国内1700サービスの統計にみる
レンタルサーバーの中には、利用にあたって制限が行われているものもある。こうした制限を無視して使い続けることはできないので、仮にレンタルサーバーで何らかの事業を開始しても、サービスを中断せざるを得ないといった状況になり、継続性が損なわれる可能性もある。
将来ウェブサイトをどのように成長させていくのかも考慮したうえで、利用目的に不都合な制限がないかを契約前にしっかりと確認しよう。
TEXT:レンタルサーバー完全ガイド編集部
サーバーの切り売りができるか? 再販の可否を確認
レンタルサーバーの契約を行い、その一部を別の企業にレンタルする「再販」については、許可されている場合と不許可の場合がある。そこで全体に占める「許可」と「不許可」の割合を見てみることにする(グラフ1)。
共用サーバーでは、半数以上が「禁止」で、3割弱は「有料」だが許可となっている。ハードウェアや回線をレンタルサーバー事業者から借りて、別の会社または個人に貸与する「再販」は、自由度が低くサービスにも制限が多い共用サーバーには適していないので、最初から禁止としているのだろう。専用サーバー、仮想専用サーバーでは、7割強が有料ではあるものの許可されている。
少数ではあるがアダルトコンテンツ許可のサービスも
レンタルサーバー利用の目的としてアダルトコンテンツの提供を行いたいということもあるだろう。しかし、大半のレンタルサーバーでは、アダルトコンテンツの提供目的では使用が許可されていない。これは、違法なものが含まれる可能性があるとか、印象がよくないといった理由もあるかもしれないが、サーバーと回線負荷が高くなることが予想されるためだとも考えられる。
しかし、すべてのレンタルサーバーがこれを不可としているわけではないようだ。そこで、現在の状況を見てみることにした(グラフ2)
共用サーバーでは、7割以上が「禁止」となっているが、1割強は有料ではあるものの、アダルトコンテンツ提供目的での利用を許可している。
専用サーバーでは、「禁止」が6割弱を占め、「有料」が2割強、仮想専用サーバーでは禁止が8割弱で「有料」が1割強だ。
これらのグラフだけからは読み取れないが、時系列で比較すると、すべてにおいて「非公開」が徐々に減少し、「禁止」「有料」が少しずつだが増えている。ここで「非公開」が意味するところは、「非公開」と明示、「未回答」「無効回答」の3つが含まれる。ほとんどは「未回答」なので、従来より態度を明らかにするレンタルサーバー事業者が増えていることが読みとれる。
独自ドメイン名が使用できないというサービスもある
レンタルサーバーとはいえ、サイトの「個」を明確にするためには、独自のドメイン名が使用できることは必須条件となる。多くの場合、独自ドメイン名が使用できるようになっているが、使用できないところもあるのかを確認してみた(グラフ3)。
共用サーバー、および専用サーバーの一部において独自ドメイン名を「不可」としているところもある。しかし、3割前後は「有料」であるものの利用可能で、半数以上は無料で使用可能となっている。
マルチドメインが利用可能なコースもある
物理的に1台のサーバーで複数のドメイン名を利用したいという場合もある。こうした場合には、契約前にマルチドメインが利用可能かどうかを確認する必要がある。そこで、レンタルサーバー全体において、マルチドメインが利用可能なものと利用不可のものの比率を調べてみた(グラフ4)。
共用サーバーでは、半数程度が「不可」となっており、2割程度が「非公開」だ。利用可能としているうち、使用個数が公開されているもの、非公開となっているものが、それぞれ1割程度という状況にある。
同じサービスで複数のコースが用意されている場合、マルチドメインが使用できるかどうか、また、使用できる個数によりコースのグレードが決められているものもあることから、こうした結果となっていると考えられる。
専用サーバーでは、「不可」となっているのはわずかだ。「利用可」でかつ個数を決めているところがある。専用サーバーでドメイン名の数が制限されているというのは、不可解な印象があるが、これは、管理ツールの制限であると推測できる。管理ツールはマルチドメインの管理を容易にするという意味でも有用だが、製品版では、1ライセンスあたり管理できるドメイン名数に制限がある。そこで利用できるドメイン名の数に制限がある場合には、商用管理ツールの基本ライセンスが使われていると読むことができるだろう。なお、この制限はライセンスを追加購入することで増やすことができる。
ドメイン名の取得や維持サービスをどこに委託するか
独自ドメイン名の取得が必要になった場合、その手続きを契約するレンタルサーバー事業者に依頼すべきかどうかは一考を要する。ドメイン名は、レジストラーに申請して取得を行うが、レンタルサーバー事業者がレジストラーを兼ねていたり、事業者がレジストラーに申請代行するサービスが提供されている場合もある。この場合、レンタルサーバー事業者にドメイン名申請の代行を依頼すると、申請手続からサーバーの設定まで一連の処理をレンタルサーバー事業者にすべて委託できることから手続きは容易になる。ただし、この登録名義をどうするかはレンタルサーバー事業者により異なるので注意が必要だ。登録時にユーザー名(企業名)で申請する場合と、レンタルサーバー事業者が自社の名前で申請する場合があるからだ。
後者の場合、仮に別のレンタルサーバー事業者へとサーバーを移管する場合、ドメイン名の移転手続きに時間を要する可能性があるということを認識しておこう。
この記事で紹介したレンタルサーバーの調査データは、インプレスR&Dの発行する『レンタルサーバー事業者調査報告書2007』に掲載されているものをベースにしている。
調査報告書『レンタルサーバー事業者調査報告書2007』では、レンタルサーバー事業者を、サービス内容に応じて、専用サーバー、共用サーバー、仮想専用サーバーに分類し、さらに価格帯、ハードウェア仕様、ネットワーク仕様、運用体制、セキュリティー関連サービス、アクセスログ解析機能、ショッピングカートや決済代行などの付加サービスを詳細に分析、前年度データを使った時系列の分析も行っている。
調査対象企業一覧とそのサービス内容も掲載しているため、レンタルサーバー業界の需要や傾向はもちろん、提供事業間のサービス競合研究などにも役立つ。
本調査は、事業者に対する調査とユーザーに対する調査の2つからなっている。事業者調査は、2006年12月に、国内のレンタルサーバー事業者280社(1,733サービス)に対して、ウェブを使った調査を行った。
また、利用者へのアンケート調査は、個人および会社でレンタルサーバーを利用している2,050サンプルに対して行った。
『レンタルサーバー事業者調査報告書2007』に関する詳細情報や目次などは、こちらから。
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