メルマガはタイミングが命。それは10年後のWeb担にも求められる心得
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
コラム筆者、宮脇さん原作のWebマンガ「Web担当者 三ノ宮純二」が電子書籍になりました。
マンガでわかる! 「Web担当者」の基本 Web担当者・三ノ宮純二
心得其の428
残念な午後8時
ブブブ、ブブブ、ブブブ。毎晩、午後8時になると私のガラケーは揺れ、メールの到着を知らせます。近所の食品スーパーからの「メルマガ」です。「会員特典として玉子L玉48円」のお誘いは、さすがに魅力的ではありましたが、実に残念で仕方がありません。
いまから10年ほど前、「携帯メール会員」なるものが流行りました。要するに「携帯電話向けメルマガ(ケータイメルマガ)」ですが、DMやチラシと比較してはるかに安価で、リアルタイムに配信可能になったのです。また、常に「携帯」している携帯電話への配信は、お客に直接届くと喧伝され、猫も杓子もどころか、「葬儀社」までもが会員募集をしていました。
Web業界的にメルマガが下火になった理由は、個人情報保護法の施行によってメールアドレスを集めにくくなり、なによりSNSの台頭で「時代遅れ」になったといったところでしょうか。しかし、本当の理由はまったく別にあるというのが私の見立て。その理由こそが、10年後のWeb担に不可欠な心得で、食品スーパーでいえば「午後8時」です。
広告の真実
とても重要なことなので、Web担当者は必ず暗記してください。
求める人にとっての広告は重要な情報源
その情報を欲している人にとっては、「電柱広告」でさえも貴重な情報源になります。広告は決して押しつけられ、嫌われるだけのものではないのです。興味の対象である「検索キーワード」に連動する、リスティング広告の販促効果が高いのも同じ理由です。
ならばメルマガはお客自らが求めた「情報源」のはず。どうして廃れてしまったのでしょうか。
いつでも届くが故の迷惑
最大の理由は「メルマガのスパム化」です。同じ店から1日に何通も届き、1つのメルマガに登録すると、なぜか身に覚えのないメルマガも届くことは珍しくありませんでした。違法なアドレスの売買だけでなく、利用規程の中にメールアドレスの貸し出し許可を求めるものがあったのです。外出先にまで届く「ケータイメルマガ」の迷惑度合いは、パソコン版の比ではありません。必然として解約が続き、そこにSNSが台頭し、
これからはSNSマーケティングだ
と叫ばれ、急速に姿を消していきました。
スパムは論外としても、そもそも論で「ケータイメルマガ」には欠けている視点がありました。それが「午後8時」です。
客が求めるタイミング
一般的な家庭にとって、午後8時は食事中か、すでに食後の時間です(本稿の読者からすれば「仕事中だよ!」と毒づきたくもなるでしょうが)。このとき、
いなばライトフレークツナ缶 298円→198円
というメルマガが届いて心躍る会員がどれだけいるでしょうか。あるいは、共働きや単身者が、地元駅に到着するのが午後8時だとして、このスーパーの閉店時間は、そもそも午後7時30分。メールが届いたときには、すでに閉店しています。つまり「タイミングが悪い」のです。
ケータイメルマガブームの当時も同じような状況でした。早朝に居酒屋から飲み放題の案内が届き、ティータイムにレストランから翌日の日替わりランチが紹介されたように、「お客が求める時間(タイミング)」で配信されていなかったのです。
その理由は「店の都合」。メルマガの作成は「空き時間」に取り組むことが多く、書くだけで精魂疲れ果て、タイミングにまで気が回らなかったのです。
朝は戦争という世代
「メルマガの配信は午前4時が良い!」といった、一般論としての正解はありません。なぜなら、客層は地域と店のコンセプトで異なり、客層が異なれば生活のリズムが異なるからです。高齢者になると、日用品の買い物でも朝早くから出かけますが、子育て世帯の朝は戦争で、早朝から買い物に行く余裕などなく、共働きや単身世帯は夜型に近いサイクルで生活している傾向が見られます。
理想的には客を「セグメント化(区分け)」して、それぞれに適切と思われる時間に配信すべきですが、現実とのバランスのなかで見つけた「妥協点」が正解のタイミングとなります。
TwitterでもLINEでも同じこと
「いまどきメルマガ? それもケータイ?」
と笑うでしょうか。しかし、メルマガをTwitterに置き換えても同じこと。閉店後に明日の特売をツイートすることは無駄ではありませんが、多くの客が買い物に出かける時間帯を狙った方が効果的だということです。もちろんLINEでも同じ。なにより、現代のスマホの「日常生活密着率」は、ガラケー全盛期の時代を超えています。つまり「タイミング」がより重要になっているということです。
ランチを提供する飲食店なら昼食前にツイートし、居酒屋なら夕方5時前には「今日のオススメ」を、写真とともにFacebookにアップロードします。
ちなみに、私が冒頭の食品スーパーのWeb担当者なら、同じ8時でも「朝」を選択することでしょう。この店の来店ピークは朝9時半の「開店直後」であり、開店前に行列ができるスーパーだからです。その多数に揃えるのがもっとも効率的な「妥協点(チョイス)」です。
Webとリアルの垣根はない
モノを売る現場では「タイミング」がなにより大切。ジャック・オー・ランタンのデコレーションは10月末のハロウィンに、サンタクロースのコスプレがクリスマスに売上のピークを迎えるのも「タイミング」です。そこにWebとリアルの垣根はありません。そして、これこそがWeb担の漫画シリーズの先陣を切った「Web担当者 三ノ宮純二」において、営業マンの「剛田主任」を登場させた理由です。
本サイトの功績も手伝い、当時Web担当者という職種が認知される一方、専業のWebしかしたことがないWeb担当者が増えていると耳にしました。しかし、商売の種(ヒント)は常に「現場」にあり、「タイミング」はその一例です。「Web」を中心にしか考えない主人公「三ノ宮」と、「客」を軸に発想する剛田との対比が狙いだったのです。
そしてなんと、その珠玉の名作が電子書籍になりました。まさに読書の秋を彩る名作の復活! と自画自賛しながら、発売は先週の水曜日と、タイミングを見誤っていました。
今回のポイント
ツールは変わっても本質は同じ
タイミングの大切さは10年後も変わらない
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