コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の六十弐
春はお別れの季節です
先日たまっていた本を整理しました。職業柄、いろいろとため込むので、思い立ったが吉日と捨てることに。ページをめくると未練が生まれるので、書棚から下ろすごとにビニールひもで縛っていきます。アパッチと呼ばれる不正回収業者の「餌食」となるのを避けるため「古紙回収業者」を電話で呼び出してトイレットペーパーと交換します。資源ゴミではなく「取引」という位置付けで、この日は12ロールの大収穫です。ひと仕事を追え、読みかけの本を探すとトイレットペーパーに変身していました。
弥生三月、春風に誘われ「整理整頓」に取り組むことはないでしょうか。混乱したデスクトップに、無秩序に並んだ「マイドキュメント」。慣れないことをして重要ファイルと「さよなら」しては目も当てられません。
PCが個人でも手軽に購入できるようになり、今ではオフィスにPCがない方が珍しいでしょう。仕事の効率もあがり、書棚いっぱいの書類もデジタルデータであれば場所もとりません。ただし、データが消えたら何も残らないという危険があること忘れてはいけません。
今回は、年度末の整理に向けた超簡単なバックアップについて。邪道です。
ドライブレス時代の先鞭か
バックアップと聞いてイメージするのはCD-ROMやDVDといった「記憶媒体」ですが、一般ニュースでも話題となった「MacBook Air」には(メディア用)ドライブがありません。他のパソコンを「ドライブ代わり」に使え、映画などはDVDのメディアでなくともiTunes Storeなどのネットワークで事足りるといいます。
いつか見た風景というのでしょうか、「FDドライブ」を標準“非”装備としたのはiMacでした。その結果、USB接続の「FDドライブ」を同時購入する人が多く、アンチマック派は勇み足と罵り、ファンの中でも賛否がわかれました。NECのPC98に2枚の5インチFDを差し込み「ガチャンガチャン」とやっていた記憶の新しさもあったのでしょう。
iMacデビューから10年、FDを目にしなくなりました。紙テープ、磁気テープ、8インチ、5インチ、3.5インチフロッピーディスク。バックアップの歴史は大容量化と轍を1つにしてきたメディアの変遷でもあるのですが、MacBook Airが「ドライブレス=メディアレス」を掲げました。
丸ごとバックアップ
一昨年末の繁忙期、ハードディスク(HD)がクラッシュしました。環境とデータをバックアップしていたので、復旧作業は1日もかかりませんでした。「バックアップ」とはいざというときの保険となります。
私は「丸ごとコピー」を薦めています。方法はシンプル。500GB程度の外付けHDを接続します。マイドキュメントやデータを保存している「フォルダ」を掴んだら、外付けHDに「ドラッグ」します。コピー終了後、コピーした先のフォルダ名を「日付」に変更して終了です。容量により時間がかかりますが、「マウス1つ」で完了するイージーさは横着者や初心者向きです。
バックアップ用のソフトを使ってもよいのですが、リストア、圧縮、パーティーションなど「専門用語」が多いことを専門家は意識しません。この段階で「挫折」する素人は多いのです。
作業にも応用できる「丸ごと」
「美しい」方法ではありませんが、バックアップソフトの操作方法を覚えたりする「手間」も、そのための人件費も必要なく、データが消えてなくなった非常事態と比べれば気にすることはありません。HDは突然、壊れることがあるので、最善を期すならもう一台HDを用意しておきます。
「丸ごと」は作業にも応用できます。修正や変更を加える際にフォルダをコピーし、コピーで作業します。そして無事更新が終われば、コピーをオリジナルに昇進させ、元のフォルダ名を日付に変え「過去の記録」とします。こうすることで世代管理ができ、修正作業の最中に思わぬトラブルに遭遇した際は「なかったこと」にできます。作業計画書もデザイン案もなく見切り発車をして「迷子」となれば、速やかに「過去」へとワープするという算段です。
価格破壊によって実現できた邪道
ムーアの法則を経済界では時に「コストダウン」として用いることがあります。バブル華やかりし頃、100MBのHDが30万円で発売されたときは衝撃でした。G(ギガ)ではなくM(メガ)です。当時は動画などの大容量を扱うことはなく1MBちょっとのFDでもさしたる不自由はなかったのですが、読み込み時のストレスを「ゼロ(現在と比べると明らかに比喩となるのですが)」にしてくれるHDは憧れの品で、当時としては破格値だったのです。
価格破壊はムーアもビックリの速度で進み、アマゾンでは500GBを約15,000円ほどで購入できます。1GBの単価は30円です。同じくアマゾンで1.44MBの10枚入りFDが732円。超単純計算で500GB分を10枚パックのFDで揃えると……2千万円を軽く超えました※。コストパフォーマンスの面からもバックアップの「メディアレス」の流れがみてとれます。
ちなみに前述のMacBook Airは無線接続HDによる自動バックアップを推奨しています。
※ FDの枚数はグーグルの検索窓に「500GB/(1.44MB*10)*732=」と入れて計算しました。単位換算と計算はグーグルの便利な機能の1つです。「500GBをMB」というように単位換算も簡単です。
自分のパソコンを検索する時代だから
「丸ごと」のデメリットとして考えられる「過去の山積み」をGoogleのデスクトップ検索が解決します。MacOSならスポットライトでも良いでしょう。「検索」が過去を探してくれるのです。また、CD-ROMやDVDに焼いてラベルを貼る手間が不要だということも魅力です。ラベリングを怠り「白地」のCDの前で途方に暮れることもなくなります。
手間の他にも丸ごとを薦めるのには2つの理由があります。1つは「忘れたら使えない」ということ。
過去データ(資産)の活用もバックアップが推奨される1つで、資産の活用は生産性を上げます。しかし忘れてしまったら「ない」のと同じです。だったら手間暇かけて美しく整理して保存するより、手間のかからない方法でとりあえず残しておいて「検索」で探したほうが効率的です。
そしてもう1つの理由は「整理するぞ」という決意からファイルを消去した直後に必要になることがあるという、ムーアの法則ではなくマーフィーの法則によります。
♪今回のポイント
捨てると必要となる不思議。
ムーアもビックリの時代だからできる邪道。
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