知らないうちに御社がスパム広告を出しているかも? 日本で急増する「強制リダイレクト広告」の話
「強制リダイレクト広告」という言葉にピンとくる人はどれくらいいるだろうか?
国内で急増している強制リダイレクト広告。広告主と媒体社それぞれにサービスを提供しているマイクロアドが、その対応を開始したという。
強制リダイレクト広告とは一体どんなもので、広告主側は何に気を付ければいいのだろうか。マイクロアドの中野伸飛氏に話を聞いた。
広告主は「信頼できるパートナー」をあらためて選定するべきです。オンライン広告はどんどん複雑化していて、介在する企業も増えている。「自社の広告がどういう経路でユーザーのもとに届いているのか」、いったん把握したほうがいいでしょう(中野氏)
強制リダイレクト広告は、2016年末から国内で急増
――まずはマイクロアドについて教えてください。
中野伸飛氏(以下、中野)マイクロアドはマーケティングを成功に導くためのプラットフォームを提供しています。具体的には、広告主向けのDSP「MicroAd BLADE」、媒体社向けのSSP「MicroAd COMPASS」、そしてデータを軸としたマーケティング基盤を構築する「UNIVERSE」などがあります。私はそれらのサービスを全般的に見ています。
――「強制リダイレクト広告」ってどんなものなのでしょうか?
中野名前のとおり、ユーザーがクリックやタップをしていないのに強制的にランディングページに移動してしまうような広告です。これはユーザーにとって明らかに迷惑ですし、「あのサイトを見たら知らないページに飛ばされた」となるので、広告を掲載する媒体社の印象も悪くなります。
今回はSSP「COMPASS」で、そうした悪質な広告を事前に検知する取り組みを始めました。
――具体的にはどんなケースがあるのでしょうか。
中野多いのは、ゲームなどアプリのインストール画面に飛ばすものですね。スマートフォンでページを見ていたら、突然iTunes StoreやGoogle Playといったアプリストアの画面が表示された経験はありませんか? 仕組み上、iOSよりもAndroidのほうが多いのですが、2016年の末くらいから国内で急増しました。それで広告を掲載している媒体社から複数の問い合わせをいただき、対策に取り組んだという経緯です。
理由は「数字が上がるから」。広告主が気付いていない場合も!?
――強制リダイレクト広告は、どんな仕組みで、誰が行っているのでしょうか。
中野基本的にはDSPやアドネットワーク経由で配信される広告のスクリプトに仕込まれているのですが、その中でもさまざまなパターンがありそうです。誰が迷惑行為を行っているかでいうと、大きくいえば「広告主側」です。とはいえ、広告主自身が「ユーザーに嫌われることをしよう」と思っているわけはないですから、広告を出稿するまでのどこかのフェーズで強制リダイレクトの仕組みが加えられていると考えられます。
――広告主が、そんな迷惑広告を出していることに気付いていない場合もある?
中野可能性はあります。今のオンライン広告はとても仕組みが複雑で、実際に広告が配信されるまでに代理店、第三者配信サーバー、アドネットワークなど複数の企業をまたがります。でもユーザーにはそんなことは関係ないわけですから、「このサイトを見ていたら変なアプリのインストール画面に飛ばされた」と、媒体社へのクレームになるわけです。
――それは誰も得をしませんよね……。強制リダイレクト広告を仕掛ける人の目的は何なのでしょうか。
中野妥当に考えると「数字が上がるから」ですね。強制リダイレクト広告を出すことで、たとえばアプリのインストール数などのKPIが上がって見えるという恩恵があるのでしょう。広告需要期に大きな予算を配信するためなのか、2017年の11月からまた増えてきています。
自動で配信されて瞬時にリダイレクトされるので、目で見て原因を特定するのは難しいんですね。そうすると媒体社側としては、広告の売り上げがマイナスになるとしても、広告の自動取引の仕組みをかなりシンプル化して自衛しなければならなくなる。弊社はもともと「クリーンな広告主をメディアに届ける」というポリシーを持っています。それに真っ向から反するので、対策が必要なのです。
――対策とは、具体的にはどんなことを行っているのでしょうか。
中野最終的には不正を根絶することが目的ですが、いくつかステップがあって、まずは検知することから始めています。「検知して、パターン化して、必要なものと不要なもの(悪いもの)の挙動を見分けて、停止する」という仕組みです。イタチごっこなので100%の対応は技術的に難しいのですが、100%に近づける努力をしています。
こうした技術的な対策の一方で、強制リダイレクトを行っている業者の対策も進めています。犯人探しということではないのですが、同じ業者がくり返しているケースもあるんですね。技術的な面と、そうしたブラックリストの両方で対策をしていきます。
広告主は「信頼できるパートナー」をあらためて選定するべき
――Web担の読者の多くは、広告主側の立場にいる人です。広告主として、気を付けることはありますか?
中野すごくざっくりと言うと「信頼できるパートナーをちゃんと見極める」ことです。オンライン広告はどんどん複雑化していて、介在する企業の数も増えています。今回のような不正は、こうした複雑化のなかで起きていることです。
「パートナーを疑え」と言いたいわけではありません。ただ、もし窓口である代理店にすべて任せているのなら、「自社の広告施策がどういう経路でユーザーのもとに届いているのか」をいったん把握したほうがいいでしょう。もしかしたら「表面上のKPIでだまされている」なんてことがあるかもしれません。
オンライン広告の複雑化は今後も続いていきます。こうしたトラブルを防ぐためには、やはり信頼できるパートナーと組むしかありません。われわれもクリーンな広告のために力を尽くしますので、広告主の皆さんも「2017年末に実際に起きていること」という意識を持って、一度自社の広告施策の全体像を見直してみることをおすすめします。
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