3万人のクリエイターによるスピード感と自由な発想――クリーク・アンド・リバー社
株式会社クリーク・アンド・リバー社
3万人のクリエイターがもたらすスピード感と
ウェブ制作の枠に捕らわれない自由な発想
クリーク・アンド・リバー社は、3万人を超えるクリエイターと、約1000社に及ぶパートナープロダクションを抱えるクリエイターエージェンシーだ。膨大なクリエイターネットワークから、クライアントの要望に合わせてクリエイターを組織編成し、さまざまなクリエイティブを縦横無尽に掛け合わせてプロジェクトを進行させる。人材派遣を行う傍ら、自らが制作を請ける機会も増えているという近年では、運用チームを構築してクライアントと共にサイトを育てることも行っている。「クリエイターの生涯価値の最大化」「クライアントの価値創造への貢献」を2大ミッションとする同社ならではの強みを伺った。
クリーク・アンド・リバー社の概要や実績はこちらを参照。
取材・文:吉村正春(ドラゴンフィールド株式会社)
卓越したヒアリング能力で最適なクリエイティブを見極める
クリーク・アンド・リバー社(以下C&R社)は、映像業界のクリエイターエージェンシーとしてスタートした会社だ。現在では映像のみならず、ウェブ、広告・出版、ゲーム、モバイルとジャンルを広げており、クリエイターネットワークに登録されている人材は3万人を超える。そのうち、ウェブ系の制作に携わる人材は約5000人で、映像や出版などを絡めたクロスメディア案件にも対応している。C&R社では、案件に応じて制作請負や最適な人材のアサインを行うというが、これだけの人材を有するC&R社では、どのようにクリエイティブを提案しているのだろうか。
「C&R社はクリエイティブに特化した営業主体の会社ですので、営業力を活かしたヒアリング能力には自信があります。基本的には、まずエージェントがヒアリングをしてクライアントが何を望んでいるのかをしっかりと引き出し、その問題解決のために我々が持つネットワークを最大限に活かして、最適な体制を作って提供します。そして、ヒアリングの結果、クライアントの課題解決に最適なクリエイターを、スキルや得意分野を考慮して選出します。選出したクリエイターのスケジュールを確認し、最終的にコスト面が折り合えば正式にそのクリエイターに仕事を依頼するといった形です。依頼内容によっては、その分野を得意とするクリエイターと一緒にヒアリングすることもあります。
クライアントの要望によってはクリエイターをクライアントに派遣することもありますし、常駐しない場合ではC&R社が稼動をコントロールしてフリーのクリエイターに携わってもらうこともあります。
スピード感を求められている状態でお声がけいただくことも多いので、最初のヒアリングからアサインまで1日かけないケースが大半です」(池尻氏)
C&R社の強みの1つは、この卓越したヒアリング能力だ。実際、受注する案件は、当初の相談内容とその後の成果物が異なる場合も多いという。
クライアントのWeb担当者は、業務の一環としてサイト運営に携わることが多く、視野が狭くなっていることも少なくない。そのため業務範囲を逸脱しないように仕事を依頼することとなり、結果としてクライアントが成すべき本質的な問題や課題の解決に至っていないことがある。
そのために、担当者の悩みを丁寧に拾っていくと同時に、「サーバー運用はどうなっていますか」「システムはどうされていますか」「会員データはきちんと管理されていますか」と専門的な領域からアプローチしていくことで、C&R社がしっかりとサイト全体のことを考えていることを理解してもらうことが重要だという。
「サイトのリニューアルを考えていても、リニューアル後の運用は切り離して考えているケースがあります。しかし、ウェブサイトで重要なのは立ち上げ後の運用ですので、そういった場合には運用を考えたリニューアルを提案することもあります。このようにクライアントの抱える課題の本質を解決して、より良いクリエイティブを提供することが我々の仕事であると考えています。
たとえば、簡単にサイトを更新したい、とクライアントが漠然とCMSを希望していたとしても、安易にCMSを導入することはせずに運用体制と担当者のスキルを十分理解することから始めます。いくら高機能なCMSを導入したところで、担当者が使いこなせなかったら意味がありませんし、それだったらコンテンツの拡充やネット広告への出稿など、別のところに予算をかけましょうと提案することもあります」(渥美氏)
3万人のクリエイターが支える磐石のバックアップ体制
ウェブサイトの制作は、紆余曲折を経て完成に至るケースがほとんどである。急遽スケジュールが変更されたり、クライアントから追加要望が発生したりといった突発的な対応は避けられない。
もちろん、そういった事態に陥らないためにも初期段階から要件定義と設計はしっかりと行うべきなのだが、それでもイレギュラーな事態は発生する。しかし、一般的な制作会社だと自分達が抱えているリソース以上の問題が突発的に起きたときに、スピード感を持って対処することは難しい。
「たとえばサイト制作の過程で、急遽コピーライティングや撮影が必要になるケースも当然起こりますが、C&R社ならばプロジェクトの進行にともなって発生する突発的なオーダーにも対応できます。クリエイティブと呼ばれる分野に3万人のクリエイターと約1000社のプロダクションネットワークを保有していますので、どのようなオーダーであれスピード感を持って対応することが可能です。
特に最近は、クロスメディアとしてCMとウェブを連動させる必要があったり、リッチコンテンツ系のコンテンツの制作が必要だったりと、映像や音楽といった要素がウェブサイト制作に求められる機会が増えてきました」(池尻氏)
C&R社が誇るクリエイター層の厚みが遺憾なく発揮された例として、ヨガ・ピラティススタジオ「ドゥミルネサンス」の案件があげられるだろう。C&R社は、ヨガスタジオのオープンに合わせてその店舗情報サイトの依頼を請け、ディレクター、デザイナー、コーダーから成るチームを編成した。
このとき担当した女性ディレクターはヨギー(ヨガ愛好家)だったために、初回の打ち合わせからクライアントと意気投合したということだ。また女性がメインターゲットということで、C&R社はサイトにおけるブランド訴求に強いデザイナーをアサインした。
ヨギーのウェブディレクターにブランド訴求に秀でたデザイナーという組み合わせが実現したのも、登録クリエイター3万人という豊富な人材がなせる業であろう。
また、C&R社に持ち込まれる案件は比較的タイトスケジュールの案件が多く、駆け込み寺的に一縷の望みを託して同社を訪れるケースもあるという。
「A社に1か月で300ページのサイトを作ってくれ、というのはスケジュール的に難しい話ですが、A社、B社、C社、と複数のプロダクションに作業を振り分けて、我々でクオリティと進行のコントロールをすれば、タイトなスケジュールでもこなすことができます。もちろんスケジュールに余裕があることが望ましいのですが、我々のネットワークを活かすことで、タイトなスケジュールをスムーズにこなせるのも強みですね」(渥美氏)
スタートは信頼関係の構築から課題を引き出しニーズに応える
C&R社では、トップページからすべての制作を丸ごと請けるケースもあれば、サイトの一部を手がけることも多いという。しかし、そこからヒアリングを繰り返していく内に本質的な悩みに辿り着くことが少なくないという。
フィリップスの医療関係者向け情報サイトも、コンテンツ制作のために取材とライティング要員をアサインしてほしい、ということから始まったが、「現在ウェブを担当している制作会社のクオリティに不満がある」「運用体制に不安がある」などの悩みを担当者が抱えていることがわかり、「それだったらウェブ運用のチームを導入しませんか」とC&R社が提案し、サイトリニューアルにつながったという。
「私達がリニューアルを手がけることになったのですが、まずは情報の精査をすることから始まりました。さらにヒアリングを進めていくと、リニューアル後のサイト運用のほか、ウェブマーケティングへの取り組みや、販促ツール(印刷物)に関しても課題を抱えていることがわかりましたので、クライアントの要望に応えられるようにウェブ制作チーム、取材・ライティングチーム、販促チームとプロジェクトを組織しました。
そもそもクライアントの担当者は、ウェブの専門家ではありませんので、専門的な制作ディレクションは難しいですし、制作会社に対しての明確な指示出しにも不慣れです。そこで、C&R社がコントロールする形で、ウェブ制作プロダクション、システム開発会社、サーバーホスティング会社、メールマガジン配信ASP会社をアサインしました。
プロダクションでも得意不得意がありますので、今回は医療系に強い外資系の制作プロダクションをアサインしました。医療関係のサイトは、色や画像の使い方にも独特なルールが存在する業界なので、やはりそれに強いプロダクションをアサインする必要がありました」(渥美氏)
クライアントと共にサイトを育てるアウトソーシング業務
C&R社では、運用案件チームのアウトソーシング業務も手がけている。この場合、クライアントはウェブにおける目的意識をはっきりと持っていることがほとんどで、サイトを永続的に運用するためのリソースを提供することになる。
クライアント内に運用チーム自体を派遣することもあるし、今までの運用体制がうまく機能していないとすれば、こういうチームに切り替えたらどうですか、という提案も行う。あくまでもクライアントと一緒に媒体を育てていくスタンスを貫いている。
こうした運用ニーズが生まれた背景には、企業サイトのメディア化にともない、ウェブサイトの更新スピードが上がっていることがあげられる。今やスピード感を持ってサイト運用にあたらなければ、ウェブビジネスにおけるチャンスロスは避けられない。
更新作業にスピードを求められる場合には外注ではなく更新の仕組み自体を内制化する必要が出てくる。そういう場合は制作の前段階であるコンサルティングから行うこともあるとグループマネージャーの宮下氏は語る。
「特にECサイトなどの運用では、クリエイティブの領域を超えて経営判断を求められることも多くなってきています。ユーザーを集める、売り上げをあげる、といった課題を解決するためにデザインを変更するといった小手先の対策だけではなく、実際に商品が売れたらどう運用するのか? お客様とのコミュニケーションのあり方はどうあるべきなのか? とフロントからバックエンドまでを統括する必要があります。場合によっては、社内の業務フローを変えて一緒に構築していくこともあるので、コンサルティングができる人を立てることもあります。こういった提案も含めて、さまざまな業種の人材を束ねていけるところはC&R社ならではの強みですね」
メディアの枠に囚われない柔軟な提案ができる強み
通常の制作会社であれば、自らの強みが活きる形でクライアントの課題を解決しようとする。つまりクライアントの課題と自分達の得意領域の間に落としどころを見つけるのである。これは至極当然のことであるし、クライアント自身が制作会社の特性を把握していれば、これほど心強い関係性はないだろう。ただしその一方で制作会社の特性を正しく掴んでいないと、期待はずれの結果に終わる恐れもある。
ところがC&R社は、制作会社としての枠に囚われない提案が可能だ。これは、単に制作会社としてではなく(社内に制作チームを抱えてこそいるが)、クリエイターエージェンシーである同社ならではの特性だ。だからこそクライアントの課題に対して、制作会社としての枠に捕らわれないニュートラルな発想で最適解を出すことができるとも言える。
ウェブサイトをどうしたらいいのか、何をやったらいいのかわからないといった、通常の制作会社であれば門前払いされることもあるような曖昧模糊とした相談でさえ、C&R社はその長けたヒアリング能力でなにかしらの答を導き出してくれるだろう。
その結果、「むしろウェブサイトを作るより、別のクリエイティブを考えましょう」という答えも出てくるかもしれないが、C&R社がそう判断を下したのであれば、それは的を射た意見である可能性が高い。何しろ、3万人のクリエイターを束ねているのである。毎週のように新たなサイトを手がけているというC&R社の、クリエイティブのトレンドを大局から見極める目は確かだ。その目を信じて身を任せてみるのもいいだろう。
項目 | 料金 | 備考 |
---|---|---|
企画/ディレクション | 50万円~300万円 | 案件の規模により変動。ウェブに限らず、プロモーションなど幅広く対応。 |
トップページデザイン | 10万円~ | |
第二階層テンプレートデザイン | 5万円~ | |
素材制作(写真、アイコンなど) | 3,000円~ | |
HTMLコーディング | 1万5,000円/1ページ~ | |
更新作業 | 5,000円~ | |
レンタルサーバー選定・導入 | 別途見積もり | 共用・専用、各種レンタルサーバー会社、ハードウェア仕様によって変動。 |
CMS | 導入製品による | 簡易なものであればスクラッチで構築も可能。 |
SNS/ブログ | 200万円/20万円~ | ブログの場合は20万円から。 |
Flash | 5万円~ | 簡単なアニメーションであれば5万円前後から。 |
パンフレット・チラシ・ポスター制作 | 50万円~300万円 | 取材・ライティング、撮影、グラフィックから印刷まで幅広く対応可能。 |
ノベルティ制作 | 50万円~300万円 |
株式会社クリーク・アンド・リバー社
http://www.cri.co.jp/
- 所在地 ● 東京都千代田区麹町
- 設立 ● 1990年3月20日
- 資本金 ● 10億3204万円
- 代表取締役社長 ● 井川幸広
- 社員数 ● 200名
[社内スタッフ]
社員のうち125名があらゆるコンテンツ制作に関する最適な提案を行うエージェント職。ウェブ制作に関しては、約20名のプロジェクトマネージャーが在籍。
[社外スタッフ]
3万人以上のクリエイターと約1000社のパートナーとのネットワークを保有。ウェブ制作系のクリエイターは約5000人。 - 事業内容 ●
3万人を超えるクリエイターと、約1000社のプロダクションネットワークを有し、ウェブ、映像、広告・出版、ゲーム、モバイルなどのコンテンツプロデュース及び人材派遣を展開する。ウェブサイト制作は、企画・制作から運営、制作請負からクリエイターの派遣まで、ネットワークを駆使してニーズに合わせた柔軟な対応と提案を行う。ウェブに限らず、国内外のクリエイターネットワークを活用した、あらゆる分野のクリエイティブを提案を行っており、ウェブ、紙媒体、テレビCMなどと連携したクロスメディア展開も行う
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.5』 掲載の記事です。
※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材当時または記事初出当時のものです。
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