「顧客の見える化」がCRM戦略を変える/プラスアルファ・コンサルティング
多くのネットショップに共通した課題は、「新規顧客の獲得」と「既存顧客の育成」だ。前者はおもに広告が担い、後者はCRMが重要な手段となる。ところが、ネットショップは店舗に比べ、会員属性や購買履歴など多くのデータを得ることができるにもかかわらず、効率よく活用し科学的なCRMを実践できている企業は少ない。たとえば、すべての会員に一律で同じ内容を送るようでは、当然のことながらメルマガの効果は激減する。
CRMを正しく実行できている企業は少ない
プラスアルファ・コンサルティングは、データマイニングやテキストマイニングに関する豊富なコンサルティングノウハウを生かしたシステム開発を行っている会社だ。ネットショップに限らず、さまざまな企業のマーケティング支援を行っており、そのなかで、自社の顧客を知り、科学的なCRMを現場で行うためのツールとして、「カスタマーリングス」を開発。ネットショップをはじめ多くの企業で採用されている。
今回は、同社の取締役・鈴村賢治氏が、「成長企業はここが違う 顧客育成のためのCRMの秘訣」と題して、「現場でできる」をキーワードに、ECサイトにおけるCRM(Customer Relationship Management)の導入効果と運用ノウハウを紹介した。
まず、鈴村氏はネットショップが抱える課題を、「新規顧客の獲得」と「既存顧客の育成」という2つに大きく分類した。一般的に、前者を促進する手段が広告であり、後者についてはCRMが担うことが多い。だが、現実にCRMを正しく実行できている企業は、実は少ないのだと鈴村氏は言う。たとえば、ネットショップが、低コストかつ手軽で、ユーザーに直接コンタクトできる最も代表的な手段は、「メールマーケティング」だが、これについても、きちんと分析することでもっと科学的な効果があげられるのだという。
鈴村氏はネットショップのメールマーケティングについて3つの問題提起を行った。
1. 全員に同じ内容のメルマガを投げていないか
マイボイスコムの調査によると、ECサイト利用者の63%が10本以上のメルマガに登録しているという。しかし同時に、50%のメルマガは読まれていない。このような状況の中でも、すべての顧客に一斉にメールを送る企業は多く、顧客の興味とずれているメールは「まず読まれていないと思った方がよい」と鈴村氏はいう。顧客ごとに違う興味や嗜好、タイミングに合わせたメールを送らなければ、メルマガの効果は激減する。
2. スマホに対応できているか
スマホの普及率が50%を超え、スマホからの注文も拡大している。スマホユーザーのECサイトでのコンバージョンがPCユーザーの約2倍にもなるという調査結果もある。にもかかわらず、メルマガなどにおける施策はガラケーやPCと共通のままという事業者が多く、そこにロスがある。顧客のターゲットにもよるが、たとえばアパレル通販などではスマホ対応は必須と言える。
3. ユーザーが見えているか
ネットショップは会員属性や購買履歴、顧客アンケートなどのさまざまなデータを取得できるにもかかわらず、そのデータの分析・活用にまで手が回っていない事業者が多いと鈴村氏は語る。まず顧客を知らなくてはCRMは成り立たないが、多くのネットショップは、顧客のセグメンテーションと、それぞれにあわせたアクションが不十分のため、結果すべての顧客に同じメルマガを投げてしまっている。また、レコメンドツールを利用する事業者では、中のロジックがブラックボックスになりがちで、推奨する商品もツール任せになってしまっているケースも少なくない。顧客アンケートを取ることで購入者の期待や購入理由を知ったり、顧客の嗜好なども知ることができるが、手が回ってていないケースも多い。
企業のCRMがうまくいかないのはツールがバラバラだから
このような事態を引き起こしている背景を鈴村氏は、「現場には、顧客管理から、メール配信、顧客分析、アンケートなど、複数のツールがバラバラに存在し、それぞれが連携できていないなどシステムが現場のボトルネックになっているからだ」と一刀両断にする。
多くのシステムは、メール配信ツールと顧客DBが別々になっていて、配信の都度、現場の担当者が手作業でリストを出し入れする必要がある。分析も難しいツールでは現場が使いこなせず、使う時間もない。よって、経験と勘から脱しない。これは、事業者の皆さんが悪いのではなくて、これまでのCRMシステムがボトルネックになっているのです(鈴村氏)
そういった問題を回避するためにプラスアルファ・コンサルティングが独自で開発したCRMシステムが「カスタマーリングス」だ。顧客管理機能を中心に、メール配信機能、購買データなどの外部データの取込み機能、データマイニング機能、アンケート収集機能など、EC事業者のCRMに必要な機能をすべて集約している。分析からセグメント抽出、施策、そして効果測定・分析というサイクルの実行と、そこからさらに次のアクションにつなげるところまでを1つのツール上で行えるのだ。
鈴村氏は、カスタマーリングスを採用している事例として、健康食品通販のエバーライフを紹介した。エバーライフではおもに、新規のサンプル商品購入者の定期購入への引き上げ施策のために利用している。実際にカスタマーリングスを利用し、購入から3日、7日、15日など購入後からの適切なタイミングでステップメールを自動的に送信できるようにした結果、サンプル購入者の定期購入引き上げ率が約300%までアップしたという。
また、あるアパレル通販会社では、同システムを購買履歴や顧客属性に合わせた細かな商品紹介キャンペーンに利用している。ターゲットによって配信時間も調整しており、主婦は時間がある昼間に、OLには帰宅後の深夜に送るといった細かな対応によって、URLクリック数が1.6倍、開封率が1.4倍となり、結果としてメールのコンバージョン率が4.4倍までアップしたという。
CRMを活用して優良顧客を育てる5つの秘訣
鈴村氏は新規顧客を優良顧客に育てるための秘訣は5つに集約されるという。
セグメンテーション
セグメンテーションとは、顧客をマーケティングに基づくいくつかの視点から分類することだが、通常、顧客情報と購買履歴をシステム上で紐づける作業が必要となる。その場合、多くのシステムではSQL文といったデータベースの知識が必要になり、現場でハードルが高い原因となっていた。カスタマーリングスでは、画面上からセグメントを自由に作り、ツリー構造で管理することで、現場で直感的にセグメント別の施策立案ができるようにした。
顧客に合わせた最適なメール配信
顧客に合わせた最適なメール配信を行うには、セグメンテーションするだけでなく、送るタイミングも重要だ。カスタマーリングスでは、購買データを使うことで特定商品の購入後5日や、購入間隔に合わせたメール配信も可能となる。また、性別や購入商品に応じてメール文の一部を自動的に差し替えることで、より興味に合わせたコミュニケーションができるようにした。
効果測定による最適化
効果測定による最適化は、単純にクリック数だけを見るのではなく、ユーザーごとの傾向を把握したり、ABテストによるレコメンドや値引きに関するテストなど、判断が難しい施策の検証にまで踏み込んで行う必要がある。
顧客の理解=顧客の見える化
こういったさまざまなデータを分析することによって、顧客の姿がより鮮明に見えてくる。これまでもデータマイニングやBIツールがあったが、多くが操作や結果の解釈に専門性が要求され、現場での運用には適さない。カスタマーリングスでは、「そこまで高度な機能はないながらも、逆に現場でとにかく使いやすくわかりやすいデータマイニング機能を作りました」と鈴村氏が強調するように、現場にてさまざまな視点から顧客にアプローチすることが可能になっている。
マーケティングダッシュボードの構築
それぞれの視点から必要となる分析結果をすばやく閲覧し、常に最新の状態を把握することで、事業方針や施策の意志決定をすばやくすることが必要だ。
これら5つのポイントを押さえてCRMに取り組むことにより、すべてのユーザーへの一律のメール配信から脱却し、それぞれのユーザーに伝わるコミュニケーションを確立するこができる。顧客を知るためには継続的なPDCAサイクルを回すことが必須であり、そのためには総合的なCRMツールが必要だと鈴村氏は強調する。
CRMツールはデータベース事業者が作っていることが多く、コンピュータ用語が多くて、ネットショップの現場では決して使いやすいとは限らない。だから、カスタマーリングスを作った。クラウド型で低コストで導入できることから、結果、今では200社近くに採用していただいている。導入企業には、年商数千万円~数十億円規模の顧客育成を経営課題に挙げている通販企業が多いが、金融業界などでは顧客管理や契約管理として使っているところもある(鈴村氏)
鈴村氏は「日本の景気が良くなってきている。また、一般ユーザーの間でもECへの抵抗感が薄れてきているため、ネットショップはもっと伸びる。スマホが出てきたことも大きい」と、ECにとって強い追い風が吹いていると力説。だからこそ「CRMを今一度きちんと考えるべきだ」と、強い言葉で講演を締めた。
株式会社プラスアルファ・コンサルティング
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