企業ホームページ運営の心得

ブログのアクセス数を跳ね上げるドーピング、旬のネタ簡単に仕入れる方法

ネットやウェブ業界だけで得られる情報は限られていますが、身近なところにネタはあります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の335

ネット業界だけでは得られない情報

333回目の入校直後、担当の池田さんから「どうやってネタを仕入れているのか」と不思議がるメールが届きます。毎週「薄氷」を全力ダッシュしており余裕などありません。しかし、いくつか考えられる理由の1つが「多様な階層」と接していることです。

ネット規制について新聞記者からコメントを求められた翌日、人気焼肉屋でレジスターについての相談を受け、その数日前は中国人から設定したPCが動かなくなったと泣きつかれ、繁体字の画面を前に格闘します。また、ロシアや関西の情報を寄せてくれるメルマガの読者もいれば、機械メーカーの社長の嘆く愚痴から、資源価格の高騰を知ります。ウェブやネット業界だけと接していては得られない情報ばかりです。

それともう1つはテレビ。以前にも紹介したように、テレビはネタの宝庫です。そしてブログのドーピングができます。

「いいとも」の爆発力

中川淳一郎さんの出世作『ウェブはバカと暇人のもの』にあるように、ウェブでは「テレビ」ネタが多く語られ、ヤフーニュースのトピックにも並びます。今でもテレビは娯楽の王様です。娯楽の王様である背景を、某大手新聞社の記者はこう指摘します。

あれだけ多くの制作会社(下請け)に企画を競わせているのだから、おもしろくなって当然(発言要旨)

もっとも、娯楽の多様化によってテレビの相対的地位の低下と、コンテンツのレベルが低下しているのは事実であり、国民的番組「笑っていいとも!」が終了するのも時代の流れですが、その「いいとも終了」のニュースが、ネットを駆け巡ったことは記憶に新しく、いまだテレビの影響力が強いことを示した「事件」です。

旬のテレビネタを独自コンテンツに変換

今、ブログで「テレビネタ」を取り上げるとアクセス数は跳ね上がります。私のブログで今年ヒットしたテレビネタは、「矢口真里」と「アゲるテレビ」です。

矢口騒動の当初、浮気相手とご主人(当時)が、2人の新居で鉢合わせになったという「噂」が流れ、その瞬間に矢口さんがどこにいたのかには触れられませんでした。イメージダウンを最小限に抑えるための情報コントロールではないかと睨み、「そのとき、矢口真里はどこにいたのか」という視点でブログを書いたところ、普段の3倍のアクセス数を記録します。

次の「アゲるテレビ」とは、今年の4月から放送されていたフジテレビの午後の情報バラエティ番組で、視聴率の低迷によって9月末で打ち切りとなりました。低視聴率の理由を、企画と構成の失敗とつづったブログは普段の2倍のアクセスを集めます。

ネットリテラシーとリアルタイム

テレビ評論家でもないのに、私が書いたテレビネタに人が集まる理由は2つあります。

まず、検索リテラシーの向上です。矢口真里さん報道の場合は、彼女の名前に「どこにいる(どこにいた)」を組み合わせたキーワードで、アゲるテレビは「打ち切り」との合わせ技で検索されていたのです。気になるトピックと、行動や周辺情報を組み合わせて検索する人が増えたことが「テレビネタ」の集客力を高めた理由です。芸能人の名前やテレビ番組名などのビッグワード単体の競争は厳しくても、複数の検索キーワードを意識することでチャンスが広がります。

もう1つの理由は、「リアルタイム性」。実は「テレビネタ」は草の根BBSの頃から、ネットの人気コンテンツでした。その後、ブログの普及によって「素人テレビ評論家」が拡大しましたが、当時は知人が訪問する程度の集客力に過ぎませんでした。ところがここ数年、グーグルのインデックス速度が上がり、「コンテンツ」の精査に傾注するようになってから、無名な執筆者であっても上位表示されることが増えたのです。

また5~6年前は、無名サイトのコンテンツがインデックスされるまでには、数日~数週間を要したものですが、今は数分のうちに登録されることも珍しくありません。すると、テレビの旬のネタをほぼリアルタイムに活用でき、集客力がより高まったというわけです。

テレビネタのズルい仕入れ

ネタの仕入れとはいえ、さすがにすべてのテレビを見ることはできず、録画して後追いをするほど暇でもありません。そこで毎日チェックするのが新聞の「ラテ欄」です。ラテ欄に掲載された「ワイドショー」の内容とはそのまま「話題のトピック」になり、バラエティー番組の出演者は「旬のタレント」です。

そして、ラテ欄のキーワードを「ネットで検索」するだけでもネタが拾えることが多々あります。ラテ欄とは視聴率を稼ぐために、テレビ局が知恵を絞ったものであり、最も耳目集めるエッセンスが凝縮されているのです。

またテレビネタの「美味しさ」は、少なからずの人が視聴しており、視聴で得たイメージが読者との間における「体験の共有=共感力」を生み出すことです。離婚したというエピソードも「矢口真理さんのような状態です」と記すだけで、状況説明が完了しますし、「『いいとも!』のようなマンネリ」とするだけでビジュアルイメージ付きで読者が理解してくれます。

本業を見失っては本末転倒

さらにこんな方法もあります。東京都三鷹でおきた元交際相手による女子高生刺殺事件について、ネット上では事件直後から「リベンジポルノ」というキーワードで語られていました。詳細はここで繰り返しませんが、事件の重大な背景をテレビは一切報じません。そこで事件の背景にある「リベンジポルノ」に触れ、野放図な若者のスマホ利用の問題点をブログで指摘すると、約30倍のアクセスを記録しました。アクセス数増加を狙って書いたものではありませんが、テレビがあえて触れない、触れられないネタには集客力があります。

実は、私のブログではテレビネタを積極的に取り上げることはありません。アクセス数は稼げても、ブログのコンセプトがぶれてしまうからです。アクセス数ばかり気にして、関係のない人を集めても商売にはつながりません。「お客」を捕まえるのは「本業」に絡んだネタ。これに近道はありません。

しかし、上司に「最近、ブログのアクセス数が悪いな」などと嫌みを言われたときには使えるドーピング技。本業とのバランスを取り違えてはいけませんが、ネタとして覚えていて損はありません。もちろん、本業が「テレビコメンテーター」なら話は別ですが。

今回のポイント

とりあえず人を集めるならテレビネタ

ただし、軸のぶれには注意

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