リンク削除のお願い――その前に考えるべきこと
「SEOで問題が出る前に、リスクのある被リンクを削除したい」そう考えて行動している人に、その準備にとりかかる前に考慮すべき事項をお伝えする。
リンクの削除は慎重を要する仕事であり、うまくやればとても効果的だが、まずくするとかえってマイナスになるおそれがあるのだ。
2012年のペンギンアップデート以降、質のよくないリンクを長年にわたり構築してきたSEO業者や、長年そうしたリンクの恩恵を受けていた企業が、リンク削除の依頼を出し始めた。
これに対して、ウィル・レイノルズ氏をはじめ僕の多くの友人たちは、次のように繰り返し論じてきた。
リンクを削除する行動は、愚かなことだ。
(レイノルズ氏がMozCon 2012で行った「企業の大きな間違い(Real Company Shit)」という講演は有名だ)
Distilledにいたとき、僕はクライアントのリンク削除キャンペーンを監督したこともあり、リンク削除を否定はしない。リンク削除が必要な場面はあるし、本当に悪質なリンク(ポルノ、ピル、ポーカーなど)を大量に切り捨てることでいい結果が生まれるケースも見てきた。
しかし、一方で、リンクを外すには「いいやり方」と「悪いやり方」があるのも事実だと思う。その例を、この記事で挙げていく。
マット・カッツ氏が「リンク目当ての作為的なゲスト投稿には手を染めないように」と警鐘を鳴らしたのは、今年の1月だ。「ゲスト投稿」という百害あって一利もない行為(ここ数年、だれもが目にしてきた、ほとほといやになる風潮だ)を企業にやめさせるためには、道理にかなった提言が求められていると思う。
一例として、カッツ氏がこの宣言を行った次の日に僕が受け取った「ダメなリンク削除依頼」メールをお目にかけたいが、まずは基本的な事項を確認したのちに、解釈へと進むことにしよう。
リンクを削除する理由とは
自サイトへ張られたリンクを削除したくなる理由について、くどくどと批判するつもりはない。この記事の狙いはそこではないからだ。とはいえ、リンクを削除したくなるであろう理由を少し見ておこう。
2008~2010年当時、キーワードに完全一致するアンカーテキストの獲得に精を出していた(そして、自然ではない被リンクの数が増えてしまった)。
ペンギンアップデートが実施されたのが判明したころに(グーグルのアルゴリズム変更の歴史はこちら)、特定のキーワードに関してオーガニックなトラフィックが減少した(あるいは、検索順位が急降下し回復しなかった)。
グーグルがスパム判定の基準をどんどん下げており、そうなってから引っかかりたくないので、見越して対策している。
ちょっと見てもこんな理由があがるが、もちろんこれで全部ではない。もっと詳しくはこちらを参照してほしい。
ゲスト投稿の失敗
ここ数年、古い戦術の効率が低下し(バランスのとれたキャンペーンが伴うならば多くの戦術はまだ有効なのだが)、たくさんの「SEO」企業がリンク獲得の手段としてゲスト投稿に頼るようになった。
多くは効果をあげている。自分たちと関連性のあるオーディエンスを擁し、トラフィックをもたらしてくれ、さらに、リンクをひとつふたつ構築してくれるようなウェブサイトと、非常にいい関係を築いている。ただし、この順序に注目してほしい。まずビジネス上の狙い(顧客とトラフィック)があり、リンクは3番目なのだ。
効果があがっていない企業の多くは、ゲスト投稿を利用してリンクビルディングを「拡大」しようとしてきた。しかし、周知のように、何かを拡大し始めたとき、最初に失われるのは質だ。しかも、上司やクライアントにリンク1件あたりのコストを下げろと迫られれば(コストは質を測る指標にはならないが、費用に目を光らせることは重要だ)、アウトリーチや文章の外注がじつに魅力的に見えてくる。その結果がこれだ。
そして、数週間前にカッツ氏がゲスト投稿に対する警告を発すると、多くの企業がパニックになり、ゲスト投稿のリンクや、キーワードと完全一致するアンカーテキストなどを削除し始めた。僕に言わせると、これは次のようにいろいろな意味で馬鹿げている。
品質の高いウェブサイトでコンテンツを執筆したら、リンクという形でクレジットが欲しいと思うのは当然だ。グーグルなんか気にすることはない。
リンクの削除を依頼して、相手が快くアンカーテキスト付きのリンクを削除してくれたら、ブランド名のリンクまで削除するよう求めるなんてことはせず、ただ感謝を表そう。
グーグルの標的は、不正操作を意図した作為的な投稿だけだ。コンテンツが欲しいばかりに質の悪い書き手を受け入れてきたのなら、サイトが否認されても当然だろう。
リンク削除の自動化
僕は、マーケティングにおける「自動化」は、それが有効な施策ならば、支持する。データの収集や、サイト内リンクによってコンテンツに着目させるスマートなアルゴリズムなどといったものは、どれも自動化が可能であり、自動化すべきものだ。
リンク削除について論じる場合も、こちらのページにリンクを張っていて影響があったサイトについて、最初のデータ収集を自動化することにはなんの異論もない。
しかし、自動化はそこまでだ。
というのも、機械は決して人間の目にはおよばないからだ。削除するのは、オーソリティ(あくまでもSEOの観点から見たドメイン名やページのオーソリティ)が低いサイトからのリンクだけでない。リンク獲得のためだけにリンクを設置してしまった関連性の低いサイトからのリンクも削除しよう。
リンク削除依頼の連絡は、人の手で行わなければならない。こんなことは、まともなSEO担当者なら、リンクの削除を依頼するべきページの収集を自動化したとたんにわかることだ。
ここで、リンク削除を依頼してきた、あるサイト(名は伏せる)から送られてきたメールを紹介しよう。彼らは不正リンクに対するペナルティによって悪影響を受けているようだと感じ、SEMrushのツールでもそのことが示されているという。
ウェブサイトオーナーさま
当サイト××はこれまで、貴サイトからのリンクを通じてトラフィックをいただいてきました。しかし残念なことに、当サイトは現在、グーグルによる手動ペナルティやペンギンアップデートのあおりを受けたのか、トラフィックが大幅に減少しております。
考えますに、これらのリンクによって当サイトに悪影響がもたらされているおそれがあります。つきましては、貴ドメインから××に張られたすべてのリンクを削除していただけますようお願いします。ページのURLを以下に挙げますが、これに限らず他のURLについてもご配慮ください。
(URLのリストが並べられている)
今後は××へのリンクの追加を行わず、また、××へのリンクの削除が済みましたら、返信メールか以下のリンクからお知らせいただければ幸いです。
なお、現在当方がグーグルによって不正リンクのペナルティを受けている点にご留意ください。これらのリンクを削除するか、あるいは少なくとも「nofollow」を付加していただかないと、当サイトへのリンクがもとで貴サイトがペナルティを受けることもあり得ます。リンク削除は、当方のみならず貴サイトの利益でもあると存じます。
ここでの問題は、見ての通り、「このページからのリンクを削除してほしい」と示されたURLの多くが、アーカイブページやカテゴリーページである点だ。リンクがあるのは実際のゲスト投稿だけなのに、こんな長々としたリストを相手が送ってきたのは、Open Site ExplorerやMajestic SEOの出力をそのまま使ったからに違いない。
(ちなみに僕は、親切にも、キーワードに完全一致するアンカーテキストだけを削除し、ブランド名のリンクは残してあげた)
他に自動化が可能な部分は、リンクがまだ生きているかどうかの検証だ。そのうえで、リンクをどうするべきかは人が判断する。リンクがまだ生きているかについては、多くの削除ツールで確かめることができる。あるいは、ページのリストをScrapeBoxにアップロードし、そこで確認することもできる。
リンクの検証が単調な作業なのはわかっている(職業柄、リンクの善し悪しの検証のために何万件ものリンクを見てきた)。それでも人間の判断を加えることが長期的には利益になると、僕は確信する。
自分のサイトが否認されたらどうなるのか
次のような質問を何度か耳にした。
しかし、リンクを削除しないとこちらのサイトが否認されるのでは?
否認されるとサイトにマイナスなのでは?
これについて調べた人はまだだれもいない。サイトが否認されたかどうかを知りようがないというのが大きな理由だ。
サイトが不正なリンクに使われているかどうかの判別にあたって、グーグルはアルゴリズムを部分的に使っている可能性があると思わざるを得ない。しかし、否認ファイルが有効になったと思えるまでにかかる時間からみて、否認リストは人間の目で確認されており、否認をされていても不正ではないと判断されれば、サイトはホワイトリストに入れられるだろうと僕は考えている。
だから、僕は自分のサイトが否認されることについては気にしていない。過去に疑わしい仕事をやったことがあるなら、それをきれいにするまでのことだ。あなたのサイトがクリーンならば、そのままでいい。
結論
この記事を、リンクを削除したり、準備にとりかかったりする前に考慮すべき事項の参考にしてもらいたい。
リンクの削除は慎重を要する仕事であり、うまくやればとても効果的だが、まずくするとかえってマイナスになるおそれがある。気をつけて進めてほしい。
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