新人ドメイン管理者は何するの? 社内ウェブ担当の基礎をおさらい
「ドメインとは何か」を簡単におさらいしながら、「ドメイン管理業務」の重要性について紹介します。記事後半では、ワンランク上を目指したい! というウェブ担当者が覚えておくといいサービスも紹介します。
ドメイン管理を手伝って! きっかけは、産休に入る先輩からドメイン管理の引き継ぎを受けたところから。まぁなんとなく「ドメイン」という言葉は耳にして知っていたけれど……。これが管理する側にとなると、話が変わってくるわけで。自分の会社でドメインをどうやって扱っているかを覚えなければ。
インターネット上の住所がドメイン
まずは「ドメイン」をおさらい。そもそもドメインってなんだっけ?
ドメインとは、メールアドレスやURLの「○○.jp」の部分のこと。
たとえば、コニカミノルタのサイトURLでいうと、「http://www.konicaminolta.jp」の「http://www.」を除いた部分、「konicaminolta.jp」がドメイン。メールアドレスだと「○○@konicaminolta.com」の「@」マーク以下の「konicaminolta.com」がドメイン。
- ドメインとは?
- URL : http://www.konicaminolta.jp
メールアドレス : ○○@konicaminolta.com
ドメインの正式名称は「Domain names(ドメイン名)」。これはずばり、「インターネット上の住所」のこと。家の住所と同じで、唯一無二、絶対に重複しないんだ。
実は、各ウェブページにはIPアドレスと呼ばれる、4つに区切られた数値が振り分けられているのね。でも数字の羅列は人間にとっては覚えにくいから、「名前」が与えられているんだって。例として、Web担サイトのドメインとIPアドレスを下に記載したので、どちらを打っても同じページが表示されるか試してみてね。
- ドメインとIPアドレスはインターネット上の住所
- web-tan.forum.impressrd.jp = 202.218.13.218
※現在は、203.183.234.12に変更になっています。
ドメインはトップレベルドメイン/TLD で見分けよう
ドメインといっても、紹介したように「konicaminolta.jp」、「konicaminolta.com」ってたくさん種類があるのね。これらを分類するポイントは、ドメインの末尾にある「TLD(トップレベルドメイン)」と呼ばれるところで「konicaminolta」以下の「.jp」「.com」などがそれにあたるわけ。
ドメインの「konicaminolta」の部分は、会社名やサービス名など、誰でも自由に登録できるんだ。確かに誰でも自由に登録できるんだけど、ドメインは基本的に早いもの勝ちで、すでに登録されているものを、重複して第三者が登録することができないんだ。
- トップレベルドメインとは?
- URL : http://www.konicaminolta.jp
メールアドレス : ○○@konicaminolta.com
トップレベルドメインは、世界共通で利用される分野別ドメインの「gTLD」と、各国や地域ごとに割り当てられたドメインの「ccTLD」の2つに大別されるの。また、最近「新gTLD」というドメインも出てきたんだな。後で詳しく説明するけど、新しくトップレベルドメインを登録することが可能になったんだ。トップレベルドメインの役割を簡単にまとめてみたから確認してみてね。
- TLD(トップレベルドメイン) – Top Level Domain
- ドメインの末尾
- gTLD(ジェネリックトップレベルドメイン) – Generic Top Level Domain
- 世界共通で利用される分野別ドメイン
- 「.com」は「商業組織用」
- 「.net」は「ネットワーク用」
- 「.travel」は「旅行関連業界用」など
- ccTLD(国別コードトップレベルドメイン) – Country Code Top Level Domain
- 各国や地域ごとに割り当てられたドメイン
- 「.jp」は「日本」
- 「.cn」は「中国」
- 「.us」は「アメリカ合衆国」など
- 新gTLD(新ジェネリックトップレベルドメイン) – 新しいGeneric Top Level Domain
- 新しいトップレベルドメインを申請、登録できる
ドメインを取得管理する目的は「ブランド保護」
ドメインがインターネット上の住所ということはわかったけど……。ドメインを管理するってどういうこと? それを業務として行うって一体何をするんだろう?
答えはずばり、ブランド保護。
たとえば、コニカミノルタの社名や製品名を使って、会社と全く関係のない第三者にウェブサイトを自由気ままに作られたとしよう。そのウェブサイトが反社会的なサイトだとか、如何わしいウェブサイトだったとしたら……? コニカミノルタのサイトだと思って訪れたユーザーは、どう思うだろう?
もちろんそれが商標と一致したりだとか、酷似したりしていてれば法的に保護されるから、裁判にもっていけば勝てる可能性は高いかもしれない。しかし、裁判への対応などあらゆるコストを加味すると、リスクマネジメントとして保護しておかなければいけないんだ。
たとえ裁判で勝ったとしても、一度ユーザーの心に映ってしまった悪い印象というものは、なかなか払拭することは難しい。そういったリスクマネジメントも考慮して、ドメインを取得して保護しているんだよね。
過去にはコニカミノルタの社名をもじった類似ドメインから、「コニカミノルタの営業の者」と偽って、第三者に使用されていた事例も。そのときは大事に至る前に対応ができたものの、もしお客様や関係者へ実害が広がっていたら……? 考えるだけでゾッとするわ(((( ;゚Д゚)))
私の所属する部署で取得・保護し、管理しているドメインはなんと数百個。先輩からドサッと渡された、ドメイン管理の資料を目の前に笑顔がひきつる~(^^;)。
取得している数百個のドメイン、実際に使用しているのはほんの一部で、ほとんどが保護目的。ドメインには有効期限があって、登録したドメインを所有し続けるには、一年~数年ごとに更新していかなければいけないの。一つのドメインを更新するのに、およそ数百円~数千円/年かかるし、高いものになると数十万円/年かかるものもあるんだな。
仮にドメインを数百個保護する必要があったとすると、使ってもいないドメインの管理費用に、年間で百万円以上も支払っていることになる。でも、今までに説明したように、ブランドの保護やリスクマネジメントの側面から高い費用を払ってでも、管理する必要があるんだよね。
「素人目には無駄だとも思える数々のドメインを取得しているなんて! その管理費ほかの施策に回した方が効率的じゃない?」と、ドメイン管理の必要性をしっかり理解できていなかったときの、私の頭のなかには「?」がいっぱいだった。
教えてくれた先輩はきっと、このとき「目先のことしか考えられへんのぉ~、まだまだ青い小娘よ」と思っていたに違いない。
数百個を超えるドメインをどのように管理すれば?
ドメイン管理は、リスクマネジメントの観点から大事だ! ってわかったところで、片っ端からドメインを取得・保護し続けることは難しい。だってccTLD(国別トップレベルドメイン)だけで300個ぐらいあるし、保護したい商標の数が増えれば増えるほど取得対象ドメインはどんどん広がる。そう、予算はいくらあっても足りない。だから管理業務をスムーズに進めるために次のようなことをしたんだ。
ドメインガイドラインを作る
先輩と一緒に作ったのが「ドメインガイドライン」。もともとドメインに関する「規定」はあったものの、小難しくて読む気が起こらない(笑)。この規定をものすごく噛み砕いて、自部門の管理範囲と優先度を明確化させたものを作ったの。これのおかげでドメインの取得判断に迷ったとき、いちいち上司に聞かなくても、バシバシさばけるようになったんだ。「誰が、何を、どんな基準で」をはっきりさせておくことで、優先度の低いドメインを不更新にし、コスト削減にもつながったんだ。
連携部署、ベンダー、他社ウェブ担当者との上手なお付き合い
ドメインを管理する上でとてもお世話になる部署が「知的財産部門」、「法務部門」、「情報システム部門」。ドメインは商標、法律、サーバー周りも絡むので、新人ウェブ担だけで解決できない問題がたくさん。各部署の担当者と仲良くなっておくと心強い!
他にも頼りになるのがベンダーさん。当たり前かもしれないけれど、とにかく困ったことがあったら「どうすればいいですか?」と尋ねてアドバイスをいただくの。担当者と良好な関係を結んでおくことで、しょっちゅう変更があるドメインルールを、わかりやすく、自分の会社に適したかたちでアドバイスしてもらえるよ。
それから他社のウェブ担当者さん。私は、セミナーやイベントに行って「こんな悩みを抱えているんですけど、貴社ではどうされていますか?」って事例を聞いたり、上司に頼んで他社のウェブ担当者さんたちとドメイン勉強会を開いたりしたの。同じ業務をしている方々の経験や、悩みを乗り越えた事例は、本当にためになる。自社に使えそうな事例はそっくり真似させていただいたわ。
とにかく、人脈は大事にして、頼れる人に頼ること。「教えて下さい!」って言いやすいのは“新人”の特権。その肩書きがある間に、強力な味方を作っておくと、後々、役立つはず。
※もちろん、これは弊社の運用方法の一例であって、各社いろいろな運用をされています。
ドメイン管理担当になってよかったこと
ドメイン管理担当者にならなければわからなかったこと、良かったことがいくつかあるの。
- 普段関わらない部門の人との関わりができた(IT情報システム、経営戦略、知的財産など)
自分の部門だけで完結しないのがドメイン管理。それ故に社内の人脈が広がったんだよね。これはドメイン管理業務に限らず、さまざまな仕事を円滑に進めるうえで非常にありがたい。ドメイン以外でも何か困ったことがあったときに相談できるパイプができたのは、業務上かなりのプラスになった。
- ドメインだけでなく、ディレクトリ構造、URLとはなんたるか、もわかるようになった
ドメインだけにとどまらず、「ドメインとサーバーの仕組み」、「ドメインとウェブデザイン」など、今まで「ドメイン」「サーバー」「ウェブデザイン」と点で覚えてきた業務が、線になりはじめた。
- ドメインを勉強したことで、ウェブサイトのデザインやユーザビリティの重要性を改めて感じた
たとえば、「○○.com」ドメインが、グローバルサイト用のドメインだ、という企業は多いはず。でもUS(米国)のユーザーが「○○.com」をUSサイトと思い閲覧して、混乱する、ということがある。これは、USが本社でない企業にはありえる話。グローバルサイトドメインの「○○.com」からいかにUSや他の国のサイトへわかりやすく導くか。今まで見えていなかった課題を見つけられるようになったことは大きい。
最初は管理業務って面倒くさそうだなぁ、管理じゃなくて、もっと派手な仕事したいなぁと思っていたけれど、実際覚えてみたら役立つことがたくさん。知っていて損はない。ウェブ担の仕事って、とにかく幅広くウェブ周りがわかっていないと仕事にならないことが多いんだ。だから最初は浅くでもいいから、いろんなウェブ業務をやってみることは、自分の仕事の幅を広げるのにきっと役に立つはず。
※Web担編注 ドメイン名管理業務のなかには、前述のような社内業務に加えて、登録情報の管理もある。
ドメイン名に関する情報はドメイン管理会社に対して登録するものが多く、初期の「登録」のほか、管理担当者が行う「契約更新」「登録担当者や技術連絡担当者の情報を最新の状態に保つ」などのほか、実際には技術担当が行う「DNS登録」といった管理もある。ちなみに、ドメイン管理会社のことは正確には「レジストラ」と呼ぶ。特定のトップレベルドメイン名を管理する「レジストリ」とは異なるので注意。
ドメイン管理会社は国内外に数多くあり、最低限の機能を安価に提供するサービスから、セキュリティ面を含めて手厚いサービスを提供する会社まで幅広い。たとえば日本の.jpドメイン名を取り扱うドメイン管理会社の一覧をJPRSが提供しているので、そうしたところから探すのも手だ。
ワンランク上を目指したい新人ウェブ担当者は覚えておくといい
ここからは、新人ウェブ担当者からワンランク上を目指したい! という方に読んでもらいたいな。前述で詳しく説明しなかった「新gTLD」と管理業務の負担を軽減してくれる有料サービスを2つ紹介するね。「新gTLD」は、すぐにルールが変わるから、アンテナをはっておこう。
トップレベルドメインが膨大に増える? ICANNで承認された新gTLD
ICANN(アイキャン - The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)
英文:https://www.icann.org/
2008年、ICANNというドメインやIPアドレスなどのリソースを管理する団体の理事会で、「TLD(トップレベルドメイン)」をもっと自由化しよう! という案が承認されたの。
それまでの「gTLD(分野別トップレベルドメイン)」はたったの21個(ジェネリック トップレベル ドメイン(gTLD)大幅拡大の利用を承認-ICANN(2008/6/26)より)しかなかったんだって。
新gTLDは申請されているだけで2,000件弱(2012年5月現在)あるんだって。その気になれば「.azusa」なぁんてトップレベルドメインも作れるわけ。まぁ、その気になるには日本円で1,800万、外注すると3,000万も費用がかかるともいわれていて、かなりの初期投資が必要らしんだけどね。
ICANNのウェブサイトには、新gTLDの可能性として「マーケティング機会拡大」とか「(新gTLD保有者の)利益拡大」云々とメリットが紹介されている(英文:http://newgtlds.icann.org/en/about/benefits-risks)。
でも私たちのように商標を保護しなければいけない立場の人間にとっては試練が降ってきた! という感じ。だってどれだけ保護していけばいいのよ?! 範囲は? 予算は? と悩みはつきないのです。
「保護目的」という考え方自体を改めなければいけないのかもしれないな、と思う今日この頃。「このドメイン以外は、うちのウェブサイトではありません」みたいに表記すればいいのかな? 誰か新gTLDの扱い方、答えを持っている方がいらっしゃればぜひご教示下さいませ。
ドメイン管理担当者が知っておくと業務の負担を軽減してくれる有料サービス2つ
TMCH(トレードマーククリアリングハウス - Trademark Clearinghouse)
英文:http://trademark-clearinghouse.com/
これは膨大に増えると予測されるトップレベルドメインに対して、ICANNが商標保護を目的として始めた有料サービス。
- 新gTLDがリリースされるたびに、サンライズ期間(リリース後およそひと月~ふた月)で事前登録した商標権にのみ、優先的に取得権利が与えられる
- 事前登録した商標権をもとに、第三者によってドメインが登録されると、通知が届く
前述したけど、ドメインは基本的に早い者勝ちで、誰でも取得が可能なんだけど、新gTLDがリリースされたとき優先的に取得できるの。たとえば「konicaminolta」という商標をTMCHに登録しておけば、仮にAさんが「『konicminolta.city』を取得したい!」と申請しても、「『konicaminolta』という商標を持っている会社がありますよ」とAさんに伝えてくれるの。
それでも「そんなの関係ねー!」とAさんが登録したとする。そうすると、その商標を「Aさんが『konicaminolta』商標使ってドメイン取得したよ!」という通知が来る。
これに登録しておくことによって、ひとまず自社商標ドメインを優先的に取得できるし、第三者に取得された場合も把握できるんだな。
DPML(ドメインプロテクトマークリスト - Domains Protected Marks List)
英文:http://www.donuts.co/dpml/
Donuts Inc.っていうおいしそうな名前のDonuts(ドーナツ)社に登録されているドメインを全て保護しますよ、っていうサービス。
Donuts社がメジャーな単語で約300件の新gTLDを申請していて、このDPMLに登録しておけばDonuts社保有のgTLDは全て保護してあげますよっていうもの。これに登録しておくことによって、何割かの新gTLDは、自動的に保護される。
ところが、同様のサービスを始めた会社が最近出たようで、このサービスに関してはアンテナを高く張っておく必要がある。
ドメインとはインターネット上の住所である。
TLD(トップレベルドメイン)はgTLD(分野別トップレベルドメイン)およびccTLD(国地域別トップレベルドメイン)の2つに分けられ、新しいトップレベルドメインが登録できる新gTLDがある。
gTLDおよびccTLDは、「使用目的」と「保護目的」で取得をする。
「ドメイン保護」は「ブランド保護」である。
たかがドメイン取得、の裏側には一言では片付けられない知識が必要。よって上司に「自分がんばっていますよ」とアピールをうまくすべし。
知っていて損はない。ウェブ担として成長するためのワンステップ。
コメント
ドメインとIPアドレスの違いについて
ドメインとIPアドレスの違いについて説明している箇所で、実際にそれぞれを打ち込んでみて、
同じ画面が表示されるかどうか見てみよう!っていう場所ですが、実際にどのように打ち込むのか(どの場所でどういう風に打ち込むのか)が記載されていないので試すことができません。教えてください。
このホームページ、ものすごく可愛くて読みやすいです。すばらしい!
コメントありがとうございます
トッシーさん、ありがとうございます。担当編集の四谷です。
実際にどのように打ちこむか?ですが、
ブラウザのロケーションバーに入力して[Enter]キーを押してください。右上辺りにある、URLが表示されている場所です。
そこに、次の数字を打ちこんでみてください。そうすると、Web担のサイトにつながります。
203.183.234.12
ちなみに、Web担のサーバーがシステム変更でIPアドレスが変わってしまったので、記事内の数字を打っても、Web担サイトにはいかないのでご注意を。
少しでも役に立てれば、幸いです。引き続きよろしくお願いいたします。