規制の厳しい業界のSEO/充実のSES London最終日レポート(中編)
SES London最終日レポート前編では、動的サイトにおけるSEOの話題をお届けした。今回は中編として、規制問題とSEOの関係のセッションをレポートする。
セッション3
規制の厳しい業界における検索マーケティング
このセッションではまず、フランク・ワトソン氏が1番手でマイクの前に立ち、規制問題についてはマーケティング企業に関わる問題が存在するだけでなく、こうした規制が国によっても変わるということを指摘してセッションを始めた。この種のテーマは簡単だって言ったの誰?
リー・エバンス氏は、自分がタバコ業界で仕事をした経験談を使って、できることとできないことをいくつか明確に示した。言うまでもなく、それはどこでマーケティングを行うかによって変わる。タバコに関して言えば、広告の形態にかかわらずEUでは規制が非常に厳しい。これはつまり、EU諸国(英国を含む)と米国では、タバコに関してはキーワード広告を出してはいけないことを意味する。リーは、マーケティングを仕掛けようとする関連地域すべての規制をチェックすることを推奨した。要は実際の状況をよく見ておけ、ということだ。
インタラクティブ・リターン社のマーティン・マレー氏は、アルコール業界における検索マーケティングについて話すつもりだと述べた。ワーオ! タバコとアルコール。1つのセッションで僕の大好きなものが2つも出てくるなんて。マーティンは、アルコールのマーケティングに関する規制は地域によってさまざまだが、自主規制的な部分も少なくないと指摘する(つまり、業界が自分たちでマーケティングを制御して、政府に指導されないようにしているということだ)。
マーティンはまた、グーグル/YouTubeで、ステキな人たちが、僕たちを助けるようなことをいろいろとしてしてくれていて、結果として、アルコールの宣伝の規制になっているという事実を取り上げた。ビールとワイン? それならおそらくOK。もっと強い蒸留酒? ダメに決まってるじゃないか。もちろんマーティンが言うとおり、「ブランド伝道師」たちが蒸留酒メーカーのテレビCMをYouTubeに投稿しないよう規制できるものは何もないし、それがこれぐらいすばらしい出来なら、誰も非難できないけどね。
アルコール業界におけるSEOに関して1つの大きな問題は、多くの国で、サイトのトップページで年齢確認を行わなければならないということだ(たとえばギネスは、アクセスしてきた人の言語に応じてこんな風にしている)。これをうまく回避する方法はいくつかあるけど、そんなことをすれば、検索エンジンとユーザーに同じページを示すという観点から、検索エンジンからペナルティを受ける危険性がある。
マーティンの意見では、アルコール製品の最もうまい倫理的なマーケティングの方法は、ブログを使ったやり方と評判管理だという。たしかに、この戦術で僕たちも成功した経験がある。あのときは、ウイスキー会社の従業員をブランド伝道師にしてしまったんだっけ。
これを読んでいる人はたいてい知っていると思うけど、グーグルは現在、多種多様な賭博サイトの広告を禁止しているんだよね。一方、ヤフーはまだ多少規制が緩い。僕は、グーグルのこの決定に対して良いとも悪いともいうつもりはないけど、Greenlightのハナ・キムユ氏は、グーグルより成人の利用者が多く、より広範なメディアパートナーを持つMSNやヤフーが、この種のマーケティングを継続する新しい方法をもたらしたため、実際にはグーグルにおいてもマーケティングを行う機会が開けた、と指摘する。ハナは、MIVAのコンテンツ連動型広告ネットワークのことも話していた。
ハナは、賭博業界におけるSEOについて話を続けた。彼女が指摘したとおり、賭博関係の検索語にはテールがあまりなく、ヘッドになると恐ろしく競争率が高い。ハナは、だからこそリンク戦略に集中することが重要だと主張する。リンク戦略に数万ドルも「投資」できないというのであれば、賭博市場では、非常に的を絞ったディスプレイ広告やEメールマーケティングでもかなり良好な投資回収が可能だとわかっている。フランクは、ブログ利用とコミュニティ構築がこの手のサイトにトラフィックを促す、成功率の高い非常に賢明なやり方になり得ると述べた。
さて、ここで取り上げられなかった業界に製薬業界がある。この業界には非常に特殊な問題があって、もし評判やブログの監視を実行し、薬の副作用で苦しんでいる利用者に遭遇してしまった場合、会社側にはそれに対応する義務があるということだ。実際にはそんな単純な話ではなく、はるかに複雑なんだろうけれど、この業界に首を突っ込むつもりなら、ここが考えるべきポイントの1つにはなるはずだ。
賭博業界のようなところでは、主要な検索語で上位にランクされる上で、リンク購入が唯一の方法じゃないのではないか、と尋ねてみたところ、パネリストたちは、当然といわんばかりに、全員が首を横に振った。この問題があまり話しやすい問題でないことはわかっている(それに僕が言い出してしまったので、余計な注意を引いてしまった)けど、このように競争率の高い検索語で上位にランクされる方法を議論している場では、これはむしろ避けられない問題ではないかと思う。
と言っていると、グーグルのエンジニアのマイラ・オオエ氏が会場の後ろにいた。彼女はきっとマット・カッツに報告するんだろうなあ!
ここで来場者の1人から、製薬業界に関する非常に具体的な質問が出て、なぜ誰も製薬業界のことを取り上げてくれないのかと疑問を呈した。彼らの肩をもつわけじゃないけど、運営者とて、すべての業界を完全にカバーできるわけじゃないし、公平に見て、パネリストも彼の質問に答えようとよく頑張ったと思うよ。フランクが、こうした業界の経験者が大勢いて、喜んで助けてくれるフォーラムを紹介して、セッションは無事に終わった。
次回の最終日セッションレポート後編で、SES Londonのレポートは終了だ。最後に取り上げるのは、SEO業務に役立つツールと評判管理を取り上げたセッションだ。
→「動的サイトにおけるSEOの施策/充実のSES London最終日レポート(前編)」を読む
→「SEO支援ツールの数々を紹介&評判管理/充実のSES London最終日レポート(後編)」を読む
筆者のシアランは、オンラインマーケティング代理店Altogether DigitalのSEO担当者で、ソーシャルメディア担当ディレクタを務めている。彼はようやくLondon SEOを後援できて本当に喜んでいた。
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