QRコード〜人間には読めないURLの罠/知って得するドメイン名のちょっといい話 #9
読者の中には携帯電話向けのウェブコンテンツをターゲットにしている方も多いだろう。携帯からのアクセス手段のひとつに「QRコード」がある。今回はこのQRコードに目を向けてみたい。
最近のQRコード事情
QRコードはもともと、自動車部品メーカーである株式会社デンソーが、1994年に生産管理のために開発した二次元コードですが、その仕様をオープンにして誰でも利用できるようにしたために、さまざまな用途に広がりました。特に、携帯電話からウェブサイトに接続する際、面倒な文字入力の代わりに携帯電話のカメラでQRコードを撮影してアクセスするという利便性が受け入れられて、広く普及しています。
カメラ付きの携帯電話があたりまえになり、昔の機種に比べて読み取りの精度も速度も格段に向上しました。昔、QRコードの読み取りに苦労した経験のある方、ぜひ最近の機種で試してみてください。
QRコードは自分でも作れる
携帯電話からインターネットにアクセスするといっても、以前はテキストベースのシンプルなサイトが多かったのですが、携帯の画面の画素数が増え、データ通信は高速で定額になり、コンテンツもリッチになりました。サービスの幅も広がり、多くの利用者が携帯電話からインターネットにアクセスするようになっています。皆さんの中にも携帯電話向けサイトを運営されている方、もしくはこれから運用しようと考えている方も多いのではないでしょうか。
ところでこのQRコード、仕様がオープンであることはすでに述べたとおりですが、それはすなわち、誰でも自分でQRコードを作れることを意味します。個人のサイトでも「携帯サイトはこちら」としてQRコードの画像が貼ってある例を見かけたことはないでしょうか。
自分で作れる、とはいっても本当にやろうとすると技術的知識が必要になります。しかし、そこはインターネットの便利さで、URLを入力するとQRコードを出力してくれるサイトがいくつも提供されています。ここで、自分の携帯サイトのURLをフォームに入力して作成ボタンを押すだけで、自分専用のQRコードが作成できます。
QRコードの特徴
さて、何事にも長所短所があるように、QRコードによるアクセスも例外ではありません。その特徴をよく理解した上で、利用することが大切です。
最も大きな利点は、URLを入力しなくてもウェブサイトにアクセスできる、ということでしょう。携帯電話での文字入力は、キーの数が少ないためにとても面倒です。日本語入力は先読み変換などの便利な機能のおかげで大きく改善され、若い人の中にはPCのキーボードよりも入力しやすいという人がいるほどですが、アルファベットはとても面倒です。このため、携帯電話からのインターネットアクセスでURL入力が用いられることは少なく、QRコードや空メールでのURL返信などが主流です。
では欠点は何でしょうか。それは、その場でカメラ撮影をしなければならないことです。
URLが表示されているのであれば、「覚えておいて後でアクセスしよう」ということができますが、QRコードはそうはいきません。これは、雑誌や広告など、手元にある紙媒体であれば問題になりませんが、電車の中吊りや街中の看板となると、その場で撮影する必要があります。人前でのカメラ撮影に抵抗感があるかもしれません。
また、QRコードは露出時間の短いテレビCMや、音声伝達であるラジオにも不向きです。携帯電話のカメラを用意している間に表示が終了してしまいます。こういう時にはわかりやすいドメイン名によるURLを、記憶に焼き付ける方が得策です。
ユーザーをウェブサイトに効果的に誘導したいのであれば、どういう場面で、どういうアクセス方法を提供するか、ということをよく考える必要があるわけです。
QRコードの危険性
そしてもう1つ。特に、公衆の場において利用されるQRコードには、ほとんど意識されていない大きなセキュリティーリスクが存在します。
これは、誰でも簡単に作れる、URLを意識せずカメラで撮影するだけでアクセスできる、という特徴によるものです。
QRコードは見ただけでは内容がわかりません。カメラで読み取ると、画面にはURLが表示されますが、これをしっかり確認してからアクセスする、という人は、いったいどのくらいいるでしょうか。ウェブサイトにアクセスした後も、URLを意識することは少ないと思います。PCと違って、携帯のブラウザーにはアドレスバーがありません。この「URLを意識せずにサイトにアクセスしてしまう」というところに危険が潜んでいるのです。
実際、街中の看板やポスターなどに第三者がQRコードを重ねて貼り、無関係のサイトにアクセスを誘引する、という事例があるようです。その看板やポスターの内容に関連するサイトだと思って気軽にアクセスしてみると、その飛び先は、アダルトサイトであったり、偽サイトであったり。そう、これは紛れもなく「フィッシング」です。目の前にあるQRコードで簡単にアクセスできると思い込んでいると、罠にはまってしまうことになります。
さて、この対策はどうしたらよいでしょうか。まず、サイト運営者としては、QRコードを表示してアクセスさせる場合には、URLも併せて表示しておくことです。QRコードを読み取った時に画面に表示されるURLと同じかどうかユーザーが確認できるようにしておくことで、無関係のサイトに飛ばされるリスクが減少します。また、この効果を高めるためには、URLをシンプルにすることが有効です。ドメイン名だけの短いURLなら、確認も容易になります。
QRコードなら、URLが見えないから、どんなURLでもいいや、というわけではないのです。QRコードを利用するからこそ、URLとドメイン名はより一層重要なものとして考えるべきでしょう。
そして、もちろんアクセスするユーザーの立場であれば、QRコードを読み取った時に画面に表示されるURLを、きちんと意識することが必要です。
URLが簡単に入力できたら?
QRコードが普及した背景には、携帯電話でのURL入力、特にアルファベット入力の面倒さがあるというのは先に述べたとおりです。では、URLが日本語になったらどうでしょうか。携帯メールを利用されている方であれば、日本語の入力の簡単さは説明するまでもありません。「http://ekimachi.jp/」ではなく「http://駅街ガイド.jp/」なら、入力も簡単です。
課題は、携帯電話に搭載されているブラウザーの日本語ドメイン名への対応状況です。PCのウェブブラウザーでは当たり前に使えるようになったこの日本語ドメイン名ですが、携帯電話ではブラウザーだけを更新できないことや、利用者の買い替えサイクルが長くなってきているなど、まだ未対応の機種も残っている状況です。しかし、徐々に日本語ドメイン名が使える機種が増えてきています。
日本語ドメイン名は「見える」アドレスで、伝えやすく覚えやすい。携帯電話からの便利なインターネットアクセス方法が増えることは、サイト運営者として、場面に応じて最も適した方法をユーザーに提供できるようになるということです。そのためにも、それぞれの方法の長所短所をしっかりと理解しておくことが大切です。
※この記事は、レンタルサーバー完全ガイドの発行する雑誌『レンタルサーバー完全ガイドVol.10』(2007年8月29日発売)に掲載されたものを再編集して掲載しているものです。
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