ニフティ株式会社の売上構造を分析
ニフティ株式会社の売上構造を分析
ここでいったんトップページの構造から離れて、ニフティ株式会社の平成22年3月期決算短信(PDF39ページ、500KB)を見てみよう。
平成22年3月期で売上高は約1,020億円、経常利益は約26億円。分野別の状況を見ると、「接続・カスタマーサービス分野」の売上高が約900億円、「Webサービス・ネットマーケティング分野」が約120億円となっている。「接続・カスタマーサービス分野」の内容は「接続会員のサービス料と有償サポートサービス」、「Webサービス・ネットマーケティング分野」の内容は「広告、コンテンツ、コマース」ということのようだ。
つまりニフティ全体の事業の中で、Webサイトの直接的な貢献は約1割程度に過ぎないということだ。もちろん今後の方向性がどうあるべきかという話はあるが、おそらくニフティ全体の戦略としては、次のように考えるのが自然だろう。
- 既存の会員基盤強化
- 解約率の減少(サービスの充実、効率的なサポートの充実)
- 有料コンテンツ、サービス利用率及び単価の増加
- 新規顧客の獲得
これに対して、サイトの役割としては、
- メディア機能(広告収入)
- トランザクション機能(有料コンテンツ、オンラインショッピングサイトなどへの送客)
- 顧客サポート
- 新規顧客獲得
の4つ。最初の3つが上記の「既存の会員基盤強化」に対応する役割にすべて包含される。
「@nifty」のサイト機能と対象ユーザー
まずメディア機能について考える。検索機能、ニュース情報、その他の基本コンテンツに関しては、他に優れているサイトがあるので、会員が特段に求めていないコンテンツ(ついでに使うときには、最低限使い勝手が悪くなく、不自由がないこと)だろう。とすれば、恥ずかしくない程度あるいはお小遣い程度の利益が出る事業となっていればよいと考える。つまり、検索連動型広告やバナー広告の露出できるページビュー数をある程度メディアとして創出できるだけのコンテンツは用意しておくことが最低限満たされていれば十分だ。
次のトランザクション機能はどうか。前出の平成22年3月期決算短信によると、
ショッピングポータルを「@niftyショッピングナビ」へリニューアルし、検索対象となるネット通販サイト数および取扱商品数を大幅に拡充いたしました。この結果、サービス利用会員数は前年度末比128万人増の857万人、ブロードバンド接続会員を含む会員総数は同135万人増の1,043万人となり、初めて1,000万人を超えました。
とある。サイトで確認すると、「@niftyショッピングナビ」は、基本的には外部サイトへ送客をしているだけのようだ。また@niftyユーザー名または@nifty IDを持ってなくても、@nifty会員登録(無料)でブログサービスのココログを利用したり、マイニフティを設定したりすることもできるので、ISP会員以外でも「@nifty」との関わりを持つユーザーも大勢いるということだ。
ISPのブロードバンド接続会員数は186万人ということなので、総計1,000万人ユーザーがいるということは、引けば800万人以上がISPの新規会員になりうる可能性があるということになり、何らかの機会にISPの会員へ誘導したいと考えるのが普通だ。だから特等席の左上エリアにISPサービスの紹介へのリンクが配置されていると考えてもよいだろう(図3)。
ここで改めて図3のトップページを見てみよう。左の赤枠エリアが新規会員獲得のためのコンテンツ、左右上部に2か所ある青枠エリアが既存会員向けのコンテンツ、それ以外が一般向けコンテンツという形になろう。
上段で私が感じた違和感を繰り返す。「@niftyに新規入会して欲しい人」「@nifty(ISP、ウェブ無料サービス)に入会している人」「一般利用者」という3つのユーザー層に対して、コンテンツ提示の仕方が、総花的であることだ。例えば3段組みの左側のエリアは全て黄土色で表示されているが、上部はISPサービスへの勧誘コンテンツで、下部は一般向けコンテンツで、特段の区別もなくつながっている。
Webページを作ると、どうしても多くのコンテンツを盛り込みたくなってしまうものだが、人が一度に認識できる情報量には限りがある。ユーザー層別にもう少し整理してあげると、もっと見やすいページになるのではないだろうか。他のサイトとの比較は本意ではないが、図4は「BIGLOBE」の例だ。昔の「Yahoo! JAPAN」もこのようなカテゴリー配置だったことをご記憶の方もいるだろう。これがいいと言っているのでなく、「@nifty」も、もう少し整理して見せてあげる工夫があればよいのではないかということだ。
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