いちばんやさしいデジタルマーケティングの教本(全11回)

デジタルでもマーケティングの本質は「売上と利益」を作ること。「売上の仕組み」を再確認する #2

デジタルの世界でもマーケティングの本質は変わりません。そのマーケティングの本質を再確認します(第2回)。
いちばんやさしいデジタルマーケティングの教本

この記事は、書籍『いちばんやさしいデジタルマーケティングの教本』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開しているものです。

デジタル化によって、マーケティングの考え方も何かデジタル流に変わるのでしょうか。実は、基本は変わりません。マーケティングの目的は、「売上と利益を作ること」「売れる仕組みを作ること」であり、デジタルの世界でも本質は変わることはないのです。

Chaper 1 デジタルとマーケティングの関係を改めて整理しよう
Lesson 04 [マーケティングの目的]
デジタル時代でも、マーケティングの目的は「売上と利益」を作ること

○マーケティングの目的は、最終的に「売上と利益」を作ること

現在、マーケティングの概念はとても広くなっており、企業が行う営利活動以外にも、国や地域の組織、非営利団体などの活動に対して使われています。それゆえ「マーケティング」の定義も非常に複雑になってきています。

一方、「現代マーケティングの父」と呼ばれるフィリップ・コトラー氏は、マーケティングを最も短い言葉で定義すれば「ニーズに応えて利益を上げること」だと、非常にシンプルに述べています。本書も同様に、「マーケティング」の定義にはさまざまなものがあることを理解しつつ、シンプルに「売上と利益」を作っていくものとして捉えています。

また「売上と利益」といっても、企業主体による営業・販促活動といった側面からの売上や、コスト削減による利益の確保をテーマにしているのではありません。本書では、コトラー氏の「(消費者の)ニーズに応える」という視点に着目しながら、消費者の価値観や消費行動の理解を通じて、売上と利益を作っていく施策を考えていきます。

マーケティングを最も短い言葉で定義すれば

「ニーズに応えて利益を上げること」

となろう。

 ──フィリップ・コトラー、ケビン・レーン・ケラー『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント(第12版)』(丸善出版)

▶コトラーによる「マーケティング」の定義 図表04-1

「消費者のニーズに応える」マーケティングについて学ぶのが、本書のテーマでもあります。

○売上は単価×量で決まる

では、売上はどうやって作られているのかを考えてみましょう。売上を分解してみると“売上=単価×量”という非常に単純な式で表すことができます。そうすると、売上を拡大していくためには量が一定であれば単価(1個あたりの価格)を上げていくしかありませんし、単価が一定であれば量を増やしていくしかありません。

▶売上の構成要素 図表04-2

○単価を上げていく方法は「価値を認めてもらう」こと

では、単価を上げていくにはどうすればいいかを考えてみましょう。企業が「この商品はこの価格である」と価格設定をしても、消費者が「その価値はない」と判断してしまえば購入されることはありません。

では、商品の価値とは何でしょうか。商品の価値は、商品そのものの素材や仕様や機能・デザインといった企業が個別に開発・改良によって提供できる部分と、ブランドやイメージなどの消費者の内面に生まれてくるものに分けられます。

前者は、企業側の商品の企画開発工程や材料の仕入れなどから設定されます。一方、後者については消費者が受け取る商品情報や企業情報、過去の体験や記憶、人からの伝聞などから醸成されます。

商品の価値は自然発生的に生まれるものもありますが、企業としては消費者に対して積極的に自社の商品の特徴や優位性を伝え、利便性やメリットを伝えながらこの両方の価値を認めてもらう必要があります。

▶単価を上げていく方法 図表04-3
価値のあるものは単価が高くなる。所有する価値があると考えれば、高いものでも人は好んで買おうとする。

○量を増やしていく方法は3つに分けられる

一方、量を増やしていくためにはどうすればいいでしょうか。大きく「客数」「個数」「頻度」に分けて考えられます。

もし、顧客が一人だけならば売上は限定的なので、常に顧客の数を増やしていかなくてはいけません。しかし、新しい顧客が来て購入したとしても、一回しか購入しないのであればやはり売上は上がりません。

継続的に売上を上げていくためには、常に新しい顧客をひきつけ、さらに使い続ける理由をきちんと理解してもらうことが必要です。さらには、購入量や購入回数を増やしてもらうような提案や商品開発なども必要になってくるでしょう。

▶量を増やしていく方法とは 図表04-4

○売上の構成要素を分解すると4つに分けられる

以上のように、量を3つの要素に分けることができるため、売上の構成要素はすなわち、「単価」「客数」「個数」「頻度」の4つとなります。

そしてそれぞれが売上に影響しあいます。例えば単純に単価を上げただけでは客数が減るかもしれませんが、何倍もの単価が付けられるブランド力があれば逆に売上は増えていくかもしれません。一方、単価を下げれば売上は下がりますが、個数が増える可能性があります。

そして、この4つの要素の基本前提に加えて、実際に売上を上げるには流通や配荷など消費者が「買うことができる」環境づくりなど、複数の要因が絡み合っていることも覚えておきましょう。

▶売上に関わる4つの要素 図表04-5

○セールスでなく、マーケティングを行う重要性

「売上を上げていく」と考えると、「商品を売ること(セールス、販売)」を真っ先に考える人も多いかもしれません。では、セールスとマーケティングはどこが違うのでしょうか。

セールスとは顧客に対して商品を提示し、さまざまなアプローチを行いながら最終的に売買契約を締結することです。セールスの場合も、顧客のニーズを把握し、商品の特徴やメリットを的確に伝えながら、顧客の理解と満足を得ていく必要があります。

しかし、顧客に対してセールスのアプローチを常に続けるのではなく、顧客のほうから自ら進んで購入するような「売れる仕組み」を作ることができれば、長期的により大きな売上を作ることができます。

マーケティングの世界で巨匠と呼ばれるドラッカー教授は『マネジメント【エッセンシャル版】』(ダイヤモンド社)の中で、「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである」と述べています。

売上に関わる要素は多岐にわたります。商品そのものの魅力はもちろんのこと、ブランドの知名度、広告、商品のネーミング、パッケージデザインなども売上に関わる要素です。マーケティングはその要素を分解して再構成し「売れる仕組み」を作っていくことでもあるのです。

▶マーケティングとセールスの領域 図表04-6

デジタルマーケティングとは、デジタルデバイスを通じた消費者への情報提供、コミュニケーション、取得したデータの活用など、デジタルならではの特性を生かしながら「売れる仕組み」を作っていくことです。

  • 著者:田村 修
  • 発行:株式会社インプレス
  • ISBN:9784295002307
  • 価格:1,980円+税

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