企業ホームページ運営の心得

チラシの魔法使いになるための現場ノウハウ

チラシ作りは、軸となる企画を考えるところから始まります。
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の弐百四十弐

増えるのはどっちだ

コンピュータが関係することならなんでもできると、「魔法使い」のように無茶ぶりされることの多い、中小企業のWeb担当者なら覚えておいても損がないのが「チラシの作り方」です。ありふれたものでありながら、実際に作れる人が多くないことから重宝がられます。それによって雑務が増えるか、信頼度が増すかは微妙なところではありますが、Web関係のサイト連載で「チラシ」を取り上げてくれるのは「心得コラム」ぐらいでしょう。今回は、前回に続きチラシノウハウについて。

チラシ作りは「企画」を考えるところから始まります。チラシにおいての企画とは、イベントや売り出す理由、または「タイトル」です。イベントとは「ジャンケン大会」「ビンゴゲーム」「スピードくじ」といったゲームや、「マグロの解体ショー」や「物産展」などが当てはまります。理由は、「決算セール」「在庫処分市」「感謝祭」といった売り出し動機です。そして最後は、「秋の実りセール」「一足早いクリスマスフェスタ」「鬼も笑うよ新春先取りフェア」と、タイトルだけで企画と言い張る手法です。

すべては企画からはじまる

企画が重要である理由は大きく分けて2つあります。1つ目は、消費者に向けてのメッセージです。広告に慣れた消費者に「お得です」とだけ問いかけても、「おまえが儲けたいだけだろ」と疑いのまなざしを向けられるだけです。そこで「企画」に目を向けさせることで、セールの正当性・必然性を訴え、客の警戒心を解く狙いがあるのです。

重要であるのは「企画」の「有無」で「内容」ではありません。優れたイベントであるに越したことはありませんが、特売ありきの後付けの理由としての「企画」でもよいということです。今年の11月16日から吉野家が期間限定で牛丼の並盛りを270円に値下げしましたが、その理由は「特盛り発売20周年」です。500円と特売価格にした「特盛り」ではなく、新聞広告も店頭の垂れ幕も「270円」の「並盛り」を前面にだしているところに、牛丼安売り競争に晒されて仕方なくという「本音」が現れています(真意は定かではありませんが)。

もう1つの理由であるデザインについては最後に説明します。

サイズはジャパンスケールで

ここからはチラシ作りの話に移ります。まずチラシのサイズはB4かB5にします。いわゆるコピー用紙はA4ですが、ひとまわり大きいのがB4で、小さいのがB5です。Aは国際規格で、Bは和紙から続く日本独自の規格です。前回紹介した「Shufoo!」や「チラシ部」に出稿する際はデジタルデータで、紙の大きさは関係ありません。しかし、どうせチラシに取り組むなら、「新聞折込」にも対応できるように製作するというのが1つと、B規格の方が参考資料を集めやすく学びやすいからです。

新聞に折り込むなら「裏面」も活用します。ジャパニーズオリジナルアド(広告)メディアである「新聞折込チラシ」は、一般的に紙の大きさで料金が決まります(一部、厚紙料金を取る地域もあり)。つまり、両面印刷でも片面が白紙であっても料金は同じです。印刷料金は割高になりますが、一度に届けることができる情報量は「倍」となり、総費用からみたコストパフォーマンスは断然「両面印刷」です。

素人に高いハードルですが

いよいよ作り始めます。ここで「ド素人」には少し高いハードルが登場します。それは「イラストレーターで作る」です。イラストレーター(絵描きとの混乱回避のために以下、イラレ)とはAdobe社のAdobe Illustrator(アドビ イラストレーター)のことで、DTP(デスクトップパブリッシング)業界ではデファクトスタンダードとなっている、プロ向けのドロー系(意訳=お絵かき)ソフトです。

直販サイトの定価は84,000円と高価。しかし、さまざまな購入方法や割引が用意されており、ライセンスによってはリーズナブルに入手できる方法もありますし、年間契約の月割り5,000円で利用するコース(Adobe Creative Cloud)も登場しました。また体験版も利用できるので、まずは試してみるとよいでしょう。ツールの使い方を習得する必要があるものの、料金に見合った生産性の高さがイラレにはあります。スタンダードということは、実例が豊富で学びやすいという利点もあります。

数値入力でリスペクト

文字単位がベースのワープロソフトや、セル単位でコントロールする表計算ソフトのほうが初心者にとっては馴染みやすいのですが、すぐに表現上の限界に到達します。かつて「一太郎」や「ワード」、「エクセル」でチラシを作った経験からの結論です。一方、イラレは「数値入力」を覚えればチラシのプロの技を模倣しやすく、それは用紙サイズをB版とする理由と重なります。

イラレは罫線やボックスの図形を「数値入力」で指定することができます。つまり、実際のチラシを定規で測ることで「参考」にできるということです。また、レイアウトでは「縦幅一杯に7つの枠線」という時には、「縦幅/7」と数式を入れると7分の1のボックスができます。用紙の縦幅が180mmならば、「180/7」と入力すれば自動的に計算してくれるわけです。あとはこれを数値入力で7回コピーすればあっという間に完成です(ブレンドという機能を使う手法もありますが、こちらのほうが論理的な理解が早いかと)。もちろん、この方法はホームページのカンプ(レイアウト見本)作りにも活用できます。

イラストレーターの操作例

以前、チラシのレイアウトについて紹介しましたが、きっちりとした枠組みを組むのも容易です。また、イラレ形式のファイルは印刷会社にそのまま入稿することもできます。素人にはハードルが高いですが、作業を経験しておくとプロに仕事を頼む場合の参考にもなりますので、まず体験版でもいいので実践してみることをおすすめします。

チラシが先生

枠が決まればあとは内容を入れ込むだけ。ここでもう1つの「企画」の重要性が登場します。

初心者が企画なしに多くの商品やサービスを掲載するタイプのチラシを作ると「部分最適」に走る傾向があります。小さな特売コーナーを懲りすぎたり、紙面のバランスを無視したり、「秋フェア」なのに桜模様を入れたりなどです。そんな馬鹿な、と思うでしょうか。しかし、DTPの初心者は拡大した「画面」に比重を置いて作業を進めるため、全体像をうっかり忘れてしまうのです。これを回避するためのグランドデザインとして「企画」が機能するのです。たとえば、タイトルでお茶を濁す企画である「鬼も笑うよ新春先取りフェア」で、紙面の都合から「空きスペース」ができたところに走り込んでくるのはマグロやグー・チョキ・パーのイラストではなく、笑う鬼や羽子板となるように。

白縁、立体、単色、2色版、文字の選び方などなど、チラシ製作の実戦TIPSなら本を一冊書けるほどありますが、字数の関係で今回はココまで。

今回のポイント

チラシ企画とは「軸」

他社のチラシをリスペクトするからイラレ

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