困難なことかもしれません。しかし、これをチャンスと考えれば、いままでになかった新しい価値を企業にもたらすことも可能なのです。
ソーシャルコミュニケーションに対応するためには、一貫したコミュニケーションを行えるようプラットフォームを整備する必要があります。たとえばカスタマーサポート、人事、コーポレートコミュニケーション部門の再整理が行われ、全体の人数は変わらないのですが組織構成を変えて対応するといった動きも考えられます。
●このような流れの中で、日本でもチーフマーケチングオフィサー(CMO)を持つべきだという動きがでてきました。CMOの必要性、そして役割についてはどのようにお考えですか?
スレイビー氏: オバマ・キャンペーンでは、上司のキャンペーンマネージャーであるデイビット・クラフが、ニューメディア部門へのコミットを持っていました。彼がリソースを割り当て、ありとあらゆるサポートを行い、さまざまな可能性へのチャレンジの機会をコミットしてくれました。企業でも一緒だと思います。
CMOというものは、権限が集中する非常に重要なポジションです。そのため、経営チームの一員として、もっとも高いコミットメントが必要です。とはいえ本質的には、部門や地位で分け隔てなく一緒に力を合わせることが最も重要なのであり、誰がCMOなのかは重要ではありません。
●新しい体制、部門に対する最高レベルのコミットメントを経営者が行うために必要なことは何でしょうか。
スレイビー氏: 経営者に必要なのは、テクノロジーへの理解ではなく、デジタルの持つ潜在的な力に対するビジョンだと思います。トップマネジメントは日常のマーケティングではなく、スタッフの参加を引き出し、エンゲージメントやコンプライアンスに関与すべきです。
また、“やらないこと”から生じるリスクも考える必要があります。ソーシャルメディアに参加する人が増えれば増えるほど、時間が経てば経つほど、“やらない”リスクが大きくなっていきます。経営者は未来を見通さなければなりません。リーダーシップにはビジョンが求められるのです。
マスメディアからソーシャルメディアへの時代の流れは止められません。従来の習慣、組織、価値観……。これらを変えて挑戦しなければいけない新しい時代。企業として、しっかりした方針とストーリーを持ち、コミュニケーションの一貫性を実現するためには、従来とは異なる組織構成を検討することが重要だとスレイビー氏は指摘しています。
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