「The Best Mobile Experience;最高のモバイル体験の作り方」
Googleとアクセンチュア インタラクティブの共同調査から得られた知見をもとに、モバイルUXがいかにビジネス価値をもたらすのか? 企業やブランドはモバイルUXにどう向き合うべきか? という問いに答えた本セッション。
まず、冒頭は、普段アクセンチュア インタラクティブにて、企業のビジネス変革をサポートしている浦辺より、今回の主題の背景となる我々を取り巻く現在の環境について語られました。
サービスが生活者中心になった結果、モバイルはさらに重要度を増している
「さまざまなIoTソリューションが登場し、新たなサービスが次々に生まれている今、サービスの概念が変わってきている」と述べた上で、「これまではサービスに生活者が合わせてきたが、これからはサービスが生活者を取り囲み、寄り添う形で作られていく時代。つまり、サービスやビジネスが生活者中心に、再定義・再構築されていっている」と、大きな変革期にいることを示しました。
よって、長らく言われてきた“モバイルはこれからの時代に欠かせない”という言葉の意味合いも変わってきているとし、「以前は、1チャネルとして重要視されていたモバイルだが、今はサービスの中心、サービスそのものである」とモバイルの重要度が格段に上がっていることを強調。
モバイルを通じてビジネスのパフォーマンスを倍増するという視点である。そのキーとなるものこそがモバイルUXであり、アクセンチュア インタラクティブが支援したGoogle社の調査プロジェクトから見えてきたファインディングスがある」として、神谷氏にバトンを渡しました。
ベンチマークを作るため、大規模なモバイルUX調査を実施
まず、Googleレンズの認識スピードや、Googleフォトのユーザビリティを紹介した上で、「53%の生活者はモバイルサイトの読込みに3秒以上かかると離脱する」「54%の生活者が使い勝手の悪いモバイルサイトを去り、使いやすい別のサイトに行く」といった調査データから「モバイル体験を重視しないブランドは生活者を失い続けるリスクを冒している」とモバイルUXの重要性を改めて示しました。
“重要性は理解するが、どこまで予算投資すべきか分からない”という相談が多いことから、ベンチマークの必要性を感じ、大規模な調査を行った」とのこと。
【調査の概要】
- アジア15ヶ国・700サイトで実施。
- 日本国内では200以上のモバイルサイトが対象。
- グーグル独自のUXベストプラクティスガイドラインを使い、約80の検証項目を設定。
- 80の検証項目を、“目的へのたどりつきやすさ”・“商品の訴求”・“購入応募のしやすさ”・“モバイルならではの使いやすさ”・“ページの表示スピード”という5分類でスコアリング。
調査から見えてきた主な3つのファインディングスとは?
.モバイルUXとモバイルコンバージョンに強い相関がある。
UXスコアとモバイルコンバージョンの間に強い相関があり、モバイルスコアが高かったサイトは低かったサイトに比べ、コンバージョン率が2倍であったというデータを紹介。「一つひとつの細かいUXの積み重ねが、総体としてビジネスに2倍のインパクトがある」と、このデータの重要性を説きました。
.日本は、アジア各国に比べてスピードの課題がある。
日本はアジア諸国に比べ、スピードに関するスコアがかなり低いことが分かった。
G環境が整っているため、課題意識が低い傾向があるが、交通機関や人混みといったモバイルが頻繁に使われるシーンではまだまだ通信環境がよくない。今回の調査で、日本のモバイルサイトはコンテンツの圧縮やキャッシュ ことが明らかになった」と解説。
.企業間でモバイルUXレベルの差が拡大している。
ベストなUX提供ができている企業とそうでない企業の差が拡大していること。
UX向上を進めるにあたり非常に重要になるデータが次々と紹介されたこのパートでは、聴講者がスライドを撮影する音が会場になり続けていたのが印象的でした。
企業はモバイルUXどうアクションしていくべきか?
神谷氏は大きく「モバイルUXのベンチマーク」「モダンウェブ」という2つのステップで取り組むべきと説明しました。
UXスコアを活用し、高いスコアを示しているベンチマークとの差を明らかにし改善すること。
「これまで複数社とベンチマークを活用した改善プロジェクトを行ってきたが、実際に自社とベンチマークとの差が数値化された際の反応は2パターンある。“全然できていなかった......。” というネガティブな反応と、改善余地をポジティブに捉えてすぐアクションに繋げられる企業。ぜひ後者のようにギャップを “のびしろ”として捉えて改善を進めていただきたい」と神谷氏。 14%アップという大幅な成果を出したバイトル(アルバイト情報検索サイト)の事例を紹介し、「仕事を探すことはとても大変なので、速度改善によってその負担をできるだけ軽減したい」というUX担当者の話を挙げ、「ユーザー視点に立てるカルチャーもこの取り組みには大切」と話しました。
UXのベンチマークに関するデータや改善に関するナレッジ、ツールはすでにGoogleのサイトで公開されていることを紹介し、ナレッジの積極的な活用と具体的なアクションを促しました。
公開されているデータ&ナレッジ
- Masterful Mobile Web UXのベンチマーク指標と世界のTOPクラスのUX事例をアーカイブ
- Test my site モバイルサイトの速度診断サイト。改善レポートの自動生成&改善での収益インパクトを試算
- Think with google サイトスピード改善により応募率が 14%向上したバイトルの事例などを掲載
次に、モダンウェブといわれる、Googleが推奨するAMP(Accelerated Mobile Pages)やPWA(Progressive Web Apps)といった技術を紹介。「アプリと比べ、モバイルサイトの短所であった“速度”や“使い勝手”がAMPやPWAを活用することで払拭できるようになってきた」と神谷氏。
- AMP (Accelerated Mobile Pages)
- PWA (Progressive Web Apps) UXを提供できるウェブ技術
機械学習は優れたUXのもとに効果が最大化されるので、この2つのステップの後に取り組むべき」とステップの重要性をあらためて主張しました。
<なぜGoogleがこんな取り組みをしているのか?> という理由について、神谷氏は「サービス提供企業や制作者を支援することで、モバイルUXが向上し、エンドユーザーの体験がよりよいものになる、企業の利益もアップする、そんなエコシステムをサポートしたい」と本プロジェクトの背景を伝えました。
モバイルUX最大化を阻む壁 “分かってはいるけど進まない問題”
ひとつはできそうな改善に思えるのに、なぜか進んでいない」という現実的な問題について、改善を進めるには、組織や経営として向き合うことが必要になると主張しました。
。」「環境投資を伴うので自部門だけで進められないが、誰がその予算を確保するのか?」といったさまざまな障壁が存在することは目にしてきているとし、「その障壁を超えるヒントが、ベストなUXが実現できていた企業へのヒアリングから見えてきた」と明かしました。
KPI化されており、きちんと専任の責任者がいる。さらに部門を越えた連携もとれている。つまり、彼らはモバイルUX改善を経営マターとして取り組んでいる」と語り、神谷氏のパートで述べられた改善を進めていくためには、一過性ではなく長い時間軸で考え、組織の構造をつくり、カルチャーを根付かせていくことが不可欠であるとの考えを強調しました。
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