初代編集長ブログ―安田英久

広告を見てコンバージョンした人の95%は“見ただけ”: 超満員Attribution Night 2011レポート

200人が参加したイベント「Attribution Night 2011」の様子をレポートする。
Web担のなかの人

バナー広告は、クリックされた数の20倍のユーザーをサイトへ誘導している

「Attribution Night 2011」(アトリビューションナイト)というイベントが、10月4日に渋谷のベニーレベニーレで開催された。

アトリビューションとは、広告効果測定などに関係する話題。簡単に表現すると、次のようになる。

広告効果は、コンバージョン直前のラストクリックだけで判断するのでは不十分。初期の接触や中間の接触も含めて、ユーザーがどういったメディアでどういった行動をしているのかを把握し、広告費の配分を適切に行うことで、より広告の費用対効果を高め、同じ広告費でもより多くのコンバージョンを獲得できる。そうした行動を「アトリビューション」と呼ぶ。

コンバージョン直前のセッションがどのメディア経由だったかだけで広告の効果(出稿先のメディアの価値)を判断するやり方では、初期の認知を獲得する役割を果たしている広告や、商材への理解を深める役割を果たしている広告の価値がわからないことから、ユーザー行動全体を把握して最適化していくために出てきた考え方だ。

Web担でも「Attribution.jp分室」のコーナーなどで少しずつ情報を提供しているが、あらゆる広告活動を行うすべての人にとって重要なトピックだ。

アトリビューションナイトは、アトリビューションに関して積極的に活動しているATARA合同会社、株式会社クロスリスティング、Fringe81株式会社の3社が共同して企画し、開催したもの。当初は50人~60人程度の規模として参加者を募ったところ、最終的には200人もの参加者が集まった。参加者の多くは広告代理店からだったが、意識の高い広告主も参加しており、非常に盛り上がった。

広い会場が200人の参加者で埋まった。

「そもそもアトリビューションとは?」「どうやって測定するのか」「態度変容をどのように見るのか」「広告を最適化するには」といった疑問に応えるセッションを各社が行い、その後パネルディスカッション、質疑応答と進められた。

主催3社のスピーカー。左から有園雄一氏(アタラ合同会社)、治田耕太郎氏(株式会社クロスリスティング)、田中弦氏(Fringe81株式会社

バナー広告はクリックされた数の20倍のユーザーをサイトへ誘導している

セッションで使われた資料が公開されているのだが、ここでは、なかでも衝撃的だった、Fringe81の田中氏による発表から、一部の情報をお伝えしよう。

田中氏は、同社の第三者配信広告サーバーを使ってバナー広告を配信した案件の1000万ユニークブラウザ・1000コンバージョンのデータから、広告に接触したユーザーがどんな行動をしてコンバージョンに至ったのかを明らかにしたのだが、非常に興味深い結果となっていた。

通常、バナー広告の効果測定というと、広告を見てクリックした人を対象にするものだが、第三者配信の仕組みを使ってバナー広告を表示したうえで、広告主のサイトに測定タグを入れておくと、「広告をクリックした人」だけでなく、「広告を見たがクリックしなかった人」がその後サイトを訪れている様子を調べられる。

田中氏によると、バナー広告に接触してから発生したコンバージョンの経路は大きく5種類に分類できる。しかしなんと、そのうち広告をクリックしてコンバージョンに至ったのは、わずか4%程度。つまり、広告をクリックした人の20倍以上もの数のユーザーが、広告を見たもののクリックはせず、しかしその後検索したり他のアフィリエイトサイトを経たりした後に広告主のサイトを訪れ、コンバージョンしているのだ。

5種類のコンバージョン経路。左にある青い「ビュー」がバナー広告を見たことを示し、緑の「クリック」がバナー広告をクリックしたことを示す。C~Dの3経路はバナー広告を見ただけでクリックしていない。CとDはその後、検索や他のサイトを経由した場合を示しており、この2つの経路が最も多かった。

極論を言えば、バナー広告の効率を最大化するには、クリック率は無視して、ビュースルー(見たけれどもクリックしなかった)ユーザーを中心に考えるのが良いということにもなる。

どうだろうか。これまで「バナー広告はCPC(クリック単価)でいうと費用対効果が悪い」と考えていたものが、ユーザーの行動をつなげて見ることで違って見えてくるのではないだろうか。

こうしたユーザーの姿をアトリビューション分析によって明らかにし、刈り取り系広告のうち費用対効果の低い部分への広告費を減らして、思っていたよりも実際には費用対効果の高い認知系広告に振り直すことで、同じ広告費でもトータルのコンバージョン数を増やせるというのは、新しい発見ではないだろうか。

会場では、マーケティングを行う人にとって、さらに効果を上げる助けとなるだろうアトリビューションの情報が提供された。各セッションの資料がネット上に公開されているので、詳細を知りたい方は、そちらを参照してほしい。

また、イベント関連のツイートを「Attribution Night 2011」としてtogetterでまとめておいた。こちらでは、参加者による反応が見える。

アトリビューションナイトの次回開催は予定されていないが、Web担でも引き続きアトリビューションの情報を提供していくので、ぜひ継続してチェックしてほしい。

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