短いドメイン名には価値がある?/知って得するドメイン名のちょっといい話 #10
ドメイン名でのアクセスを期待するには「わかりやすく」「覚えやすい」ドメイン名を利用することが大切だ。この条件を満たすドメイン名はどのようなものだろうか。短いドメイン名はどうだろう?
Google=「G」?
ご存知Google。ドメイン名は?と聞かれれば、google.co.jpか、google.comと答える人がほとんどでしょう。私たちにとって、この一風変わったスペルの社名は、ロゴとともに脳裏に焼きついているのかもしれません。
ところが、海を渡ってお隣の中国では事情が異なるようです。中国の検索サービスでは「百度」が7割以上のシェアを確保していて、Googleは高学歴層以外にはなかなか広まっていないという調査結果が出ています。
そこでGoogleの中国法人は、10月29日、中国のユーザーにとって「Google」という英語は間違いやすい、として「g.cn」というドメイン名を使用することを発表しました。この、ドメイン名らしからぬ文字列はすでに利用可能です。試しにアドレスバーに「http://g.cn/」と入力してみてください(画面1)。
中国において「GはGoogleのG」というイメージを浸透させることができるかどうかは、これからのGoogleのプロモーション次第かもしれませんが、ニュース的インパクトは大きかったようです。
1文字のドメイン名
g.cnがドメイン名らしくないのは、1文字のドメイン名を見かけることがあまりないからでしょう。他に有名な1文字ドメイン名としては日産自動車の「z.com」があります。こちらは「Z」が車の名前そのものですから、プロモーション効果も相当なものだと思います。
ところで、なぜ1文字のドメイン名を見かけることがないのでしょうか。
その1つ目の理由は、ドメイン名の登録ルールが各TLDにより異なるということ。最低文字数もTLDによって異なり、2文字か3文字以上というTLDが多く、1文字ドメイン名が登録できるところはあまりありません。
.comも1文字ドメイン名は登録できないものとされ、そのルールができる前に登録されていた一部のものが、現在も使われているのみです。z.comもこういった経緯によるものです。
そして2つ目の理由は、その絶対数が少ないということ。これは1文字で何通りのドメイン名が実現できるか、を考えればすぐに理解できます。
つまり、1文字のドメイン名を新たに登録することはできず、わずかに存在するものが時々譲渡により話題となる、というのが実情のようです。
ひと口メモ
歴史的経緯により登録されている1文字ドメイン名はq.com/x.com/z.com/i.net/q.net/x.orgの6つのみ。これら以外の1文字ドメイン名の登録を開放すべきかどうか、現在ICANNにおける議論が行われています。
短いドメイン名の実情
1文字、2文字といったドメイン名はかなり希少ですが、3文字くらいになってくると表現できるパターンも増えてくるため、世の中でよく見かけます。読者の皆さんの中にも、3文字のドメイン名を登録されている方がいるかもしれませんね。アルファベット3文字程度であれば、略称など覚えやすい文字列として使えるかもしれません。
じゃあ、と思って3文字のドメイン名を登録しようとすると、実際には「もう登録されています」となることも多いものです。特に、最も登録数の多い.comでは、3文字のドメイン名はすべての組み合わせが登録されてしまっている、という話もあります。4文字のドメイン名も多くのものが登録されているようです。
企業がプロモーション活動などで用いるために、登録済みの短いドメイン名がどうしても欲しい、という場合は「売買」も選択肢として浮上してくるでしょう。
ただ、もしそのドメイン名があなたの商標などで権利を主張できるものであり、かつ、登録者からあなたに対して高額での買取りを要求してくるようなことがあれば、それは高額転売目的での不正なドメイン名登録としてDRPで解決できることがあります(表1)。
ドメイン名紛争処理方針(DRP) | http://www.nic.ad.jp/ja/drp/index.html |
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JPドメイン名紛争処理方針 | http://jprs.jp/info/drp/ |
JPドメイン名では?
JPドメイン名では、英数字の場合は1文字2文字のドメイン名を登録することはできません。登録できるドメイン名は3文字以上、63文字以下となります。これは、「co.jp」など属性を表す第2階層との混同を避けるため、というのが主な理由です。
JPドメイン名でも、3文字4文字といった短いドメイン名は人気があります。しかし、世界中からの登録で埋め尽くされてしまった.comなどのようにまったく登録できない、という状態ではありません。
2007年11月現在、汎用JPドメイン名では、英数字3文字のドメイン名は1万6千以上登録されていて、これは登録可能な3文字ドメイン名のおよそ3分の1です。英数字4文字のドメイン名は3万2千以上ですが、登録可能な全パターンから考えればわずか数パーセント程度です。
JPRSでは、3文字と4文字で登録可能なドメイン名を検索することができるウェブページを提供しています(画面2)。短いドメイン名に興味がある方は、一度検索してみてはいかがでしょうか?
日本語JPドメイン名の場合
日本語JPドメイン名では、平仮名や片仮名など一部の文字以外は1文字からの登録が可能です。調べてみると、1文字の日本語JPドメイン名は2千以上あります。しかし、特徴的なのは2文字のドメイン名が多く、1万1千以上も登録されているということです。
考えてみると、日本語の単語には漢字2文字のものが非常に多くあります。このような言葉が日本語JPドメイン名として登録されていると考えられます。
日本語JPドメイン名では、1文字から4文字のものが全体の約4割となっています。これは、英語やローマ字表記に比べて少ない文字数で意味のある言葉を構成する日本語の特徴を表しているといえるでしょう。
短いことだけがよいことか
ところで、短いドメイン名の話題を書いてきていますが、よいドメイン名=短いドメイン名、というわけではありません。もちろん、ドメイン名が短いことは「わかりやすくて覚えやすい」という目的を達成するための1つの手段です。しかし、それ以外にもケースに応じたいくつかの手段があります。
たとえば、Googleもそうですが、5文字以上の英数字文字列であっても、それがブランドイメージとして広く浸透しているのであれば、無理に略したなじみのない短い文字列を使わないほうがいいこともあります。
また、電話番号は人間が記憶できる数字列の代表的事例とされますが、テレビCMなどで連呼される番号を覚えてしまっている人も多いでしょう。このような場合、その電話番号をドメイン名としている事例も多くみられます。
大切なことは、アピールするイメージを統一することです。商品名とサイトタイトルとドメイン名がすべてバラバラの場合と、すべて統一されている場合と、どちらがユーザーの記憶に残るのか。考えるまでもありませんよね。
JPRSからのお知らせ
JPRSでは、インターネットに詳しくない方にもドメイン名とJPRSを易しく理解していただくことができるよう、特設ウェブサイト「JPRS24」を開設しています。ゲームをプレイすることで楽しみながらドメイン名の大切さを知ることができます。ぜひアクセスしてみてください。
2007年の11月1日に、DNSの最上位層を構成するルートDNSサーバの1つ「l.root-servers.net」で、IPアドレスの変更が行われました。DNSキャッシュサーバーを運用されている方はルートヒントファイルの変更が必要になります。詳しくは以下をご覧ください。
※この記事は、レンタルサーバー完全ガイドの発行する雑誌『レンタルサーバー完全ガイドVol.11』(2007年11月29日発売)に掲載されたものを再編集して掲載しているものです。
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