とらや赤坂本店休業のメッセージが感動的すぎた。これぞ商人
今日は、とらや赤坂本店が今週をもってリニューアルのために休業することを伝えるメッセージにみたリアル商売の強みと、ネットが同様のことを実現するためにどうするべきかについて。
社会人ならば、お詫び訪問の際に一度は買っていったことがあるだろう、とらやの羊羹。その赤坂本店が、10月7日でリニューアルのために3年間休業することをしらせるメッセージが、とらやのWebサイトに掲載されました。
そのメッセージが感動的なのです。まずは、読んでみてください。
以下に引用していますが、こうすると元のページでの表示と違い、どうも印象が違うので、ぜひオリジナルページで。
3日と空けずにご来店くださり、きまってお汁粉を召し上がる男性のお客様。
毎朝お母さまとご一緒に小形羊羹を1つお買い求めくださっていた、当時幼稚園生でいらしたお客様。ある時おひとりでお見えになったので、心配になった店員が外へ出てみると、お母さまがこっそり隠れて見守っていらっしゃったということもありました。
車椅子でご来店くださっていた、100歳になられる女性のお客様。入院生活に入られてからはご家族が生菓子や干菓子をお買い求めくださいました。お食事ができなくなられてからも、弊社の干菓子をくずしながらお召し上がりになったと伺っています。
このようにお客様とともに過ごさせて頂いた時間をここに書き尽くすことは到底できませんが、おひとりおひとりのお姿は、強く私たちの心に焼き付いています。
来店されるお客さまをただ見るだけでなく、その人がどんな人なのか、どんな気持ちで買い物をしているのか、ちゃんと把握して覚えているあたりは、さすが商人、さすが販売業というところ。
おそらく、普段の店舗でも、そうしたコミュニケーションをされているのでしょう。
私は落語を聴くのが好きで、そこに描かれる昔ながらの商人(あきんど)の姿が好きなのですが、まさにそうした「金儲けだけではない商売」が、とらやにはあるんですね。
デジタルでは、こんなおもてなしはできないのか?
さて、こうしたことはリアルの強みであり、Webやデジタルではとうてい実現できないことなのでしょうか。
まったく同じことはできないですが、「お客さま一人ひとりを知り、把握し、応対する」ことは可能なはずです。
ECサイトならば、何を考えて売り場に来たのかは、検索ワードなどから知ることもできます。
どの人がどれぐらいの頻度で何を買っているのかは、デジタルのほうが把握しやすいかもしれません。目立たない人でも記録には残っていますからね。
アカウント名やクレジットカード名義と、購買したもののギャップから、家族のためにお父さんがネットで買い物をしている姿を想像することもできます。
何かを買う前に、どんな商品を眺めていたのかも、把握できます。
もちろん、こうしたことをデータで把握してコミュニケーションに活かすには、それなりのデータ収集と管理の仕組みが必要ですが、本当に良いカスタマーエクスペリエンスを実現するには、そうした仕組みが必要なんですね。
では、システム投資をしなければお客さまのことは把握できないのかというと、そうではありません。
私は毎年父の日には鯖寿司を贈っているのですが、父が毎年喜んでいることを購入時のメッセージで伝えるようにしていますし、お店の方からはそれに対する返信もあります。これは、購入フォームに通信欄があり、お店の人がその内容をちゃんと読んで対応しているからできるコミュニケーションですよね。
Web担はオンラインメディアですが、オフラインでイベントをする際などには、読者の方と直接話し、フィードバックを得ています。熱心にWeb担をみてくださっている方がどんな記事をなぜ気に入っているのか、アクセス解析データではわからない「キモチ」が見えてきます。
デジタルで“おもてなし”を実現するには、システムが大切です。でも、システムだけあっても、本当のおもてなしはできません。ビジネスに携わる人が、常にお客さまのことを考えていなければ、そのシステムの価値は最大限には発揮できないでしょう。
そういう意味でも、とらや赤坂本店の休業をおしらせするメッセージからみえる商人(あきんど)の心に学ぶべきことは大きいのではないでしょうか。
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