PVやUUだけでは評価しきれないコンテンツの「質」とは? オウンドメディアに必須の分析&改善事例
PVがたくさん稼げてよかった!
オウンドメディアを運営していくなかで、最近はこうした言葉があまり聞かれなくなりました。「PVが稼げなくなってきた」わけではなく、PVやUUの上下に一喜一憂せずにコンテンツの質を意識するようになってきたという意味です。
キュレーションメディアの台頭に加えて、コンテンツがFacebookやInstagramなどのソーシャルメディア上で消費され、自社メディアまでユーザーが来ない「分散型メディア化」の時流もあり、オウンドメディアもPVやUUだけでは評価ができない時代が訪れています。
分散型メディア化の流れのなか、自社のメディア(ブランド)サイトで情報を見てもらうことの価値が薄れつつあります。ユーザーにとって大切なのは情報そのものの質であり、ユーザー本位の価値あるコンテンツが強く求められている表れともいえます。
実際、筆者自身がオウンドメディアの運営に携わるなかで、コンテンツの質を評価して改善していくことが、オウンドメディア成長に最も重要な要素であることを強く実感しています。
今回は、筆者が実際の業務で実施した「ユーザーに共感を生む」ことを目的とした分析・改善事例を3つ紹介します。これまであまり注目されていない分析を取り上げるので、参考にしてみてください。
- ケース1: ヒートマップで「離脱ポイント」を分析する
- ケース2: 「記事の文字数」がユーザー行動にどう影響するのか分析する
- ケース3: ソーシャルシグナルとSEOの影響を分析する
本記事の内容は、筆者が講師を務めるオウンドメディアを軸にしたコンテンツマーケティングの実践講座でも解説する予定です(詳細は記事末尾)。
ケース1
ヒートマップで「離脱ポイント」を分析する
「最後まで満足して読んでもらえたかどうか」「ユーザーの求めるコンテンツであったかどうか」というのは、コンテンツの質を見極めるうえで重要な指標の1つです。
その改善ポイントを見いだすうえで欠かせないのが、「ユーザーがそのページのどこをよく見てくれたのか」「どのポイントでユーザーが離脱したのか」を可視化できるヒートマップツールです。
いくつかのツールがありますが、筆者はユーザーローカルの「User Insight」を利用しています。温度を計測するサーモグラフィーのようにひと目でわかるヒートマップは、リテラシーの高くないお客さまにもわかりやすく、改善のためのヒントに気づきやすく使いやすい点が気に入っています。
実際にヒートマップを分析して、どのようにコンテンツの質を評価し、改善しているかを紹介しましょう。
直帰率・離脱率の高いコンテンツのヒートマップをチェックし、極端に離脱が多いポイントを分析します。その結果から、なぜ離脱率が高くなっているのか分析・改善を実施することでコンテンツの質を高めていきます。
写真が少ない記事は、ページ前半(上部)での離脱率が高い。
【対策】
フォトストックや未使用の写真を記事に追加する。段落がなく、ダラダラと長く文章が続いている記事は、ページ前半(上部)での離脱率が高い。
【対策】
本文の段落の長さを調整し、読みやすく修正する。タイトルに書いてあるテーマとは関係のない話題が入ってくると、その部分での離脱率が高くなる。
例: 「女性が恋愛に求めるファーストプライオリティは『お金』じゃなくて●●だった!」というタイトルの記事に「効率的な貯金方法」についての記述がある。【対策】
テーマと関係のない情報は削除する。
ケース2
「記事の文字数」がユーザー行動にどう影響するのか分析する
次は、記事の文字数とユーザー行動の分析です。文字数の多い記事が読まれなくなってきているのは、弊社が運営しているメディアのデータにも表れています。この原因は、スマートフォンからのWebサイト利用の増加や、写真・動画コンテンツの浸透などにあると考えられます。
そこで、文字数がユーザーの行動にどのような影響を与えているのか、Google アナリティクスの集計データをかけ合わせて詳細な分析を実施しました。
記事の文字数を1,000文字以下から最大3,000文字以上まで、500文字ずつの範囲で分類。記事のデバイスごとの新規ユーザーまたはリピーターについて、PV数・セッション数・PV/セッション・直帰率・検索流入数・平均セッション時間を分析します。
※文字数は、Google タグマネージャを利用してコンテンツエリア内の範囲を指定し、HTMLタグを除去してGoogle アナリティクス上で自動集計できるように設定した。
新規ユーザーには1,000文字までの記事がよく読まれる。文字量が多いコンテンツほど直帰率が高く、PV/セッションは低くなり、滞在時間も短くなる傾向があった。
【対策】
新規ユーザーは情報量の少ない記事を好む可能性が高いため、文字量を意識的に減らす。それに加えて、文字で読ませるコンテンツの代わりに動画で見せるコンテンツを導入する。2,001文字~3,000文字の記事は、新規・リピーター・デバイス別などあらゆる比較において悪い結果だった。ただし、ヘビーリピーターには3,000文字以上の記事がよく読まれており、PV/セッション、直帰率も良い数字だった。
【対策】
コンテンツの文字数を厳密に管理し、2,001~3,000文字の記事を意識的に減らす。ただし、このオウンドメディアを好んでいるヘビーユーザーは、文字量が多くてもしっかり読み込んでいる可能性が高いため、リピートユーザー向けのコンテンツは文字数を気にしすぎる必要はない。
ケース3
ソーシャルシグナルとSEOの影響を分析する
最後は、ソーシャルシグナルとSEOの関係を分析します。「ソーシャルシグナル」とは、ソーシャルメディア上の「いいね!」「リツイート」「ソーシャルブックマーク」などの反応のことです。
これが検索エンジンのSEOに影響を及ぼすことは、この数年オウンドメディアの運営をしてきて確信していることの1つです。といっても「いいね!」が多いほど検索順位が上がるわけではありません。大きなバズが発生したコンテンツは多くの被リンクを生み、多くのユーザーの目に触れることになります。それが、結果的にSEOにも影響しているのだと考えています。
分析では、バズによるソーシャル上でのコンテンツ消費や流入を最大化させたあと、検索流入の動向を見極めるために、SEOツールを使い検証を実施しました。筆者はオロパスのSEOツール「Pascal」とGoogle アナリティクスを組み合わせて利用しています。Pascalは公開した記事のコンテンツSEOにおいて必要な機能が網羅されつつも、機能が1つずつ独立しているためシンプルで使いやすいのがポイントです。
検索流入を目的とした記事で設計した検索キーワードと、記事URLをツールに登録。検索順位やソーシャル投稿後のシグナル数をツールで取得し、影響度をチェックします。
続けて公開記事の検索流入キーワードが想定していた設計通りかそうでないか、流入数などをGoogle アナリティクスで分析しながら、改善策を検討します。
記事タイトルやソーシャルの投稿内容にニュース性(新事実、異常な出来事、楽しいストーリー性など)があり、端的な内容になっているものは、ソーシャルシグナルが高まりやすい傾向にある。
ソーシャルシグナルの数値が高まると(たとえば、Facebookで10,000いいね!以上、はてなブックマークで100件以上など)、設定したキーワードで翌日にもGoogleの検索結果の1ページ目に表示されることがある。
【対策】
ユーザーを引きつける表現になっていないコンテンツの内容や、テーマが具体的に表現されていない文言は、すべて公開前に見直して修正する。ソーシャルでユーザーの反応が良いタイトルと、検索でクリックされやすいタイトルは、異なる傾向が強い。
【対策】
公開時点では、タイトルにソーシャル向けの「驚き」を重視した要素を盛り込む。ソーシャルシグナルが落ち着いたら、検索流入向けの記事タイトルにする(タイトルの前半部分に設定キーワードがくるように変更するなど)。
小さな質の改善の積み重ねがメディアを成長させる
今回紹介したのは、主に「ターゲットユーザーの共感を生むための評価と改善」を目的にした事例です。
もちろん、これまでどおりPVやUU獲得を目指すオウンドメディア運営や、店舗やEC送客を目指すようなプロジェクトもあるでしょう。目的ごとに評価軸や使うツールは異なりますが、「ゴールを意識してコンテンツの質の評価と改善を行っていく」という考え方は同じです。
今回、実際に紹介した改善内容を実施したプロジェクトでは、読了率の上昇や、滞在時間、回遊率が改善だけでなく、PVやUUの上昇にも貢献しました。このような小さな改善の積み重ねがメディアを成長させるのです。
筆者も講演するセミナーでは、コンテンツマーケティングとオウンドメディアの基礎から戦略設計の策定方法、メディアコンセプトの作成から運用に必要なあらゆることを、弊社の実績と共に学んでいただくことができます。
これからオウンドメディア運営やコンテンツマーケティングを始めようとお考えの方々に向けて、有意義な2日間になるよう準備中ですので、ぜひご参加ください。
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