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デジマ女子が語る他部署連携のコツとは? カギは「客観性のあるデータ」と「相手への配慮」

施策の優先順位付けと他部署連携のコツとは? 4社の女性デジタルマーケターが実務での本音トークを繰り広げた。

さまざまな業界で“デジマ女子”はどのように活躍しているのだろうか? ブレインパッドが開催したユーザー会「Rtoaster User Graph 2018」のスペシャルパネルセッションでは、「業種の違うデジマ女子による座談会 ~実務に役立つ本音トーク~」と題し、4社の女性デジタルマーケターが本音トークを繰り広げた。

TSIホールディングスの安藤彩子氏、プレミアムウォーターの奥村藍氏、日本旅行の原井川寿美氏、エノテカの宇佐彩子氏がパネリストとして、ディスカッションを行った。モデレーターはブレインパッドの近藤嘉恒氏。アパレル、食品系商社、旅行業、小売業という異なる業種で、“デジマ女子”たちはどのようにマーケティング実務を行っているのだろうか。

ディスカッションでは、施策の優先順位はデータを基軸に客観性を交えた判断が重要で、他部署との連携では、コミュニケーションを欠かさずに相手に配慮することがポイントだと語られた。

4社の女性デジタルマーケターがパネリストとして登壇した
4社の女性デジタルマーケターがパネリストとして登壇した

各社のデジタルマーケティングの課題

近藤氏は、マーケティング実務を行うために、Rtoasterをどのように使っているのかを聞いていきたいと話す。また、ブレインパッドが代表理事を務めるデータサイエンティスト協会では、「データサイエンティスト女子部」が立ち上がっており、連携して“デジマ女子”を盛り上げていきたいという。

まず、各社のデジタルマーケティングの取り組みと課題が説明された。

日本旅行では、2016年からクーポン施策を行っており、ポップアップの管理にRtoasterを活用している。リピーター獲得のための施策としては有効だが、新規顧客を獲得するのが困難だと原井川氏は説明する。高額なクーポンを発行しても会員になってくれない一方、既存顧客は少額のクーポンでも商品を購入してくれるという状況で、どのようにすれば新規顧客を獲得できるかが課題となっているという。Webの閲覧履歴などのマーケティングに必要な情報が集まっていない新規顧客に対して、どのように最適化されたアプローチを行うかが難題だ。

日本旅行 原井川 寿美氏
日本旅行 原井川 寿美氏

プレミアムウォーターの奥村氏は、デジタルによるコスト削減に取り組んでおり、キャンセル数やコールセンターの入電数の削減やアプリのトラッキングを行うためにRtoasterやMAを活用しているという。「デジタルをWebマーケティングに使う」のではなく、「コールセンターや営業に効果が出るように事業に直結した使い方でデジタルを活用する」という、他社とは違った使い方だ。

プレミアムウォーター 奥村 藍氏
プレミアムウォーター 奥村 藍氏

エノテカでは、2016年からRtoasterを使っており、商品ベースのレコメンドはできるようになったが、今後はユーザーベースのレコメンドが課題となっているという。嗜好性の高いワインが商材であり、サイト内検索されるあこがれのワインと実際に購入されるワインにギャップがあることにも、試行錯誤しているところだ。

エノテカ 宇佐 彩子氏
エノテカ 宇佐 彩子氏

TSIホールディングスの安藤氏は、前職のアパレル系企業でRtoasterを使っていたが、現在はまだ導入していないという。B2C(対消費者)の部分のみならず、B2B(対事業会社)の視点もしっかりと見ていかなければならないと感じていると安藤氏は話す。

TSIホールディングス 安藤 彩子氏
TSIホールディングス 安藤 彩子氏

お題その1: 施策の優先順位の付け方はどうしている?

続くパネルディスカッションは、2つのテーマで行われた。1つ目のテーマは、「施策の優先順位の付け方」だ。パネリストの発言を抜粋してお伝えする。

1つ目のお題は「施策の優先順位ってどのようにつけてますか?」
1つ目のお題は「施策の優先順位ってどのようにつけてますか?」

奥村何か行動やプロジェクトを始めるためには、経営層の合意が必要となる。コストがかかるもの、影響範囲が広いもの、経営課題に直結しているものなどを優先させており、シナリオにもランクを付けている。

原井川販売数やリピーター率などの重要KPIを達成するための施策を優先する。季節トレンドに合わせたり、プレミアムフライデーや九州復興割など国策に合わせたプロモーションを展開し、販売インパクトのあるものを逃さないようにしている。基本的には、サイト運営や広告担当などの部署の主要メンバーが話し合って優先順位を決めている。

宇佐コンテンツを制作する企画チームが予算を持っているが、CTRが高い商品のバナーを目立たせようとするときに、企画チームが売りたい商品とのギャップが生まれることがある。その場合は、企画チームに納得してもらえるように資料を作り、数字で効果を見せて話し合うことで優先順位を決めている。

安藤前職で私は、CRMやデジタルマーケティングの現場でアクションする側だった。重要度の高いものからやっていきたいものの、緊急度が高かったり、結果がすぐ出たりするものを着手しがちになる傾向が現場にはあると思う。今は、事業側の経営計画のボトルネックなどを解決するためのグループ内コンサルティングなどを行っているが、立場が変わって客観的に見られるようになると、優先順位も異なって見えてきたように感じている。

こうした話に対して近藤氏は「マーケターは自社の商品やブランドが大好きだから、優先順位に主観が入りがちとなるのでは?」と指摘する。

安藤好きであればあるほど、定性的に主観で判断しがちなのは仕方がない傾向だと思う。しかし定量的にデータで判断して客観的に見るという考えも取り入れ、どちらにも偏らずに決断していくことが重要だ。

女性のデジタルマーケター4名が語り合った
お題その1のまとめ

データを基軸にアウトプットを出し、客観性を持って判断する。意思決定のリファレンスをどのように出すかがポイント。

お題その2: チームビルディングやデジタルマーケ部と他部署との付き合い方はどうしてる?

2つ目のテーマは、「チームビルディングで心がけていること」だ。このお題では他部署とのコミュニケーションにも話が及んだ。

2つ目のお題は「チームビルディングで心がけてる事ありますか?」
2つ目のお題は「チームビルディングで心がけてる事ありますか?」

奥村なるべく話し合ってお互いの利害関係をはっきりさせるようにしている。また、従来はメルマガを発行するたびにシステム部に依頼してデータを抽出する必要があったが、もう1つ別の基盤を入れることでお互いの作業が楽になると交渉しながら新たな基盤の導入を進めていった。

原井川長い歴史を持つ旅行会社なので、店頭のパンフレットが主力の販促物となっており、販売ボリュームもインターネットより店舗のほうが大きい。Webと店舗はこれまで、夏休みシーズンや学生向けなどの主要なプロモーションでしか共同で施策を行ってこなかったが、最近は来店計測なども行い、O2Oを心がけ、できるだけデジタル上で施策の結果を見えるようすることで、顧客の取り合いではなく店舗もWebも売り上げを上げられることを理解してもらうようにしている。

宇佐リテール戦略室という部署を作り、ECの部長が室長を兼務しているが、店舗があってこそのインターネット。店舗があることでお客さまに信頼していただき、Webに訪問していただいている。今はバナーやSNSを使って店舗のイベントへの送客に力を入れており、イベントを取材した記事などでWeb側のコンテンツも充実させようとしている。

奥村現職では、グループ内に事業会社が複数ある。「ホールディングスが上から指示してきたと」いった受け取られ方は避けなければならないので、われわれも同じグループの仲間だと思ってもらえるように心がけている。上司からは「北風と太陽でいえば、太陽にならなければならない」と言われており、ホールディングスと事業会社で立場は違っても、同じマーケティングに取り組む1つのチームになれるようにしたいと考えている。

会場の様子
お題その2のまとめ

自分がやりたいことやミッションはぶらさずに、相手のベネフィットや利点などをコミュニケーションで伝え、相手に配慮することがポイント。

◇◇◇

最後に近藤氏は「バージョンアップしたRtoasterに対する要望」についてパネリストに聞いた。

原井川旅行商品はプランが多く、機械学習にも限界があると感じているが、将来は、画像分析APIの機能が使えるようになって、商品イメージ画像でレコメンドができるようになればいいと思う。

宇佐今後は、商品レコメンドだけでなく、企画のレコメンドをやっていきたいと考えているので、今後もさまざまな提案をしてほしい。

奥村4月にサイトリニューアルを計画しているので、Rtoasterにはもっともっと活躍してもらって、さまざまな機能を活用していこうと考えている。

安藤TSIホールディングスでは、まだRtoasterを使ってないが、活用を検討できるとよいと思う。

業界ごとに事情は異なるものの、他部署との交渉に必要なのは「客観的なデータ」と「相手への配慮」だ。施策によって、ときには経営層を説得しなければならないこともあるだろう。一方的に主観と主張を押しつけるのではなく、相手の立場に立ってメリットを伝える必要があるのだ。

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