SNS無知な上司「Twitterフォロワー数1万人獲得しろ」、この無茶振りをどうさばく?
読者から寄せられた仕事の悩みをウェブパンが代わって解決するパン! 記念すべき第1回の今月は、SNSで根拠のない数字目標を掲げられて困っている人からの悩みを解決するパン!
読者からのお悩みを解決するパン!
読者のお悩み
見切り発車で「Twitterのフォロワー10,000人!」「業界No.1のYouTubeチャンネルにする!」と、根拠のない数値目標を掲げられて困っています。目的があってのSNSではなく、目的がSNSになってしまっております。手法ではなく、目的の立て方、上層部・組織のリテラシーの低い時の合意の仕方、体制作りのポイントを知りたいです。(ペンネーム:ちなつ)
ちなつさん、お便りありがとうパン! ソーシャルメディアコンサルタントの田村憲孝さんに相談してみるパン!
ウェブパン、いらっしゃい! 私がそのお悩みを解決しましょう。
SNSのお悩みあるある
SNS運用が大事なのはわかっているけど、会社から「Twitterのフォロワー10,000人!」「業界No.1のYouTubeチャンネルにする!」など根拠のない数値目標を掲げられたら困るパン……。一体どうすればいいんパン?
さらに困るのが「それらの目標を達成したあと、どうすればよいのか」がまったく見えないことです。
企業の中でSNSを運用するなら、おっしゃるとおりSNSを運用すること自体が目的になってはいけません。まず目的があり、それを達成するためにSNSを活用するべきです。現状の企業の状態によっては、時にはSNSを利用しないという判断もあってしかるべきです。「それを求めるならSNSよりもいい選択肢がある」ケースだってありえますから。
SNSを活用するとなった場合にも上層部のリテラシーが低いと、SNSの特性や運用目的を決めることの重要性を理解してもらうのも大変です。
田村さんもこんな経験あるパン?
私も企業や自治体のSNS運用を10年以上サポートしてきましたが、同じようなケースに数え切れないほど遭遇しました……。残念ながら上層部の理解を得られずSNS運用自体をストップしたこともあります。
手を変え品を変え、あらゆる手段で説得を試みましたが、説明して理解してもらって実行に移す正攻法では、極めて困難なケースがほとんどです。
そこでまず、担当者として正しく運用目的を設定し、次に上層部にどう伝えるかを考えていきましょう。
ステップ1 運用目的を設定しよう
まず、運営しているSNSアカウントが
- どういう状況になれば、あなたの企業のメリットになるのか
- 担当者であるあなたの評価につながるのか
を考えてください。
「何がメリットや評価につながるのか?」と聞かれてもイメージが難しいパン……。
よくある運用目的は、次の4つです。
- 認知度拡大
商品や企業名そのものを、とにかく多くの人に知ってもらう。 - ユーザーとのコミュニケーション
リアルな場以外で日常的にユーザーとコミュニケーションを図り親密度を高めたおきたい。 - 自社サイトに誘導したい
詳細な情報を掲載している自社サイトへユーザーを誘導する。 - 売上や集客
直接ビジネスにつながる成果を求める。
だいたいこの4つの選択肢におさまります。どれかひとつを選択するのではなく、複数の目的を設定するケースもあります。
ステップ2 目標値を設定しよう
目的を決めたらそれに対応する目標値を設定します。チェックすべき指標は、次を参考にしてくださいね。
- 認知度拡大が目的の場合
- 閲覧数
- 言及数
- ユーザーとのコミュニケーションが目的の場合
- エンゲージメント数
- コメント数
- 自社サイトへの誘導が目的の場合
- クリック数
目的によってチェックすべき指標は異なるんだパンね! とはいえ、数値はどれぐらいに設定したらよいのか迷うパン……。
もし「100がいいのか10000がいいのか検討がつかない」という状況なら、まずは見るべき指標だけ決めて数値は定めずに運用を始めてください。1~2か月と運用していると、解析データで各指標のレベルが把握できるようになります。その数値を確認してから、現実的な目標値を決定してください。
すでにアカウントを運用されている場合でも過去2~3か月の数値を確認し、その150%程度の数値に設定すると良いでしょう。
なるほど、それならわかりやすいパン! でも運用目的が「売上や集客」の場合は、どうすればいいパン?
「来店や売上」が運用目的の場合は、よっぽどセンスのある方が運用するか広告を利用しない限り、飛躍的な効果を求めるのは難しいです。
認知度を拡大したりコミュニケーションを深めたりすることによって、売上や来店の遠因となることはあります。しかし、さまざまなノウハウがネット上には乱立していますが、万人に共通する再現可能な方法を私は見たことがありません。
他のメディアで実施するのと同様に、SNSのタイムラインやフィードを広告の「面」として割り切って活用することも検討してください。
直接的に売上げをあげたいなら、SNS広告に出稿を検討するといいんだパンね! ちなみにフォロワー数を目標値に設定するのはどうなんだパン?
もちろん、フォロワー数は少ないよりは多いほうが絶対に良いです!
しかし、「フォロワー数」を目標値に設定するのは、おすすめできません。なぜならフォロワー数をメインの目標値にしてしまうと、フォロワー数を獲得するための施策に注力することになり、本来の目的である「認知」「交流」「サイト誘導」などを軽視してしまうようになります。
そして最後には「フォロワーは増えたけど、結局ビジネスに貢献しているのか?」という問題が浮上します。
フォロワー数を目標値として設定するなら、あくまでサブ目標とし、メインの目的を常に忘れないように運用することが必要です!
ステップ3 上層部を説得しよう
SNSの運用目的と目標値の設定が決まったパン! 今度は上層部への理解を促すにはどうすればいいパン?
説得するべき相手が、プライベートでSNS※を利用している方なら悩む必要はありません。
ご自身で普段からSNSを利用している方は、SNSの特性について一定の理解があります。運用目的と目標値を伝えれば会話は成立するはずです。細部をすりあわせたうえでアクションにつなげてください。
たしかに実際にSNSを使っている人なら、運用が簡単ではないことをわかってもらえそうパン!
問題は「自分はあまりSNSに馴染みがないが、必要性だけはなんとなく感じている方」への説明です。
私も、担当者さまからご依頼をいただき、このような上長に説明する場に同席したことが何度もあるのですが、これは非常に困難です……。
積極的に理解をしようとしてくれる方ならまだ良いのですが、SNSの本質を理解しないまま「とにかく結果を出して!」という方も結構いらっしゃいます。
田村さんもなかなか大変な経験をしているパンね……。
何件もこのような場を経験していると、理解度が低い方にも効果がある論点をひとつ発見しました。
それは「フォロワー数」や「チャンネル登録数」です! 言及数やエンゲージメントなどの概念を時間をかけて話すより、フォロワー数は明確で理解してもらいやすくなります。
同業他社などのフォロワー数を提示し、それらの数値を参考に自社のフォロワー数目標値を提示します。そして「たくさんの人に情報を届けられる媒体に育てます」と付け加えます。これで大体いけます。
え、でも「フォロワー数を目標値にするのはすすめない」って、さっき言ったパンよね?
そのとおりです。ここで上層部に報告するフォロワー数は、SNS運用担当者や運用チームにとってはサブ目標であり、あくまで上層部への説明用の目標です。メインの目的や目標値は運用担当者側で別途設定しておいてください。
そして「認知拡大」などメインの目的は運用チームの懐に置きつつ、まずはフォロー&RTキャンペーンや広告などを実施して、フォロワー数の確保に邁進してください。
上層部に伝えたフォロワー数の目標値を上回るよう運用できれば「ウチのSNS運用チームはよくやっとる」という評価になります。評価が良くなれば本当に運用チームがやりたい施策も協力が得られるようになります。SNS運用チームの社内での発言力も向上します。
上層部をうまく転がしているパン! とにかくフォロワー数を増やすなら、キャンペーンや広告を活用しない手はないパン!
正攻法で対峙するのではなく、まずは安定的にSNSを運用できる状態をつくってみてください。遠回りのようですが実は近道となるのです!
ちなつさん、お悩み解決できたかな?
「Web担当者Forum」では今後も読者のお悩みを解決するために頑張るパン!
撮影:永友ヒロミ
2020年より田村氏が代表を務める「SNSマネージャー養成講座」では、資格試験をスタートしました。SNSマネージャーの上位資格である上級講座では、実際に運用しているアカウントをサンプルにして、徹底的に運用目的とKPIなどの必要項目を掘り下げて企画書を作成するワークを実施しています。
この記事を読んで「理屈はわかったけど、実際自社のアカウントに当てはめるとピンと来ない。さてどうしたものか……」とお悩みのあなた。ぜひチャレンジを。
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