企業ホームページ運営の心得

ソーシャル疲れと、ソーシャルメディアが役立たずとはいえない理由

ソーシャルメディアでも集客は欠かせません。それを忘れて広告効果を期待しても効果は得られないでしょう。
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の弐百参十八

ソーシャルの限界?

いま「ソーシャル疲れ」が広がっているといいます。TwitterやFacebookに取り組むも期待した広告効果は得られず、それでも続けることで疲れが蓄積されている状態です。習うよりも慣れろと、使いながらノウハウをつかんでいくのも1つの手ですが、ただ続けていれば何かがつかめるというのは「精神論」に過ぎません。結果が出ないのは、何かが間違っているのです。

ソーシャルメディアの雄であるTwitterの広告効果については一年以上前の「ツイッター成功事例の裏を読む。デルの成功事例はたった2千円」で詳しく紹介しましたが、もともと爆発的な広告効果が期待できるものではないのです。それなのに、ソーシャルメディアを煽る人がWeb業界に多い理由については「企業コミュニティ」を研究するエイベック研究所の武田 隆代表の台詞が核心を突いています。

ソーシャルメディアがすごいすごいと発言している方は、その多くが(ソーシャルメディア自体を収益源とするなどの事業を担っているがゆえの)ポジショントークです(日経ビジネスオンラインより)

残念ながら事実です。だから「ソーシャルメディア」が役立たずとはいいません。この理由については後ほど。疲れるのはアプローチの違いです。

はたして「メディア」なのか

ソーシャルは「社会的な」という意味ですが、Web業界においての定義はそもそも曖昧です。「メディア」とは日本語では「媒体」を指し、「情報などを伝えるもの」という意味で、ここでは「MO」や「FD」、あるいは「CD-ROM」を表す「メディア」は除外します。すると広義では手紙や、看板もその用をなしますが、一般的には多数に情報を伝達する「マスメディア」を想起することでしょう。そして、先ほどの「ポジショントーク」をする人たちは、「小さな個人のつぶやきが世界中に伝播する」と、マスメディアと混同させるような表現を使い、既存メディアと同格であるかのように語ります。

しかし「つぶやく」だけなら、さざ波すら起こらないのがソーシャルメディアです。

7億人の誤解

「ソーシャルメディアなら無料でマスメディアのように多くの人へと伝播できる」という錯覚がソーシャル疲れとなります。それは「広告」としてのアプローチです。

「広告」は人がいる所に情報を流します。テレビCMや新聞広告、かつて年間出稿料が1億円と噂されたポータイルサイト「ヤフー」のバナー広告も、人が集まるから広告効果を期待できるのです。

それではソーシャルメディアはどうでしょうか。ユーザー数が1億人を突破したTwitter、8億人を突破したFacebookと、確かに多くの人が集まっています。ただし、それぞれの「場」に集う総数であり、参加する個人や企業のつぶやきが、8億人に伝わるわけではありません。つまり、ソーシャルメディアのアカウント数は、そのなかでの「つぶやき」がもたらす広告効果を意味しないのです。こんな「あたりまえ」の話をした理由は、アカウント数や利用者数を喧伝する「ポジショントーク」があまりにも多いからです。

日本人向けに商売をするなら、日本のユーザーがどれだけいるのか、ということも忘れてはいけません。

客集めするメディア

「つぶやき」に広告効果を望むなら、1人でも多くの客を集めなければなりません。

Twitterならフォロワー、Facebookなら友達や「いいね!」の数です。ソーシャルメディアとは集めたお客にだけ届く放送局で、レディ・ガガのTwitterのように1400万人を越えるフォロワーがいれば、既存メディア以上の広告効果も期待できますが、フォロワーが3人で、それがすべて家族なら茶の間を越える波及効果は望むべくもありません。

極論を述べれば、ソーシャルメディアを広告利用したいのなら、発言する内容を練るよりも、まずフォロワー(視聴者)集めに注力すべきなのです。場合によっては、フォロワーを集めるための広告を打つ、という施策が必要です。

ソーシャルメディアの誤謬

ホームページやブログでは訪問者、メルマガなら読者、そのほか有料無料を問わず各種登録会員のすべてはフォロワーと同義です。情報を送り届けるプッシュ型か、ユーザーが自ら取得するプル型かの議論はここでは脇に置きますが、人を多く集めることがインターネットにおける重要な成功法則です。どんなに優れた商品や企画であっても、見つけてもらわなければ客に届くことはなく、これは企業が利用するソーシャルメディアも例外ではありません。これを置き去りにして「つぶやき」続けても疲労しか残らないのは自明です。

かつてブログを「マイメディア」と呼ぶ動きがありました。個人的に情報を発信できるという意味で「つぶやき」と同じ系譜です。20世紀の終わりにはHTMLの知識がなくても情報発信できる「日記型掲示板」でも同じざわめきがありました。さらに時計の針を戻せば「HTML」ですら「簡単に情報発信と入手ができ、世界とつながるメディア」と呼ばれていたのです。つまり、ソーシャルメディアで喧伝されることは、そっくりそのまま「インターネット」で語られたもので、「役立たず」と断じれば自分の商売を否定することになります。

戦い方の違い

ソーシャル疲れを避ける方法は、身の丈にあった集客方法を理解することです。きれいごとで述べれば「ツイートの内容やコミュニケーション能力」となりますが、これは精神論のように再現性がなく、「連続フォロー&リムーブ」というダークな手法は本サイトで紹介するには不適切な内容。そこで「集客方法は事業規模により異なる」とだけ答えておきます。

10人に客で満席の個人経営のバーなら、100人にフォローされれば業績への寄与が期待できるので、ツイートにコメントしたりして「絡む」のもありでしょう。いわゆる「コミュニケーション」です。しかし、「大企業」がこのやり方をしていては、本業が疎かになること請け合いです。大企業の業績に直接反映させるなら、万単位でのフォロワーが必要で、1人ひとりとコミュニケーションをとりながら集客するのは物理的に不可能だからです。それより「マスメディア」への広告や、「著名人」にツイートさせ、そこから誘導するほうが適しています。こちらの具体的な方法については……舞台裏を語るほど野暮じゃないのであしからず。

今回のポイント

ソーシャルメディアは客集めが重要

身の丈にあった集客方法がある

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