コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の参十七
Hey! Say! 7ともなるとわかりませんが
グラビア女性のプロフィールでBWHよりも生年月日を先に見るようになりました。今年のミスヤングサンデーの準グランプリの富樫あずささんは西暦1990年生まれ、平成です。後にバブルと呼ばれる時代の生まれに驚くのですが、私も20年近く前に「(大阪)万博の時だろ? つい最近じゃないか」と驚かれたことを思い出します。
今は道交法で禁止されていますが、10年前に自転車に乗りながら携帯電話を使う女子高生を見て笑えたのは、ケータイが自動車(車載)電話から発達したことを知っているからでした。10年前は「写メ」はなく「写ルンです」です。
時代と共に常識は変わりますので、永遠ではありませんが「昭和生まれ」の世代がホームページを作る際の強力な「パートナー」となるのはメモ帳や鉛筆(色鉛筆)といった「筆記用具」です。
自由な線、自由な色
「できない人」や「素人」ほど、ワープロソフトやホームページビルダーなどをやおら立ち上げて、いきなり「本番」に挑もうとします。無謀であり暴挙です。
各種ソフトを手足のごとく使いこなせるのでなければ、企画やデザインはまず「手書き」で行ってください。生まれたときから「一太郎」などのワープロソフトや、お絵かきソフトがあった世代は分かりませんが、浮かんだイメージを即座に「記す」ことができ、自由な線が描けるからです。
ソフトを使うと色々できる錯覚に陥りますが、ソフトの機能を使っているだけでは使われている状態になってしまいます。
整理整頓すれば良いというものではない
携帯電話にPDAと情報端末が進化しても、芸人さんがいまだに手書きの「ネタ帳」を使っているのも同じ理由ではないでしょうか。
メモ帳は開いた瞬間に記すことができ、追記も補足も思うがままです。もちろん、人様に見せられる整頓されたものではありませんが、自分がわかれば良いので問題はありません。
一方、PDAに保存した「情報」は整頓されすぎるのです。
手書き故の線の強弱、赤ペンでいれた補足、資料をセロテープで貼ったりと、メモ書きは混沌としていますが自由です。同様のことをPDAでもできますが整頓されすぎてしまいます。ソフトの規律(フォーマット)に沿って整頓されることで、「完成品」という錯覚が弊害を生み出します。
芸人のネタ帳もホームページの企画も完成品であってはならないのです。
主従関係の本末転倒
ワードなどのワープロソフトを使うと、センタリング(中央揃え)、太文字、図表差し込みなど、完成品のはるか前の設計図以前のものを「仕上げ」ようとします。
企画や下書き、デザインといった構想段階なのにワープロ(などのソフト)の機能を多用してしまい、ついつい完成品に仕上げようとするのです。
本末転倒です。各種ソフトの「装飾機能」は、表現のために付随しているものですが、装飾のためにドキュメントがあるわけではありません。
素人ほど「未完の完成品」に心を捕らわれてしまいます。結果、イメージが固定され、仕上がりを貧相にしてしまいます。
イラストレーターで一覧表作成
イラストレーターやフォトショップは「直感的」とクリエイターを中心に支持されました。
ではこれらを使えば鉛筆はいらないかというと否です。そもそも「絵心」がないと使いこなせず、正しくは「絵心を直感的に表現できるソフト」ということです。
昔の取引先がイラストレーターを使用していました。作っていたのは「一覧表」です。
エクセルなら10分とかからず作れるものを何日もかけていました。これも「手書き」を薦める理由です。
社内だけのプリントして使う一覧表でした。手書きで仕上がりをイメージすれば、イラストレーターで作る必然性がないことがわかります。エクセルで簡単にできる作業をわざわざ難しくする必要はありません。
ところが素人ほど「ソフト」に依存します。高価なソフトなら尚更ありがたがります。
手書きだからこそ残せる道程という舞台裏
各種ソフトは「人間のやること」の延長として開発されました。タイプライターで均一な文字を打ち出したり、ネガを削る写真技師の仕事をフォトショップは容易にしてくれました。
但し、ソフトは人間のやることをフォローはしてくれますが「発想」はしてくれません。
この「発想」を引き出す「自由な線」の為の手書きなのです。
ワープロではゆがんだ「あ」や、力強く書いた「GET!」は記せません。ゆがみ方や「!」の描き方に込められた「言外の思い」を、文章として追記したり「太文字」に装飾してもニュアンスまでは完璧に残せません。
また、書き直しの訂正線をそのまま残せば、「どうしてこのコンテンツが生まれたのか」という立派なコンテンツとなります。いわゆる「メイキング」や「舞台裏」です。萩本欽一さんがどうやって歩いた……走ったかのような。
手書きで想像を喚起する
WebでもDTPでもプロの多くが「手書き」をしています。
私も時事ネタをメモ帳に手書きし、コンテンツを設計する際はB5版のルーズリーフを使っています。時々本人でも判読不可能な汚い字で。描くラフは「あたり」ともいえる簡単なものですが、同じ「円」でも、ソフトで書いた「正確な円」では記録することができない「インスピレーション」がそこにはあります。
考えるという作業は苦痛をともないます。苦痛を和らげるのはメモ帳に描く自由な線と思いつきのままの言葉です。決して飾っていない。
時が流れ「鉛筆」が博物館に入る頃には使えなくなっているかも知れません。
しかし、少なくとも「昭和世代」なら、そして行き詰まったなら、パソコンの電源を落として、メモ帳を開き鉛筆を手に取ってみてください。色鉛筆なら懐かしさも手伝って更に効果的です。
♪今回のポイント
昭和世代なら筆記用具は常に手元に。
ソフトは仕上げるための道具で、発想は手作業が効率的。
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