新進気鋭のベンチャー企業が集結した「Infinity Ventures Summit 2008 Spring」
2008年6月、新進気鋭のベンチャー企業が集まるイベント「Infinity Ventures Summit 2008 Spring」が北海道で開催された。少し遅くなってしまったが、会場の様子をレポート形式でお届けする。
会場参加者の顔ぶれは、今ホットなネット企業の創業者、CEO、経営幹部らが一斉に集まったという様相。主要なテーマとしては、
- オンライン動画コミュニティビジネス
- モバイルインターネット
- 次世代ウェブベンチャー企業
- 広告技術の展望
- オープンプラットフォーム戦略
などについて、熱い議論が交わされた。今回は、欧米・アジア各国からの参加も増え、国際色豊かな中、モバイル広告市場のグローバル動向や、世界の企業家によるフリートークなども行われた。
動画共有サービスとユーザー参加型コミュニティビジネスの融合
「オンライン動画コミュニティビジネスの展望」と題されたセッションでは、動画共有で先を行くYouTubeに対抗し、日米でどのような新しい切り口の動画共有サービスが登場しているかについて紹介された。
米国からは、ベトナム系創業者が設立した動画共有サービス「Crunchyroll」が紹介された。サービスの特徴について、YouTubeは幅広い分野をカバーしているのに対し、Crunchyrollはよりニッチな分野に特化し差別化しているのだという。中でも非常に成功しているのが世界中に熱狂的なファンの多いアニメ関連だ。同社サイトでは、アニメコンテンツに対し、ユーザーが勝手に他言語の字幕をつけて投稿してくれるため、日本国内など一国に限定されていたアニメコンテンツが、コストをかけずに、世界中の人々が楽しめるという。
また、チャット連携機能など、さまざまなコミュニティ機能を提供し、ユーザー基盤の構築強化に努めている。コンテンツの権利処理については、最初からコンテンツホルダーと協力して事業を進めていきたいとの姿勢を示した。同社のユニークな点としては、ビジネスモデルが、ユーザーからの寄付金を募る形でスタートしたことだ。
続いて日本からは、ニワンゴのニコニコ動画が紹介された。
ニコニコ動画は、動画のマンガ的読み方を演出し、ユーザー同士の一体感を醸成してきた。ユーザー数は、無料会員登録者数700万人、有料会員登録者数19万5千人、モバイル会員登録者数162万人で、平均利用時間はYouTubeの3倍以上と、大きな成長を示してきた。
動画共有サービスは、一人勝ちと目されるYouTubeでも苦戦を強いられているのに対して、ニコニコ動画は比較的に収益化も進んでいる。同社サイトでは、動画を提供すると同時に、たとえばその動画内の登場人物が飲んでいたミネラルウォーターが、そのすぐ下の画面上で販売されていたりする。こうした様子は、海外からの参加者の関心も高いようだった。
次世代広告配信の姿を伺わせるおもしろいサービス技術の数々
「Infinity Ventures Summit 2008」では、次世代の広告配信の姿を伺わせるおもしろいサービス技術が複数見受けられた。
特に、新興企業が新たな事業アイデアをほんの数分で次々にプレゼンテーションしていく「ランチパッド」では、ジェイマジックが画像連動型広告プラットフォーム「Adphoto」で注目を集め、審査委員から1位に選ばれた。同社は、ケータイで写真を撮って送信すると、誰に似ているか判断してくれるサービス「顔ちぇき」で知られる。今回初公開した「Adphoto」は、脱キーワード検索を狙い画像のマッチングを活用した広告配信サービスだ。
Albertという会社は、同様に画像関連で、イーコマースや広告分野での活用に有効な自動画像解析エンジン「SUDACHI」(すだち)を紹介した。SUDACHIは、ECサービス向けに感性検索やレコメンドエンジンとして使えるコア技術で、ワールドビジネスサテライトでも取り上げられたことがある
エスキュービズムという会社は、直感型3次元コンテンツ検索エンジン「Cloud Map」(クラウドマップ)を紹介した。Cloud Mapでは、コンテンツの人気度を視覚化して3次元で表現。検索にはタグを利用し、使い勝手を向上している。今後はポータルと組むなどし、事業を拡大していきたいとした。
その他、Web担当者にとっておもしろそうに見えたサービスとしては、人工知能技術を活用して行動ターゲティングを行うマイクロアド社の広告配信サービスや、シリウステクノロジーズ社の位置連動型広告配信サービス「AdLocal」などが見受けられた。シリウステクノロジーズ社は、位置情報に連動した広告配信の方が広告効果が高い様子を、下記のようなデータで示した。
日本のネット企業によるAPI公開やオープンプラットフォーム化
「オープンプラットフォーム戦略」と題されたセッションでは、独自性をもって構築したデータベースをコアにしたウェブサービスの重要性や、日本のネット企業の間でもAPI公開の動きを高める必要性などについて議論された。
この中で、各種商品や価格情報を多数蓄積するECナビの宇佐美氏は、前職からデータ管理をいかにすべきか苦心してきたことについて触れた。そして、類似サービスが乱立するネットの世界で、「差別化できるのは独自性あるデータベースしかない
」と、データベースメディアの重要性を説いた。
同じく商品価格情報を豊富に蓄積するカカクコムの安田氏は、同社サービスの1つ「食べログ」を例に、ユーザーが投稿した情報だけでなく、店舗側にも情報提供に協力してもらい、レストランのメニュー情報を構築しようとしていることについて触れた。こうして収集されたデータをもとに構築したデータベースは、付加価値あるコンテンツとして発信できるなどのメリットがある。また、同社サイトでは、登録ユーザーの半分はオープンIDが使われるようになってきていると言及し、ユーザーIDのオープン化についても語られた。
一方で、ユーザー履歴に関するデータベースは非常に貴重だが、取り扱い方には注意が必要であり、どのようにマネタイズに使えるかは工夫が必要という意見も聞かれた。
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